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Please,please,call me...! -side A-

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


 音が鳴る鳴る響いてる。

 それをずっと待っていて、けれど私には遠すぎて。

 幸せなほどの呼び出しに、心は(とろ)けてしまいそう。

 あぁ、うん、待って、すぐ開ける。

 重たい一歩を踏み出す度に、微かに脳裏を想い出が過ぎていく。

 それは二度と戻らない幸せすぎる日々の名残。

 決して広くはない家で知恵を絞ったかくれんぼ。

 縁日で貰ったサワガニを熱帯魚と一緒にしたら怒られて。

 塀の上を歩いていたら親分猫に落とされた。

 冗談でした口紅を褒めてもらった幼き日。

 過ぎた日々は儚く消えて、抵抗むなしく零れ落ちていく。

 下校道で手に一杯のテントウムシを包み込み。

 飽きもせずボールを当て合った運動場。

 朝早くシートを広げた劇場前で熱いコーヒーが胃に染みて。

 意味も分からず抱きしめられて2人で眠った夜の温もり。

 ずっとそんな毎日が続くと信じていた夢の跡。

 それをこれ以上、なくす前に。

 何もかもがなかった事になる前に。

 大切な宝物を潰れるほど抱きしめて、私の最後の悪足掻き。

 酷く狭まった世界の中で、全てがぼやける光の中で、ゆっくりと、けれど急かされるように足を進める扉の前。

 想い出ばかりが頭を満たして、切望ばかりが胸を締め付けて、

 苦しくて苦しくて、泣きそうになるけれど。

 正真正銘これが最後の頑張りだから。

 私のために嘘を吐いて、知られたくない嘆きは包み隠して。

 それでも望み(みんな)は手に入れよう。

 初めての我が侭を、しよう。



 ――――だから、罪の扉を開いた。


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これは、"あなたが要る"の言葉だけで、生きていけると思えた少女のお話。











P.S.『雰囲気をぶち壊すため、後で書かれたあとがき』



夏ホラー参加作品なのに5月の話だったこの小説は、場違いだったかなぁなどと今思ってみたりします。

正確には2009年5月7、8、9日の話でゴールデンウィーク明け数日後の物語なのですが、やっぱり夏は完全に無視してますよね。

猟奇的と性倒錯の要素が混ざってはいるものの、しかしこれがホラーなのかと私自身疑問に思っています。

人を怖がらせる話=ホラーということで外れてはいないと思うのですが、最終的に切ない話になってしまいました。

これは間違いなく要のせいで、あの子が私の思った以上にお人好しだったということが書いてみてよく分かりました。

プロット製作時、まだ名前もなかった彼女に『物語の"要"だから』と仮につけた識別記号がそのまま名前になったわけなのですが、これが偶然にもうまくいっていて、『"愛してる=あなたが要る"の言葉だけで、生きていけると思えた少女のお話。』という小説の主題にも合った名前でした。

こういう物語でなければ主役に、物語の要になれなかったというのも皮肉なのでしょうが、けれど私はこの物語をそれほど悲観してません。

作者ですしね。

それに実のところ、この物語には幾つかの謎が残されています。

矛盾点やら触れられていない点やらに気づいたらたぶんそこ。

もし、そんな謎を見つけたら想像を膨らませていただけたら幸いです。

もしかしたら、書かれているモノとは違う別の何かを見つけられるかもしれません。

とか無責任なことを言ってますが、あまり鵜呑みにはしないでくださいね。


では・・・、

『この小説で主張したかったことはただ1つ! 要は お人好しで 可愛い』

などとあとがきで書こうと思ったものの空気を読んでやっぱりやめた作者の出張あとがきでした。

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