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化学ファンタジア  作者: saiha
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8話:円周率

「ここからはアクリロニトリルさんと塩基国の兵隊がドモルガンの国へ行くみたいだけど心配だね…。でも、無事帰ってくると祈ろう」


 フラーレンは貰ったダイヤモンドのお守りを握りしめていた。コバルトも、


「そのようにしか出来ないけれどもアクリロニトリルさんにもグルコースというお守りを持っている。何かあったらそれが助けてくれるよ。もうそろそろしたらプロパノールさんも帰ってくるから料理の手伝いをしよう」


 その頃城ではドモルガンの国へ行く準備が整った。アクリロニトリルと三大強塩基はアルカリ王からの激励と無事を祈り、ミョウバンで作られた槍を掲げた。


「貴殿の活躍を祈る。そして、塩基国に栄光あれ!」


 シャルル国の兵士服を着ていたアクリロニトリルも塩基国の兵士服に着替えて士気を高めた。その服の内にはグルコースがお守りとして胸の中に眠っていた。プロパノールが帰宅するとコバルトとフラーレンは食事の準備を手伝った。調理時間は会話が弾んで購入したうま味調味料でフラーレンがあの時作った料理をプロパノールがリメイクしてくれた。その近所ではとても良い匂いが漂っていて現地に住む人がお店と間違えるほどだった。その時、大きな轟音と共に1人の住民の声が響き渡った。


「ドモルガンの連中が攻めてきたぞー!隠れろー!!!」


 またも、新たなドモルガンの人が塩基国への侵入を許してしまった。しかし、アクリロニトリルと塩基国の三大強塩基は国を出て数学の国ドモルガンへと向かっていた。住民は国が占拠されると思ったが何も盗むことなく片っ端から塩基国の城壁を壊していた。


「この人たちにマナーという言葉は無さそうだね…。でも何を使って壊しているんだろう。化学兵器でもなさそうだね」


 フラーレンは彼らが使っている武器を予想しているとコバルトがその壊れ方を見て即答えが出た。


「これ、波の力で壊している。地震などで出るP波とS波でしかも円状に壊している。何のために…」


 考えている暇もなくジュラルミンが迎えにきた。


「今すぐ国の地下に避難して下さい!このままだと地盤沈下で沈んで崩壊します」


 城の地下へと向かった先にはアルカリ王とマグネシウム王妃、護衛の兵士複数がいた。悲惨な状況を飲み込むことができず悩んでいた。


「ドモルガンはいったい何を考えているのだ?なぜ塩基国を攻める?我々に対して恨みでもあるのか…それとも…」


 コバルトは使ってた武器の特徴をその場にいる人に話した。それも一つのゼミのように。

説明が終わった後、マグネシウム王妃が咄嗟に口走った。


「それは物理で成り立ってるホイートストンブリッジ国の武器です」


 プロパノールはそれを聞いてからくり人形かのように崩れ落ちた。遡ること今朝の事になるらしい。


「今朝、私の夫アクリロニトリルが書いた手紙です。これにはもう戻れないという内容を残しています。物理で成り立っているホイートストンブリッジ国はどの国よりも奇策を編み出してそれを他の国へと仕掛けています。夫はおそらく、これが最後の戦いと思って行ったんじゃないかなと…」


 それを聞いてコバルトとフラーレンは声を出す事なく席を外した。悲しみを押し殺せない2人だったがずっと泣いた。


「アクリロニトリルさん…何でそんな手紙書くんだよ。あんなに良い人なのになんで…」


 フラーレンはアクリロニトリルから貰ったお守りを見つめて泣きながら語った。コバルトも同じくお守りを見つめながら覚悟を持った眼差しへと変わった。


「フラーレン。今はそうだけど上手くいけば無事とまで保証はできないけど会えると思う。だから今は出来ることをしよう。僕がついてるから大丈夫。未来の妻になる人に傷一つ付けたくないからさ…」

「…コバルトのバカ」


 涙脆い未来の夫婦だけどもその分結束力が硬い夫婦とも言える2人だった。

 プロパノールも覚悟は出来て涙を流していた。それを見たマグネシウム王妃は無言でハンカチを渡した。その表情は準備と共に最後まで戦う戦士のようだった。その頃アクリロニトリルは三大強塩基らとドモルガンへ入国した。

ドモルガンは数学の国と言うだけ全ての建物が線対象に作られていて、平和を表す円周率が延々と長く伸ばされていた。


「ここがドモルガン…。数ばかりで頭が痛む。作戦通りにフォーミュラーの根城と思われるところへ移動しよう」


 しかし、4手に分かれた途端ナトリウムの叫び声が聞こえた。バリウムがすぐに行ったものも既にナトリウムは亡骸となっていた。


「近くに敵がいる。恐らく暗殺者と思われる。切り口が鋭い」


 そう言った途端、バリウムの腕を掠れて血が噴き出た。そしてその正体がバリウムの目に映った。


「それは円周率の帯…。この平和を表すものは護衛にも回るのか…!?」


 アクリロニトリルとカルシウムに伝えねばと思い最後の力を振り絞ってダイニングメッセージを書いた。その文字は触れた人間にしか見えず膨らんで浮かぶ仕組みであった。目の良いアクリロニトリルはすぐに分かった。しかしその後円周率の帯によって木っ端微塵跡形もなく消えた。カルシウムは分からずであったものもアクリロニトリルの顔を見て全てを悟った。


「すまないなプロパノール、フラーレン、そしてコバルト君。どうやらこの国諸共道連れにせねばならぬようだ。あの手紙を最後にしたがまだまだ伝えたかったな…。フォーミュラーがいる城へ向かうとするか」


 フォーミュラーがいる城は数学の公式全てを大胆かつ精密に作られていた。線対象な門から点対象な部屋などと数知れずの城であった。カルシウムはアクリロニトリルがフォーミュラーと対峙してる間に宝物庫、ルートへ向かった。


「水酸化ナトリウムはここにあるはずだが…。

ここにあったか?!だが見張りがいるな。こんな時はファラデー式にやろうかな」


 ボールを投げると見張りは失神して死んだ。高圧電流のかかる物を投げたからなのか見張りの着ていた鎧が鉄だったからかそれが原因だろうとカルシウムは見た。


「我が国の宝、水酸化ナトリウム確かに返してもらう!」


 カルシウムは塩基国の宝を取り返した。作戦ではドモルガンに繋ぐあの道の出入り口で落ち合おうと考えていた。カルシウムは急いで向かって身を潜めた。


「部屋が多すぎる…フォーミュラーは一体どこにいるんだ?」


 アクリロニトリルは玉座の間を探すのに手一杯だ。ナトリウムからの信号を受け取り、成功の知らせを受けてホッとした。そんな中、大きな声が聞こえた。


「水酸化ナトリウムが盗られたぁ!?すぐに探せ!まだ遠くへは逃げていないはずだ。恐らく塩基国の連中が来たに違いない。あの3人を送って殺されたという知らせを受けていたが無能を送らなければ良かったわ!とにかく探せ!探し切れなかったら死んでもらうぞ」


 アクリロニトリルはこれで理解した。この声の主がドモルガン国王フォーミュラーだと。

声のする方へTNTを等間隔に隠して仕掛けた。

そしてカルシウムへ信号を送った。


「先に帰れ!3人にはアクリロニトリルは勇姿を見せた、と」


 カルシウムは泣きながら塩基国へと帰還した。


「フォーミュラー!お前の悪事は暴かせて貰ったぞ!水酸化ナトリウムは三大強塩基の1人、ナトリウムが受け取り塩基国へ戻った!お前を殺す!」


 刃を向けたがフォーミュラーは球体のバリアで守られていて等速直線運動の球によって体が動かなくなった。


「何かと思えば塩基国の蝿がここに降りてきたか…。動けなくなった気分はどうだ?この国で散るがいい!!」

「それはどうかな?」


 剣を振ったと同時に爆風がフォーミュラーの体に突き刺さった。バリアは刃を振るった時にヒビが入りそれが爆風によって破壊されたという事だった。


「フォーミュラーを殺した…そして国を滅ぼした。私の命もこれで終わりか…。プロパノール、今まで愛してくれてありがとう。そしてフラーレン、コバルト君。二人ともいい夫婦になってくれ…そしてコバルト君、フラーレンとプロパノールを頼んだ…」


 この言葉を最後に塩基国へ信号を送った。

でも…


「影武者がやられたのか…。まだ良い。虚数解を増やせばまた作れる話。すぐに奪われた水酸化ナトリウムを奪還するべく軍を出せ!すぐに出陣だ」


 アクリロニトリルからの信号はすぐに捉えた。カルシウムは取り戻した水酸化ナトリウムを見せてフラーレンたちに渡した。でもそれどころでは無かった。


「アクリロニトリルさん…ここまで導いてくれてお世話してくれて本当にありがとう…ここまで来たら絶対元の世界へ戻るから!」


 フラーレンとコバルトはアクリロにトリルの生まれ故郷シャルル国に方角を定めて敬礼した。伝令兵がアルカリ王へ緊急の知らせが入った。


「アルカリ王へ伝令!死んだと思われるフォーミュラーが生きてました!そして、軍を挙げてこちらへ攻めてきています。更に帯状の未確認生物が防壁を破ってきています!このスパイ作戦はバリウム、カルシウム、アクリロニトリル戦死!以上!」


 帯状の未確認生物はバリウム、カルシウムの命を奪った円周率だった。そして本物のフォーミュラー国王はホイートストンブリッジ国にて協定を結んでいたという話まで伝令兵が伝えた。アルカリ王は慌てていたものも、


「すぐに作戦会議を行う!総員、膜を張るのだ!フォーミュラーの攻撃が効かない半透膜の膜を!」


 水酸化ナトリウムを得たフラーレンだったがここからどうするか悩む3人だった。

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