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悪魔貴族譚~ノビリタス・ディアボロス~  作者: 中谷 獏天
第8章 各国、各地の事情。
175/198

2 善悪の正しい世界。

《それにしても、箱庭って》

『あら、知らないの?悪魔の箱庭』


 アレキサンドリア様、ラプラスさんをガン見した後。

 コチラを。


「それ、定番、なんですかね」

《いやいや、聞いた事も無いですけども》


『ココの定番よ』

《えっ、じゃあラプラスさんの箱庭も有るんですか?》

「数が凄そう」


『そうなの。だから寧ろ、私が発端、かしらね?』

「演算数が多過ぎて他を圧迫してしまいましたか」


『そうなの、どうしても干渉しちゃって、だから隔離されたのが切っ掛けね』

「可視化したら眩暈がしそう」

《それ数式で言ってます?》


「勿論、きっと途方も無い公式と乱数が」

『ふふふ、0と1なら特にね』

《あぁ、無限ぽそう》


『でも無いのよ』

「公式が有るワケですしね」

《不意に現れる科学ヲタクの要素》


「切っても切れませんから」

『ふふふ、そうよね』


「あ、あの、では善悪の逆転した箱庭も又」

『そうした公式で成り立っている箱庭』


「ですよね、道理で規律正しいワケですよ」

『けど乱数はちゃんと組み込まれてるそうよ?』

《あの子が乱数、ってワケじゃないですよね?》


『勿論、アレは世界ちゃんからの贈り物、だもの』


《「世界ちゃん」》


『神様は居ない、けれど観測者が居る場合、何と呼べば良いのか。だから世界ちゃん』


「その、観測者を捉える事は」

『残念だけれど、私達でも無理なの』


《と言う事は、精霊さんでも無理な存在、なんですか》

『そう、だから世界ちゃんは居るかも知れないし、居ないかも知れない』

「ですが、何か確信が有るから、そう名言しているのですよね」


『いえ、願い、ね』


「願い」

『万能なる神が居なくとも、ソレらを観察し、物思う何かの存在』


《居てくれたら良いな》

『そうね』


「やはり神は、居ないのですね」

『居るわよ?』

《居るんですか》


『東の概念、守護神』


「あぁ、アレは本当に成れるんですね」

『そうよ、けれど個人だけに影響する事が殆どだから』

《いや待って下さいよ、何ですか守護神が実在するって》


「稀に聖獣や精霊種が、その者の魂に沿う、だそうで」

『どうしても超えられない種族の壁が有った時、その魂に、その背に宿る事が有る』


《じゃあ、神様、居るじゃないですか》

『けれど西洋的概念としては、どうかしら?』

「寧ろ、守護天使に近い」


『だからこそ、神と呼ぶには少し不足が有る』

「つまり、概念としては未だに定着していない」


『殆どの大陸では、ね』


《いや、神様は神様でしょうよ》

「万能では無いと神では無い勢」

『ふふふ、数は時に暴力的だもの、ふふふ』


《頭でっかちめ》

「いえ落ち着いて考えてみて下さい、コレが他にまで定着すると、寧ろ弊害の方が多いかと」


《あぁ、惚れされて守護神にさせる系》

「です、コレはやはり、土着の信仰とすべきかと」


《確かに、悪用しようとする輩はもう、本当無限に湧き出てきますからね》

「教育です、教育で先ずは悪の芽を摘むんです」


《草の根運動》

「百里の道も一足から」


《ふぇええ!》

『ふふふ』

「あ、箱庭の内部の方は」


『怠惰国の内部で死んでしまった、とされる者達』


「つまり、年代はバラバラ」

『そうね』


「けれど、その場所で違和感無く生きていた」

『そこは可視不可視、休眠を使って乱数は最小限に、私はそうしてるわ』

『私もですよ』


 悪魔さん、不意に現れる。


「報告書によると、ベリト侯爵では」

『そうです』


 真っ赤な目に真っ赤な唇に、金髪。


 何だろう。

 綺麗で澄んだ声だし、何か凄い。


『ふふふ、彼女は箱庭の管理者』

『放浪・不満・躁鬱、破滅と急ぎ・殺人と冒涜・地獄の記録保管所の看守・錬金術師、それらの名を冠しています』


《なる、ほど》

「あぁ、記録保管所、つまりは箱庭の管理者」

『正確に言うならば箱庭置き場の管理者です』


《成程》


『そして天使名は』

Seehiah(シーヒア)


『悪を取り除くモノ』


「あの、では善悪逆転の箱庭は」

『私の管理下の箱です』


「では、公式などは」

『価値観を逆にしたまで、ですが統率に関しては幾ばくか関与していますが、デストピアと呼ばれる程の規制はしておりません』

《なのに、あの感じなんですね》


『暴力や見た目で直ぐに判断出来る事が優先されている為、より規範の広まりが強いのです』

「成程、やはり掲示力、ですね」


『はい、そして分かり易さ』

《成程、線引きがよりハッキリしてるから》


『どうでしたか』


 あ、感想が気になる感じなんですね。


《ぶっちゃけ、やっぱり意外と似た状況になると思ってたんですよね、善悪逆転の世界って》

『はい、混沌が生まれるのは線引きの曖昧さ故、明確な線引きは寧ろ統率が容易くなる』


《ですよねぇ、だからデストピア=管理社会、白黒ハッキリしてるとグレーが困る》

『ですが、だからと言ってグレーの幅を広げる必要は無い、少数の為の幸福故に大多数の幸福が侵害されては本末転倒』


《やっぱり、余力有ってこその救済措置、ですよね》

『はい』


「確かに、流石アイリス様、博識でらっしゃる。いや真面目に、ですよ、真面目にですから」


《本当に?》

「はい、大真面目です、善悪の逆転の世界について考えてもみませんでしたし。そもそも、何故、そこに至ったんですか」


《いやー、良く有ったんですよ、凄く酷い世界が下地になった物語》


 けど、それって一周回って、結局は同じ世界になるんじゃないかなって。

 だって結局は幾ら力でのし上がっても、物量、より多い人員や金がモノを言う世界になる筈。


 戦争は勿論、威嚇攻撃とかって、定期的に有ったじゃないですか。


「あぁ」

《不健康であれ何であれ、結局はお金が欲しいから暴れる。でお金が有れば大人しくさせられる、大人しくなればお互いにお金が楽に使える、お金を使えば欲しいモノが楽に手に入る》


 で、資格が必要なモノなら、脅すか金を更に積む。


 でも、やり過ぎたら他の権力者も同じ事をするか、若しくは台頭する者が現れる。

 だから抑止する為に法を作ると、他の者も対抗して法を作る。


「だからこそ結果として、法整備がなされ、結局は同じ事になる」

《ただ権力者の位置が変わるだけで、そこまで世界が変わる様には思えなかったんですよねぇ》


 大多数が理不尽だと思えば、いずれ打倒される。


 それに縄張り争いって、常に諍いが起きてるワケじゃない。

 欲しいモノが出来た、他に奪われた、だから争う。


「だとしても、限度を決めないと、最悪は全滅する」

《です。ほら、ヤの付くお仕事の方々ですら、仁義だとか掟が有るワケじゃないですか》


「そして目立ち過ぎると」

《より強いモノに捻じ伏せられ、今度は他の悪が台頭する》


「けれど、それらも目立ち過ぎれば、同じ事の繰り返しになる」

《で、目立たない様にするには、同盟やら掟を決める必要が出る》


「そうして安定を図らなければ、いずれは人口減少、果ては金が手に入り難くなる」


 力を誇示するだけ、って殆ど無いと思うんですよ。

 あの背中に鬼が居る最強生物以外は。


 結局は欲しい何かが有って、それを如何に手に入れるか、で。


《一強の存在が居るワケでも無い限り、統治も同じだと思うんですけど、どうですかね?》

『はい』


《ほら簡。いや、時が止まった世界、誰も賢くならず幼いままで。それこそ、特定の誰かだけ、が強いままで居続けられるなら別ですが》


「老いが有り、衰退が必ず訪れる」

《けど、それすらも凌駕するってもう》


「神様、ですよね」


《でも神様って、1人じゃないと思うんですよ》

「はい、なんせ私も、多神教者とも言えますから」


 そして次は神々が争うけど。

 結果的には安定する。


《コレ、物理法則とか良く分かりませんけど》

「恒常性って、必ず働くと思うんですよね」


 常に動き続ける分子だとか原子だって、安定、と呼ばれる状態が有る筈なんですから。


『はい』

『そして、安定には定義が必要となる』


《それが、観測者の世界ちゃん》

『はい、常に無秩序な世界は有りません』

『だからこそ、私達はそう考えているの』


「定義を齎す世界ちゃん。ほら、やっぱり賢いじゃないですか」

《ヲタク知識ですからね、ヲタクの定番》


「ヲタク凄い」

《いやSFヲタクには負けますって》

『はい』


《ほらね》

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