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34.

 そして。


「ルーファス様」


 そう名を呼ぶと、私の推しであり好きな人……今日で本当の夫となる人は、私の方を振り返り笑みを溢す。


「あぁ、綺麗だ。初めて見た時から、君は誰よりも美しいと思っていたが……、やはり君は妖精だったようだ」

「よ、妖精!? 初めて見た時からって……、そういえば私、なぜルーファス様が私を選んでくれたのかまだ聞いていませんでしたね!?

 ちょっと後で詳しく教えてください!」

「はは、後でな」


 ルーファス様はそう言うと、今度は私の手元にいるタロウを見て口にする。


「タロウもお洒落をしたんだな。かっこいいぞ」

「わんっ!」


 そう誇らしげに返事をするスーツ姿のタロウに、私達は顔を見合わせて笑った。






 今日はルーファス様との結婚式が行われる日。

 結婚式を行うのも自由だと言っていたけれど、愛の女神様には色々とお世話になってしまったから、きちんと愛の女神様の前で夫婦の誓いを行なって認めてもらおうと、ルーファス様と話し合って決めた。

 呼んだのは私達のことをよく知っている方々のみ。

 親族や王太子殿下夫妻、そして私の前世の家族である男爵夫妻も来てくれているはずだ。


「……でも本当に、今でも信じられないですよね」

「え?」

「小説の世界ではルーファス様、一生独身なんですよ?」


 思わず笑ってそういうと、ルーファス様は顎に手を当て言った。


「そうだな、俺もディアナにもし契約結婚をあの場で断られていたら、誰とも結婚していなかっただろう。

 その小説に出てくるルーファスは、やはり俺で間違いないな」

「えぇ」


 判断基準、と思わず笑ってしまえば、ルーファス様は私をエスコートしながら言う。


「でも君は、こうして俺のところに来てくれた。

 正確には、タロウのために。そうだろう?」

「……そうですね、確かにきっかけはタロウのためでしたが……、でも、ルーファス様のお力になりたいと思ったのも、本当ですよ?」

「え?」


 前世で辛い時や苦しい時。

 私は推しという存在に救われた。

 小説を読み、推し活をする時間が自分にとって幸せだった。

 だから。


「これからは、ルーファス様の隣で推し活し続けます! ルーファス様のお役に立てるよう、私これからも頑張ります!」

「……やはり君の思考回路はそっちに行くんだな」

「はい!」

「それなら俺は、君を推すことにしよう」

「え、ルーファス様も推し活するんですか!?」

「あぁ。君を思う存分妻として甘やかすという推し活。良いだろう?」

「ちょ、ちょっと方向性が違うような気が……!」


 どうしてルーファス様が言うと、途端に危ない色気を纏っているように聞こえてしまうんだろう!?

 と、顔を赤くしたら良いのか青くしたら良いのかわからずパニックになる私を見て、ルーファス様はクスクスと笑う。


「さ、行こうか」

「そこらへんも後で話し合いましょうね!」

「はいはい」


 ルーファス様の余裕な笑みが何だか悔しくて。

 でも、こそばゆくて。

 その笑みを見ながら、ふと思う。


(そうだよね、今こうして隣にいられるのは、どれも愛の女神様が巡り合わせてくれたいくつもの奇跡が重なっているから、なんだよね)


 だから私達の出会いは、やっぱり運命なんだ。

 そして。


(そんな私達を見つけて、一番にその縁を結んでくれたのは)


 私とルーファス様は顔を見合わせて振り返る。

 そして少し屈むと、二人で声をかけた。


「「タロウ、おいで!」」

「わんっ!」







『モフモフ(愛犬)のお世話係を命じられたお飾り妻ですが、結婚後の旦那様の様子がおかしいです』 end

これにて完結です!いかがでしたでしょうか?

二度も体調を崩すというアクシデントに見舞われましたが、無事に執筆出来ましたのも皆様の応援のおかげです、本当にありがとうございます!

お休みしている間にいいねや評価、ブクマ登録をしてくださったのも大変励みになりました。

このお話は、私が描いてきた主人公の中では転生してしまった自分に負い目を感じ、傷つきながらも前を向こうとする、等身大の女の子を目標に描きました。

そこに一緒に転生してきてくれたタロウがいて、推しであるクールな(はずの)ルーファスが巻き込まれていって…、最後はドタバタハッピーエンドとしてお楽しみいただけていたら嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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