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8.交流①

 建国祭が終わり、ついに社交シーズンに突入した。

 私はというと、まだ社交界デビュー前のため、同じ年頃の令嬢令息とお茶会や交流会という名称で擬似社交界を体験していた。

 正直全てが全て楽しいものではないけれど……自分より身分が高い相手に気遣ったり、刺々しい言葉をぶつけられることもあった。

 そんな中で、意気投合した令嬢とも出会えて、それはそれで嬉しかった。


「あっ、メアリー!」

「クラスタ! お待たせ!」


 今日は友人になった、令嬢のクラスタ主催のお茶会に参加することになっていた。

 クラスタは侯爵家の令嬢だったが、私と同い年ということもあり、すぐに仲良くなれた。

 さっぱりした性格なのもあり、とても話しやすい。


「今日は招待してくれてありがとう」

「何を言っているの。友人なんだから当たり前でしょう」


 早速会場へ行くと、すでに複数の令嬢たちが集まっていた。


「今日は気負わなくて大丈夫よ。面倒な人たちは来ないから」

「あっ、バレた……?」


 そう。面倒な人たちとは、身分を重視して下級貴族を虐める高貴な令嬢たちのことだ。

 目をつけられたら終わりのため、その人たちがいる時は空気のように存在感を消したものだ。


「まったく……ただ楽しく交流を深めたいだけなのにね」


 クラスタは侯爵家の令嬢だが、人を身分で差別せず、使用人にも平等に接している。

 そんな彼女は見た目が少しキツイため、敬遠されがちなのだが、そんな優しい本性を私は知っている。

 初めて会った時は私もビクビクしたけれど、今では姉のように慕っている。


「実は私、婚約者ができましたの」

「まあっ、素敵!」

「お相手をお聞きしてもよろしくて?」


 早速始まったお茶会で話題になったのが、とある令嬢の婚約が決まった話であった。


(この世界では幼少期から婚約者がいてもおかしくないんだよね)


 前世ではあまり馴染みのない風習に、少し違和感があったけれど、政略的な結婚が多い分、家同士強固な関係を築こうと幼少期から婚約を結ぶことも少なくない。

 私には一切そのような話は届かないけれど……そういえば、カシスはどうなのだろう。


「婚約といえば、やはり素敵な殿方と婚約したいと憧れてしまいますよね」

「特に四大公爵家の方々を狙っているご令嬢が多いと聞きますわ」

「特にヴィクシム公爵家とジェランダ公爵家のご子息は、私たちと歳が近くて人気を集めていらっしゃいますわね」


 今、私と同じ年代の令嬢の間で注目を集めている令息が二人いる。

 それはカシスとジェランダ公爵家の令息だ。

 カシスはもちろんわかるとして、ジェランダ公爵家の令息と聞いてあまり良い気はしない。

 なぜならジェランダ公爵家こそが、カシスの叔父と手を組んで推しの家族を殺して不幸にしたのだから。

 ちなみに小説では、ジェランダ公爵令息も悪役として登場する。

 ヒロインに近づき推しとの関係を壊そうとしてきたり、攫ったり、脅したり……と色々あるが、実は父親のやり方に対して疑問を抱いており、最後には改心して推しの味方につく良いキャラ転換タイプである。

 推しの味方につくのもあってジェランダ公爵令息自体は嫌いではないのだが、彼と関わることは自然とジェランダ公爵とも関わりを持ってしまうため、絶対に避けたいところ。


「メアリー様は確か、家族ぐるみでヴィクシム公爵家と仲がよろしいのですよね?」

「やはりカシス様ともお会いする機会がたくさんあるのですか?」


 この手の質問は集まりに参加するたび、聞かれている。

 前回は面倒くさい令嬢たちに問いただされ、本当に大変だった。

 体が弱くて家に引きこもってばかりいたからほとんど面識はないと嘘をついてしまったけれど……もしものため、カシスと口裏を合わせておかなければ。

 嫉妬ほど怖いものはない。

 幸いにも私とカシスが友人だという事実は広まっていないため、今ならまだまだ隠し通せる気がする。


「何度かお会いしたことがありますが、挨拶程度の関係でして……王都に来たのも今年が初めてなので、これからみなさんと交流を深めていけたらなと思っています」


 幸い、令息も参加する交流の場でカシスと出会したことはない。

 もしいつものように接したら、きっと注目の的だし令嬢たちの嫉妬の対象になってしまう。

 ヒロインが嫉妬の対象になるのは避けきれない事象だが、それは推しとの恋愛の時だけにしてほしい。

 カシスは本当にただの友人だし、やましいことは何一つないのだから。


(今度カシスに相談しよう)


 できるだけ早い方が良さそうだなと思っていると、私からカシスのことが聞けないと判断したのか、それ以上令嬢たちに問い詰められることはなかった。


「はあ、私もカシス様のようなお方と関わりがあればなあ……」

「諦めてはダメよ。ほら、今度カシス様のお誕生日でしょう? その時に何かプレゼントしてはどう?」

「きっと多くのご令嬢がカシス様に贈り物をするでしょうね」


 令嬢たちは未だにカシスの話をしていたが、私はその話を聞いて衝撃のあまり手を滑らせてカップの中身をこぼしてしまう。


「メアリー⁉︎ 大丈夫⁉︎」

「あっ、ご、ごめんなさい!」


 クラスタはすぐに使用人を呼んで対応してくれたけれど、頭の中では別のことを考えていた。


「メアリー、どうしたの?」

「な、なんでもない。ごめん、ぼうっとしていて……それより、カシス様の誕生日って?」


 声が震えないように気をつけ、先程の会話を続きを求める。


「あら、メアリー様も知らなかったのですね」

「ではやはり先程の話は本当でしたのね」


 聞いていない……そんなの、カシスの誕生日だなんて!

 衝撃の事実に震えてしまう。

 私の時はわざわざ家まで来て祝ってくれたというのに、危うくカシスの誕生日をスルーしてしまうところだった。


「私も何か贈ろうかしら」

「カシス様の目に留まって欲しいですわね」


 楽しそうに話していたが、私はそれどころではなかった。


「あ、メアリー! ドレスがシミになってしまうわ。急いで着替えましょう」

「え、クラスタ?」

「少し席を外しますね」


 クラスタは私の腕を引っ張り、その場を後にした。


「大丈夫? 顔色が悪かったけれど……」


 どうやらドレスのシミは口実で、私の様子を心配して連れ出してくれたようだ。

 余計な心配をかけさせてしまって申し訳ない。


「心配してくれてありがとう。でも大丈夫、ちょっと個人的な悩みがあって……」

「大丈夫ならいいけれど、何かあったらいつでも相談してね」

「クラスタ……ありがとう!」


 まだ出会って間もないが、気遣ってくれる姿を見てじんと心が温かくなる。



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