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第5話 そんな武器で大丈夫なのですか?

「がつがつもぐもぐ・・・ぅみゅー!うまメシ食べ放題なのですー!」


 町のレストランにて勢いよくアレイが食べまくります。もう5人前ぐらいは平らげているのでしょうか?見ているだけでお腹いっぱいになります。


 あの後、宿屋の井戸を借りて私とミュリの二人でアレイの身体を洗い汚れを取り去りました。アレイの身だしなみを整えるとセミロングヘアで年相応の可愛らしい顔をしています。せっかくなので後ろの髪を二つ結びにしてあげるとよく似合っています。


 もう少し衛生環境を整えると奴隷商も商売がしやすいハズ・・・といけません、このような商売自体が許されない事なのに。


「ぅみゅーごちそうさまですー!それにしても主様がアチシと同じ首輪のはまった奴隷だったとは・・・養ってもらう相手をまちがえたかもですー?」

「今更契約無効とか無しだぞ?しっかりこき使ってやるから安心しろ」

「彼は奴隷ではありません、諸事情によりつけてもらってるだけです・・・次のクエストもありますからそろそろ武器屋に参りましょう」




 町の武器屋に入りました。小さい店舗ながら所せましと置かれた武器を見ると品ぞろえは良いようです。


「シュゾはどの武器を買うのですか?なるべく扱いやすい物にして下さいね?」

「どれもこれもよりどりみどりダナー・・・俺はこれにするぜ!」

 そう言って取り出しのは・・・木製のクォータースタッフ!?


「貴方何を考えてるのですか?これから強大な敵と戦わなければならない時に初心者の武器を買うなど」

「だって俺初心者だもん、これなら安いし100本ぐらい揃えときゃ安心でしょ?」

「ゥキィィ、100本も要りません!2~3本にしておきなさい!!・・・それはそうとアレイには何を持たせましょうか?」


「ぅみゅーアチシは戦闘をしたことないのですー、なのでそこの武器を所望ですー」

「アレイ!それはクレイモアといって重すぎて初心者が使えるモノじゃない!これは自分が買うからこっちの方が安全だぞ」


 といってミュリがアレイに持たせているのは棘つき鉄球が鎖で繋がれているモーニングスターではありませんか!


「それも初心者なら十分危ないです、ミュリは武器を見ると見境がなくなりますね!」

「も、申し訳ありません!」

「まったくもぅ・・・いっその事アレイには武器ではなくあえて防具に致しましょう、これをお付けなさい」


 私が手渡したのは前腕部分を覆う防具、ヴァン・ブレイスです。


「ぅみゅ?これは・・・腕甲というヤツですー?カッコイイのですー!」

「これなら取り落とす事はありませんしわずかながら鬼力をサポートする事ができるようです、さぁギルドに行きましょう」


「おい、ユトさんは武器要らねェのかよ?」

「私に武器は必要ありません、大抵の事は鬼功(オルグ)で十分なのです」


 そう、風属性を扱う私は周りに空気さえあればいつでも武器を作り出せます。

 鬼功(オルグ)とは本来格闘技を主体とした無手の技。武器への使用は初級・中級者のためのものであって、上級者になるともはや武器を必要とはしません。



◇◇◇



 ギルドにてアレイの冒険者登録をした後、良さそうなクエストの依頼書を物色しています。ミュリが何かを見つけたようです。


「ユト様!この依頼書を・・・」

「これは・・・」


 他のパーティーと参加する合同クエストのようですが、内容は「タナス砦解放作戦」のようです。


 タナス砦とは魔王軍の侵攻を食い止めるための前線基地で、魔王の居城の山を囲うようにして建っているグーテス砦とアスティ砦と並ぶ砦です。


 先月までは我々の基地でしたがグーテスとアスティを早々と占領された事から次第に旗色が悪くなり、ついにここも奪われることになりました。バリバスの町にモンスターの被害が多いのはこのためです。


「モンスターに占拠された前線基地のタナス砦・・・ここで騎士団としての力を見せねば!参加致しましょうユト様!!」

「しかし参加資格はCランク以上とあります・・・残念ながらDランクの私達には参加資格はないようです、今回は諦めましょう」


「何の、参加したかったら私の裁量で何とかしてやろう!Dランクのわがままウッキーズ!」


 そういってきた人物は・・・大きな体格ながら豪華な服装でいかにも尊大な態度の方です。そばにいるミュリが早くも怒りを見せています。


「私はこのギルド『ホーデュラ』のギルドマスター、ハルオンだ!ここで名を上げたくばしっかりこの顔を覚えておくのだな」

「それは失礼致しました、しかしDランクの私達が参加するのはルール違反です」

「だから私の権限で参加させてやると言っておるのだ!実は最近Bランクのシードルが行方をくらましてな・・・何でも元Eランクパーティーに怪我を負わせられたからだとか?」


 それは・・・つまり私達へ責任を求めているのでしょうか?マスターの物の言い方にミュリが食ってかかります。


「な・・・あれはシードルのリーダーが勝手な言いがかりをつけてきたから相手をしたまで!まさか公平なギルドが我々に不利益を被るつもりではないだろうな!」

「ふん、ギルドは冒険者同士のトラブルには一切関知せん!それよりもBランクパーティーが抜けた穴は決して小さくはない・・・そこで因縁のある君達にお手伝いをさせてやろうという私の配慮に過ぎない、報酬もランクも考慮しようじゃないか!」


 一見トラブルとは関係なく我々に仕事を与えようとしてますが、シードルの代わりに私達を手元に置いておきたい意志を感じます。


 そんな時にシュゾが空気を読まず割り込んできます、クエストの依頼書を持ってきて。


「おぉいユトさん、このクエストはどうよ?」

「ぅみゅーアチシもだけど主様は文字が読めないので世話が焼けるのですー」


「き、貴様ら・・・人の話に割り込みおって!」

「ありがとうシュゾ、せっかくのマスターの御好意ですが依頼書にはDランクに相応しいクエストがありましたので・・・失敬」


 苦虫を潰したような表情のマスターを置いて受付に参ります。確かに高額報酬とランクアップは魅力ですが、それと引き換えにどんな無理難題を押し付けられるかわかったものではありません。



◇◇◇



 町の北側にある森林地帯。今クエスト内容はキラービー70体の殲滅です。大きさ70センチメートルほどのハチで遅効性の毒針を持っていますので丸腰で戦うには危険な相手。シュゾの武器訓練にはもってこいです。


「チェインソード!よし、30体目だ!」

「ほっほーやるねぇミュリちゃん・・・ビリヤードストライク!ちっハズしたか・・・」


「主様、危ないのです!バリケィド!!」


 シュゾの後ろで巨大な土壁が出来上がります。近づいていたキラービーは下から突き上げられる形となり絶命しました。冒険者デビューにしてはなかなかの快挙です。


「見事だぞアレイ!鬼功(オルグ)を初日でここまで使えるとは!!」

「ええ、講義中に居眠りしていたどこかの誰かとは違います」

「ぅみゅー主様は棒術ヘタクソなのですー、これでアチシのディナーはデザートつきになるのですー」


 クエスト前にアレイにも鬼功(オルグ)講座をしましたが、一時間足らずでここまで自在に鬼力をコントロール出来るとは正直驚いています。彼女は土属性なのでこの分で成長すると盾役を任せられそうです。


「調子こいてんじゃねぇ!今こそ俺の本当の力をみせる時がきたようだなぁ・・・」


 そう言ってクォータースタッフを構えて鬼力を込めるシュゾ・・・スタッフの先端に炎が!


「ぃ良し!勇者の持つ魔法剣の完成だ!そんじょそこらの武器とはワケが違うて!」

「シュゾ殿、一体これは・・・」

「ミュリちゃんの剣に電気を流すチェインソードをパクリましたー、俺のは木製だからめちゃ燃えるぞ・・・つー事でハチ退治行くぜおらっ!」


 なるほど、火属性を付加させるためにわざわざ木製のスタッフを選んだという事ですか。スタッフの先端で燃えている炎がどんどん燃え移っているようですが?


「主様すごいのですー!ミュリさんのより大きなクレイモアになってますー!」

「へっ見たか俺の底力・・・ってヤベェ!火が手につきそうだ!!ユトさぁん助けてくれぇ!!」


 武器無しで発動するセルフバーナーとは違い、武器に鬼力をまとわせる鬼功(オルグ)は制御する事が難しいものです。更にコントロールのし切れていない状態では術者の身もダメージを受けてしまいます。


「仕方がありませんわね・・・バイティングウィンド!」

 強烈な風を起こしてスタッフの炎を消し去りました。コントロール不全の鬼功(オルグ)なら簡単に吹き飛ばせます。


「はぁはぁはぁはぁ・・・あーヤバかった、ありがとユトさ」

「ゥキィィィィィイイ!だから言ったでしょう!ちゃんと鬼功(オルグ)講義を聞いてない貴方が悪いんです!反省なさい!」


 まったく世話の焼ける・・・手のかかる弟が出来たような気分です。


 私には本当の兄弟姉妹はいませんが国王陛下の双子の王女と王子とは小さい頃から仲良くしていました。2人とも優秀で鬼功(オルグ)以外シュゾとは比べるのも失礼です。


 彼らとは小さい頃からの仲良しでしたがここ6年ほどは会っていません。お2人とも元気にしているのでしょうか?

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