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86 帰還中

 五人は、馬車に揺られていた。


「で、死んだんじゃなかったのかコイツ」


 ラプタが指を指した先では、ルーブルが笑いながら座っていた。


「いやぁ、ははは……カッコつけた手前恥ずかしいんだけどよ、まあなんとかなっちまったもんで」

「じゃあなんでここにいるんだ。仕事は? 住む場所もあそこにあっただろ」

「仕事は辞めて、住んでる所は捨ててきた。生き返っちまったら命の恩人に仕えるしかないよなぁ……って」

「私は自死を選ぶバカを部下にするつもりはない。そこの男にでも仕えとけばいいさ」


 すでに獣人の姿から大きな梟に戻ったムトは、翔の方を指さした。翔は翔で、己の姿を人間に戻している。


「あの、この方は……?」


 アーミアだけがついていけないとばかりにきょろきょろと辺りを見回している。


「あぁ、実は……」


 翔が図書館であったことを語ると、アーミアは納得したように手を叩いた。


「なるほど! 良いことをしてたんですねぇカケルさん。あ! じゃあ今お仕事とかは探し中なんですかね?」

「ん、まあそうなる……かなぁ? って言ってもこっからのことはなんにも考えてないんスけど」

「じゃあ……ウチで働きますか?」

「あぁ!?」


 アーミアの言葉にムトが叫ぶ。


「アーミア! ウチは誰でも受け入れ屋じゃないんだよ。アンタが良くても私は反対だね。このバカ含めた三人ですら大変だっていうのに……」

「でも、ラプタさんたちが来たとはいえ、働き手がまだ少ないんで男性が一人増えてくださるだけでも助かるんです! それに、農園の決定権は私にある……んですよね?」

「ハァ…………」


 アーミアの圧に、ムトは頭を抱えながらも言葉を返すことはない。それは否定したいという感情を持ちながらもこれ以上はどうしようもないという感情がないまぜになったため息を一つつくだけだった。


「で、どうします? ウチで働きます?」

「いい……のか? いや、まあ体力には自信あるけど、なんというか……」


 ルーブルの嘘を見抜く能力は、翔がすでにアーミアに伝えている。

 ルーブルはそれを心配していた。今、この言葉に嘘がないことを理解していても、いつか嘘を見せられるかも知れない。ルーブルは、それを不安視するかのように目を伏せた。


「良いですよ! むしろありがたいです! 体力ある人は居れば居るだけいいですから!」

「じゃ、じゃあ……」


 しかし、アーミアが押しに押し、その言葉に嘘がないことをルーブルに真剣に伝えた結果、案外すんなりとルーブルが働くことになった。

 このルーブルという男、嘘を見抜くという力のせいか人間を信じやすくなっており、嘘がないというだけで他人を信じてしまうようになってしまっていたのだ。

 と、そんな二人の会話が終わる頃、翔が口を開いた。


「よし、そっちの話はまとまったな。じゃあ今の状況をムト、教えてくれ」

「ああ。ただし、私の記憶も曖昧な部分があることは覚えておいてくれ」


 ムトは馬車に乗る前に、自らの脳に記憶消去の魔法をかけていた。そのうえで、自力でクォーツという男の正体について思い出していたのだ。

 記憶を消去する魔法を己の手で理解しており、かつそれを詳しく思い出せるムトであるからこそできる芸当だ。

 ムトは窓から流れる景色を一瞥すると、その場に居る全員に己の推理を話し始めた。

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