夜に思う
夜、目が冴えて眠れなくなったので書いた作品です。
ときどき目が冴えて眠れなくなる。
決まって心が大きく揺さぶられている日に起こる。
そんなわけで、今日も僕は布団の中で目をつむっている。
その日合ったことがまるで走馬灯のように思い起こされていく。
その中でも、一番印象深くて僕をひどくモヤモヤさせるものがあった。
デートの記憶である。
女の子との初デートだったが、結果は失敗に終わった。上手くできたところもあったとは思うが、上手くいかないところも多かった。そして、いっこうにメッセージアプリの返信は来ない。
まるで目の前を過ぎ去っていく電車のように、彼女は僕から遠ざかり、再び邂逅することはないのかもしれない。
けれども、まだ期待している自分もいた。きっといま、たまたまアプリを開いていないだけで、明日になったら連絡が来るに違いない。
心の底ではそんなことがあるはずもないと分かっているのに、どこか期待してしまう。いっそ、あなたとはご縁がなかったなんて言葉をかけられた方が幸せなのかもしれない。でも、彼女とのトーク履歴はいまだ沈黙を貫いていて、僅かな可能性に悶々としてしまう。
そんなこんなで三時間が経過しようとしていた。これは本格的に眠れそうにないみたいだ。
僕は身体を起こして布団の上に体育座りした。
そしていまの自分の状態を鑑みる。
胸が苦しい。少し眠気がある。身体はいたって元気。
そんなところだろうか。
いつになっても、この苦しさに慣れることはないなと思う。辛さは短くても一日、長ければ数日にわたって僕に攻撃を仕掛けてくる。それに対抗する術はあまりなくて、時間がいつの間にかその痛みを和らげていく。
まるで試練に課されているみたいだ。でも、その痛みこそが僕が生きていることを実感させてくれる。そしてやがてまた、次の一歩を踏み出そうと思わせてくれる。
だから、これはきっと未来への布石なのだ。そうだ、そう思うことにしよう。 そうして僕はまた布団に入った。なんとなく、眠れるような気がした。