プロローグ「クソみたいな異世界じゃねえかあ!!」」
昭和63年生まれ齢35のおばちゃん死す。
死因は自殺。
なんのことは無い令和には珍しい借金苦と言うやつです。
母子家庭の家に生まれて兄弟は6人。
そのうえ母は宗教にハマって働かず。
親父は養育費すら入れずにトンズラ。
まあそんな家庭は昭和時代にはザラにあって。
平成では珍しくなりつつあった。
そんな主人公イチゴは母から「うちはお金ないからあんたを高校に行かせる気は無い」なんて幼児の頃から言い聞かされて育った。
今で言う親ガチャ失敗。
そんなイチゴは将来風俗嬢かキャバ嬢かと思いきや、16になると工場やスーパーやコンビニと。
起きてる時間はいつもバイトという生活をはじめ公立の通信制高校に進学する。
もちろん学費は自分で払う。
公立だから学費がとても安く済んだのだ。
しかしバイト代のほとんどを使い込む母親と姉のせいで、いつもボロボロの服を来ながら青春なんてものは味わえなかった。
高校を卒業したあと独学でWebデザインの勉強をし、見事に20歳で就職。
家を飛び出しはれて自由になれた。
「私貧乏な生活は嫌!だから絶対に自分で起業して自分の力でお金持ちになって私の子供には贅沢させるんだ!」イチゴは就職した時に幼なじみにそう意気込んだ!
23の時に友人とともに起業するも友人に裏切られ借金苦に。
諦めて再就職した。
しかし夕方5時から夜10時まで、夕礼と言う名の社長の気合い注入が始まる。
とんでもブラックなリフォーム会社だった。
当然イチゴは精神を壊した。
その後26歳で色々あって居抜きで居酒屋をはじめる。
なんとこれが大当たりするのである。
客引き居酒屋の形態をとったため年商8000万円。
ついに夢を叶えたかに思えたが。
客引き条例というものができてあえなく閉店。
失意のもとあの毒母のいる実家へもどった。
何もかも失って失意のイチゴに幼なじみが「一緒に起業しよ!」っと囁き。
人を信じることを忘れないイチゴは口車に乗って仮想通貨のマイニング事業へ。
見事にまた裏切られて大量に借金を背負ったイチゴ。
どん底も成金も全て味わったイチゴにはもう気力はなく。
「異世界転生があったら普通に恋愛して普通の暮らしがしたいな」と一筋の涙を流しこの世を去った。
165cmの身長で人よりも美しい彼女は決して自分の体を売ることはせずストレートに生き。
そして儚く散った。
はずだった。
研究員①「名前はイチゴ 女性 身長165cm 復元身体年齢18歳 日本人 地球暦2024年から召喚」
研究員②「肝心の職業は?」
研究員③「webデザイナーですね。」
研究員②「またハズレか。最近当たり引かねえなあ。こいつも破棄だな。」
研究員④「美人だし。最終的にはこいつも奴隷落ちだろうね。」
「あんた目を覚ましな!」
その声で目を覚ましたイチゴは何が何だか分からない光景に辺りをキョロキョロしている。
手と足に枷がついておりマッドサイエンティストかSMプレイ好きが使うようなベッドに裸で固定されていた。
「なにこれ。ここは?」
状況が把握できないイチゴが呟く。
研究員②「ここは異世界だよあんた!詳しい話は向こうで話すから、そこの服来て隣の保護室に行って頂戴!」
急かすようにこの中年の女性の研究員は言い放ち、枷を外して服を指さす。
病院に出てくる患者衣のようなものを着てイチゴは部屋を出た。
部屋の入口には「召還室」という表札がかかっていた。
何が何だか分からないイチゴは呆然とし。
記憶を辿る。
イチゴは死のうとしてた記憶を思い出した。
これは夢なのだろうか。
「私、死ねずに昏睡状態になってしまったのかな。」
頭を軽く叩いてみる。
「痛い」
涙目になるイチゴ。
頬をつねってみる。
「痛い」
またも涙目になる。
ジャンプをしてみるイチゴ。
「足はある!」
頭にハテナが飛びながら首を傾げる。
「無理だ。考えてもわからん。」
そう呟くと。諦めて隣の保護室という部屋を探す。
「あのー。すみません。」
恐る恐る挨拶しながら引き戸のドアを開く。
「イチゴちゃんね待ってたわよ!」
ものすごい大きな声で話す40半ばのエプロン姿の大きめな女性がそこにいた。
「あんたこっち座んな!」
豪快な笑顔でそう叫び彼女の前の椅子をバンバン叩く。
「あの~」と呟きながら恐る恐る座るイチゴ。
子猫のようにビクつくいている。
前世じゃこんなイチゴは見れなかっただろう。
強気のボーイシュで美人なイチゴは今じゃ子猫のようである。
「初めましてイチゴ!私は保護司の彩乃よ!とりあえずあなたの今の状況を説明するわ」
そういうと一方的に豪快に話を進めていく。
「まずここはあなたの住んでた世界とは別の世界。そしてこの惑星の名前はエデンよ」
そういうと彼女は机の奥にあった地球儀を前に出してくる。
「これがエデン儀よ」
なんとも言えないゴロの悪さが気になりつつもよく飲み込めないイチゴ。
「まさか私やっぱり転生したんですか??」
少しパニック気味に出た言葉は大きく。
前かがみになりながら聞いた。
「そう!あなたは向こうの世界で1度死んでここに転生したのよ!」
そういうと彩乃は縦鏡のある方を指さす。
「あなた自分のことを鏡でみてごらんなさい」
そこにはヤツれた35歳のオバサンではなく。
そう青春時代に活かせなかった、美貌とスタイルを持つ18歳のイチゴいた。
「これが私…。」
嬉しそうではあるもどことなく複雑な顔をする。
「そう!あなたの魂を召還する時に18歳の身体を再現して生まれ変わらせてるのよ!しかもお肌も内臓も全部新品同様よ!羨ましいったらありゃしない!」
ガハハッ!と豪快に笑いながらそう彩乃は言った。
「あなたはこの世界に召還されたの!」
そういうとエデン儀を指さし。
「ここが私たちの国ガルーダよ。」
大陸でも海に面する小さな国を指さしていた。
「私、もしかして勇者なんですか?」
戸惑いながらも下を向きながら上目で彩乃の方を見ながら問いかける。
彩乃はポカーンとした顔をしている。
「もしかして魔王とかと戦ったりするんですか?」
あわわわっとしながら問い続ける。
「アッハハハ!」
口を大きく開け笑いながら彩乃は言う。
「魔王は確かに存在するわ!でもね。もう勇者もいるわ!」
「それに、あなたが勇者なわけないじゃない。」
といって今度は机を叩きながら腹を抱えてわらっている。
「あの~。勇者じゃなかったら私はなんで召喚されたんでしょうか?」
あまりにもバカにされたので恥ずかしそうにモジモジしながら聞いた。
「技術者が欲しくて手当り次第、別世界の地球という惑星から死んだ魂を召還してるのよ。」
そういうとエデン儀をクルクルさせながら。
「このエデンはね。文明があなたたちの世界より遅れてるのよ。」
深いため息をする彩乃。
「唯一貴方たちに無くて私たちの世界にあるものといえば失われつつある魔法くらいね。」
魔法という言葉にビックリするイチゴ
「魔法はあるんだ。」
少しだけワクワクしながら心の中で呟いた。
「魔法なんて才能に左右される代物は貴方たちの文明に比べたらオモチャみたいなもんだわ。」
呆れながら手を肩まであげヤレヤレといった感じの彩乃。
「勇者がもたらした貴方たちの文明。そう特に銃ね。それはこの世界を変貌させたわ。」
エデン儀を見つめながら話しを続けていく。
「魔法障壁すら貫通する鉛の弾。これにより人類は魔王の進行を食い止め魔族をほとんど滅ぼしたわ。」
「そして、世界中の国々が魔法を捨て新たな武器や便利な技術を求めて、地球人を召還する文明開化が起きたの。」
「そして私たちガルーダ公国も地球人を召還し続けてるってわけ。新たなる新技術を求めてね。」
そこまで話すと彩乃はイチゴの方を向いた。
「わ、私も技術を何か提供しろということですか?」
自分が提供できる技術はいったい何があるんだろう。
確かに色んな仕事はしてきた。
しかし、技術革新になるような技術は持っていただろうか。
大学も通ってないので、専門的な教育は受けたことがない。
Webデザイナーをしてた時にHTML,CSS,JavaScript,PHPなどは書けるようになった。
しかしそれが役に立つのだろうか。
はたまたデザイン能力といってもそれの評価は人によってわかれるし。
居酒屋は経営してたけど料理人を雇って自分はホールを担当していた。
そんな訳の分からない回想を頭にしつつ自分は何ができるのだろうと彩乃に問いかける。
「アッハハハ」
「あんたには何も期待してないよ!」
「あんたはハズレさね!」
大笑いしながら指をさしてくる。
「向こうの世界の一般的な職種の人間は必要としてないんだよ。デザイナーとか文化的なものも求めてないのさ。」
「ガルーダはね技術革新をするような技術者が来たら国の要職についてもらうの。」
「だから残念ながらイチゴはハズレだね。」
人を見下すような顔をしてハズレと言い放たれて少しムッとした。
「あの~。それなら私はこれからどうすれば。」
ムッとしつつも。
この世界に自分が必要とされていないと悟り、急に不安になる。
「あんたは今日から保護場に住んでもらうことになる。」
「あんたは向こうの世界で死んでるからもちろん向こうには戻れない。」
「これから一生エデンで暮らしていくのさ。」
とりあえずなにはともあれ2度目の人生が若い体で手に入るらしい。
そう思うと悪くは無いのかも知れない。
なんたってこの星の名はエデン(楽園)なのだから。
毒母もいない。
裏切る友人もいない。
迷惑な兄弟も…。
借金もなく、新しい人生のやり直し。
そう思おうとした。
「保護場というのは何をするところなんですか?」
前をしっかり向いて生きる決意をする。
そんな目をしながら彩乃に聞いた。
「保護場は簡単に言うと、あなたがガルーダ公国の国民として世に出ていくための学習施設ね。」
「召還された地球人が沢山住んでるわ。」
「そしてそこで、この国の歴史や文化を学ぶのよ。」
「文字と言葉はね。召還する時に魂に刻んでいるから、あなたはエデンの全ての国の言葉と文字を理解できるわ」
「それだけは魔法って便利よね。異世界人にしか効かない魔法だけど。」
ちょっと羨ましそうな彩乃。
「ということは、そこで勉強して卒業すれば社会に出ていくということなんですね!」
無理やり戦わされることもなさそうで。
しかも勉強も出来て、その後はしがらみのない第二の人生かも知れない!
そう思うとさっきまでの困惑が吹き飛んで。
少し胸が高鳴ってきた。
「私は第二の人生でやり直せるんだ!」
胸の中でそう叫ぶ。
少しだけ笑顔になっていた。
「まあ。卒業って概念はないんだけどね。」
えっ。彩乃の言葉に急に不安になる。
「あの、それはどう言うことでしょうか。」
膝に手を置いて恐る恐る聞く。
「保護場にはね。3年間住めるわよ。」
「最初はね。」
そういうと彩乃はニコっと笑って。
「保護場にはね職業紹介所があるのよ。」
「ガルーダ公国中の職業紹介所と内容は一緒よ。」
「その中から好きな職業を選んで、書類審査、面接。テストがあればテストを受けて合格すれば就職よ。」
「就職したら半年以内に保護場から出て自立しないといけないの。」
「保護場には寮があってイチゴのように異世界から召還された子達が集団で暮らしてるわ。」
「もちろん国から食事や衣服の提供があるわよ。」
なるほど。
異世界から召還した手前、すぐほっぽり出す訳にはいかないので、住む所と学習環境を与えて就職したら追い出す仕組みなのか。
ガルーダ公国というのはしっかりした運営のなされている国らしい。
どんな仕事があるのか今から楽しみだ。
「ただし、3年たっても仕事が見つからない場合は奴隷として競売にかけられるわよ」
え?飛んでもない台詞がさらっと出てきた。
「奴隷ですか?」
イチゴの頭は困惑している。
「そうよ!国の税金で養えるのは3年間だけ。」
「自立して税金の払えない出来損ないを養う余裕なんてないからね!」
ガッハッハッと笑う彩乃。
なんてことだ。この国には奴隷制度がある。
いやそれどころか自分がその奴隷に落とされるかもしれない。
奴隷のような子供時代を味わい。
抜け出そうと必死にもがき失敗したイチゴ。
今度は本物の奴隷になってしまうかもしれない。
そう思うと急に身体が震えてきた。
でも。3年ある!3年あればどこかに就職出来るはず。
一生懸命自分に言い聞かせ心を落ち着けていく。
「3年で就職すればいいんですね。」
ちょっと涙目になりつつもキリっとした目と真剣な表情を彩乃に返す。
「まあ就職できればね。」
「いずれ知ることになるけど。」
「保護場が出来てからの約200年。」
「女性の就職は0よ。」
ニヤニヤしながら彩乃がこっちを見てくる。
なんてババアなんだクソッタレ。
それは奴隷になれと言ってるじゃないか。
さっきまで不安や困惑そして恐怖を感じていたイチゴはここに来て怒りを感じ始めた。
一方的な理不尽を押し付けられたのだ。
モヤモヤ、イライラしてるイチゴを横目に彩乃は続ける。
「まあでもすぐに奴隷に落ちない方法があるわ。」
「それはね。保護場にいる異世界人の男性と子供を作ればいいのよ。」
「女性は子供を埋めば1人につき3年延長されるわ。」
「男性は種付け成功で1年半延長ね。」
「そして産んだ子供は2歳になると競売にかけられる。」
「そう。その収益があなた達の税金なの。」
エッヘンみたいな感じで彩乃は話をしていた。
どういうこと?
3年経ったら奴隷?
延長するためには子供を産め?
そして大事な我が子を売れ?
考えれば考えるほど腹が立つ仕組みにイチゴの怒りは頂点に達していた。
「頑張って就職するのにチャレンジしてもいいけど、この世界の法律では異世界人が民間で働く場合は最低賃金の半額しか給与を払っていけない決まりだからね。」
「奇跡が起きても野垂れ死にだよあんた!」
「2回目の死を早く味わいたくなければ大人しくするんだね!」
そういうとまた彩乃は大きな口を開けて大笑いした。
下を向いて固まるイチゴ。
あまりにも理不尽で。
そして狂っている。
異世界人とはいえ人として扱わない制度。
無いに等しい選択権。
怒りとともにイチゴは叫んだ。
「クソみたいな異世界じゃねえかああああ!!!」
そうこれは。
クソみたいな異世界に転生し後世に語り継がれる女王「イチゴ姫」の物語である。
続く。