エピローグ
ガーディア達が去った後、私はシュゾに詰め寄りました。
「シュ、シュゾ!なんて事をしてくれたのですか!せっかく貴方の世界に帰るチャンスをふいにするとは・・・・・・・・・どこまで人の神経を逆なでにするのですか!ゥキィィィィィィィィィィィ!」
いつもいつもいつもいつも勝手なことばかりして人を振り回すシュゾに我慢できず殴りまくります、もう誰も私を止められません!
「ぃ、いでで・・・痛いよユトさん!俺がいつ元の世界に帰りたいっつったよ!」
・・・は?
「言わなかったです」
「言ってないのですー」
「・・・・・・否、と」
「途中参加ですけど・・・仰いませんでした」
「うん、言ってないよねー?」
「な・・・何言ってるですかシュゾ・・・元の世界に帰れないということはまさかこのままこちらの世界、王国に留まるという事に??」
「ああ・・・最初の内は何だこの古くせードラ○エはって思ってたけど、鬼功は使えるしムダ知識は役立つし無双し放題じゃん?つーワケだ、この世界で英雄としてハーレム作ってやるぜ!!まずはユトさんとの結婚だぁぁぁ・・・あぶしっ!」
どさくさに紛れて抱きつこうとするシュゾに裏拳を打ちます。
「ゥキィィィィィィィィイイイイ!貴方なんか私の伴侶には絶対に致しません!!英雄なら英雄らしく一生わが国のためにしっかりと働かせてあげます!」
立ちあがろうとするシュゾにミュリが組み付き組手技をしかけています。心なしか瞳が暗いようです。
「シュゾ様は自分の純潔を捧げたお相手・・・浮気は絶対に許しませんっ!」
ミュリは仕掛けた関節技でシュゾを締め上げると同時に電属性の鬼功を使用します。
「ぁぎゃぁぁぁぁああああま!王サンの攻撃より痛ぇえええええええええ!」
痛みと電撃でシュゾが悶絶しています。無手の技からの使用でいよいよ彼女も鬼功の本質に目覚めたようです。
「ぅみゅーこれは尻に敷かれるのですー」
「・・・・・・これが男女格差か、と」
「ぅぷぷぷ・・・お姉様にミュリアス・・・面白過ぎです!」
「あははは、これにて一件落着、かな?」
純潔を捧げた、と飛んでもないことをミュリが口走ってましたがシュゾといつの間にそんな関係になっていたとは・・・。
しかし良い展開です。非常識でふらふらとして何を仕出かすか分からないシュゾにはミュリの監督が必要です。落ち着いたら二人の結婚式を盛大に致しましょう。
◆◆◆
一か月後、私の父の王位継承権の戴冠式が執り行われました。
王弟たるお父様イスフラル・グランデューク=オルファンは第一王位継承権を持っていたので前王亡き今最も王位を継ぐのに相応しい人物なのです。
しかしその人となりは部下に対して寛容、悪く言えば物ぐさなので兄ティルガスの専横を許してしまっていたようです。
お父様は最後まで「面倒なのはイヤだ」とゴネていましたが、私が女王になるワケにもいかず王子であるフィートルもまだ年齢が低いので王位継承には不相応です。
「いい加減して下さい父上!ご身分をわきまえて頂かないと!!」
「これ以上姉君に負担掛けるとボコっちゃうよー?」
王女バルファと王太子となったフィートルの説得?によって渋々父上はイスフラル・キング=オルファンを名乗り王位を継ぐことになりました。同時に私のお母様も以前まで不在だった王国の王妃となりました。
またバルファとフィートルとは本当の姉弟姉妹だと分かった彼らとは今まで以上に親しくしております。
「お姉様、私も純鬼功が使えるようになりたいです!ウキィィィィイ!」
バルファは私が見せた純鬼功の技をどこからか見ていたようですっかり虜になってしまいました。技を習得できるよう騎士団と共に鬼功の訓練をしています。いづれはギルドに入って新たな「わがままウッキーズ」のパーティーを組んで冒険者をやってみたいとか。
それにしても「ウキィィ」だけは恥ずかしいので止めて頂きたいものです。
「おぅ王太子様!息が詰まってそうだから今から町に繰り出さね?」
「いいねぇ!君も勉強大変だからなぁ・・・いざ共に行かん、同志よ!」
フィートルはシュゾと気が合うのでしょうか、王太子教育の合間によく城を抜け出して2人で遊びにいっています。彼の非常識が伝染しなければいいのですが。
そして私達「わがままウッキーズ」は国王陛下の戴冠式をもって解散致しました。
私とミュリ以外のメンバー・・・アレイとエルバにシュゾ達は全員王国で働く事に依存はなかったのでそれぞれ適材適所の職務を与えました。
「ぅみゅー砦の防備を強化するのですー!仕事の後はご当地グルメなのですー!!」
アレイはその能力を活かして平時には建築物の整備・有事には砦や防護壁の補強や進軍の補助などを行う国防軍の建設工兵部隊の指揮官に就くことになりました。
元奴隷であった事は周知の事実ですが、誰もが彼女の表裏のない性格の前では文句一つ言わずにつき従っているようです。
職業柄建造物の修理などで王国領内を飛び回っていますが、その土地ならではの料理が食べられるので食いしんぼうの彼女には天職でしょう。
「・・・・・・今日から食生活、ではなく闇部が変わる、と」
エルバは諜報部闇部のトップに就任しました。闇部は元々前国王の独立組織でしかありませんでしたので、この機会に正式な王国の組織として再編成しました。懸念材料であった諜報士達の粗末な食生活や、激し過ぎる任務内容にも改革を行い士気を高めています。
更にエルバは私達と共に戦った事で更に実力を上げ、諜報部の中では誰も彼女の実力に敵う者はおりません。見事にリーダーシップを発揮しています。
「武器の修練など古い・・・時代は無手の境地に至るのだ!!ひめさ・・・宰相閣下のように!!」
ミュリアスは騎士団の団長となりました。王城での一戦で引退を決意した前団長から団長を引き継ぎ騎士団を統率しています。近々旦那様たるシュゾと結婚予定です。
一方王城を去った前団長は私の権限でかつての王弟の領地から向こうの国境にある前戦基地の司令官に就任させました。当初彼は、以前私に対して剣を向けた事もあってか頑なに固辞していましたが「戦闘の専門家に国の防備を任せるのに疑問がありますか」と私の言葉に従い任務に当たっています。
「あーやることねーって、こんだけ平和ならなぁ・・・だからこの課題テキストも免除っつーことで・・・分かったわかった!ちゃんとやるからお給料減らさないで!」
シュゾは魔王討伐戦や王城での戦いで見せた奇策の名手として軍と騎士団の双方を管轄する作戦参謀の職を与えています。とは言え平和がもどったところなのでしばらく出番はないでしょう。
そこで彼にはこの世界の言語や文字を教えてから、わが国にある様々な文献を読破して頂くようにしています。そうすることでこの世界での常識と彼にとっても新しい知識も身に付きます。
最後に私ユーティス・ダッチェス(女公爵)=オルファンは宰相として邁進しております。私がこの地位にいればお父様やフィートルを助けるだけでなく、参謀職たるシュゾの突拍子もない行動を抑えられます。
一つ問題があるとすれば・・・私の婚約者が見つからないという事です。何せ女の身ながら鬼功を扱いこなし、宰相の地位にいる事から国内貴族との縁談は権力の均衡に関わるので簡単には選べません。更に王国の内情に精通している身分では国外に嫁ぐことも難しいのです。
前宰相シカニシの持ちだした古文書では「魔王を討伐せし異世界の勇者、国の姫君と婚約し新たな王となる」との文献もありますが・・・絶対にあり得ません。
シュゾは生死を共にした仲間ですので毛嫌いしている訳ではありませんが、彼の非常識さを前にするとどうしてもシャウトしてしまうのです。
彼にミュリアスとの関係がなければこの古文書通りにするべくシュゾと私を婚約させたがる者もいた事でしょう。彼女に感謝です。
魔王討伐を機に私の緩やかな王族生活は一変してしまいました。今後新たな魔王が登場しても独力で対処できるよう国内を充実させる事に徹します。まだ見ぬ旦那様と結婚して腰を据えるのはその後でも良いでしょうから。
今しばらくは王族として国民のために頑張りましょう。
-終-




