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化学ファンタジア  作者: saiha
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5話:指示薬

 3人はビニル伯爵が教えてくれた情報屋に王水の都の中心に位置する、メチルという中心街に着いた。


 人が多く、迷ってしまうほどの店並びにコバルトとフラーレンは息を呑む。


「店が多くあるね。私、迷子になりそう」


「フラーレン...。君も幼い時、道に迷って大変だったよね。探すのに一 苦労だったね。あの時、何で教室の中で眠っていたの?道に迷ってい た時はどこを歩いていたの?未だにそれが気がかりで...」


  2人は過去の話を楽しくしていると小綺麗なお店を見つけた。メモを取った内容はその店を指している。さすがの2人も期待外れだったようだ。


「あら、2人ともどうしたの?何だか満足のいってない顔をされているようだけど...」


 2人が想像していたものは現実世界で流行っていたゲーム、ケミカルラボの情報屋を意識しすぎていたようだった。


「とりあえず、中に入ってみようか。じゃないと現実世界に帰れなくなるからね。アクリロニトリルさんもすぐ近くに来ているかもしれないからね」


 店内は多くの張り紙が壁一面にぎっしりと貼られており、中には迷子の知らせや、指名手配の情報、災害が起きた時のための情報が多くあった。


「いらっしゃい。君たち見ない顔だね。この王水の都の中心街メチルで 君達のような服装は、他の国でも見ないよ。変な話をしてしまったね。 僕はこの情報屋を経営しているカリウムだ。主にニトログリセリンや ニトロベンゼンなどの危険物を扱う人たちに便利な情報を提供してい る店だよ。あ、もちろん普通の情報や誰も知らない情報を仕入れているからこの国や世界の情報を提供するよ」


 このカリウムは過去に爆弾を作る実験で大失敗をして永久追放を受けた元王水の都化学部隊だったらしい。 プロパノールは、情報の数々を見ていたらフラーレンの顔を何度か見て1枚の紙を見ていた。それを見ていたカリウムも同じ動作をする。2人は深呼吸してカリウムからフラーレンに思わぬ一言を投げた。


「お嬢さん、どうやらあんたは迷子のようだね。君の父、フェノール様が 探していましたぞ?さぁ早くお父上の元へ戻りましょう!」


 流石のフラーレンもよく分からなかった。コバルトはフラーレンの腕を強引に引っ張るカリウムの顔面目掛けて殴り飛ばす。


「カリウム!いい加減にしろ!僕たちとは初対面のはずなのに、フラーレンがこの国にいた迷子の子だって?寝ぼけたこと言うのも程々にしろ!フラーレンは俺と幼馴染で両親からも結婚を許されているほどの大親友でもあり未来の奥さんだ! なのに、フェノールの娘がフラーレン?小さい頃からお互いを知ってい る僕達から言わせればフェノールが父親である証拠を出せ!以後フラーレンの体に指一本触れるな!カリウム!」


 (あんなに怒っているコバルト初めて見た)


 フラーレンは涙を流していた。2人は、外へ出てビニル伯爵の屋敷へ戻る。プロパノールはコバルトがしたことを謝罪し、二人が情報屋へ 来た理由とビニル伯爵がこの情報屋が良いという話をカリウムに話した。カリウムの魔の手から逃げた2人は、屋敷で話をしながら屋敷のお風呂へ入る用意をしていた。その間コバルトはフラーレンを慰める。


「少し怖かったよね...。普段怒らないし、喧嘩に走る姿見せて悪かった ...。もう少しでお風呂に入れるみたいだよ。先に入ってゆっくりしな?」


「とても怖かった。コバルトがあんなに声を荒げて怒る姿...でも私のためにありがとう。コバルトがいてくれるだけで私は嬉しいよ。だから今後もお願い!」


抱きしめた後なんの躊躇いもなく服を脱いでお風呂の準備を始めた。 流石のコバルトもそれを見て視界を避けるかのように目を背けた。


「フラーレン...流石にそれはまずいよ。いくら結婚を許されたからって僕の前ではしないでくれ...」


 顔が赤くなったフラーレンは脱いだ服を持ってお風呂場へと足を運んだ。


「私1人でこの大浴場使っていいのかな...。とても広いや。でもなんで コバルトはあんな行動をとったのかな。でもコバルトのことが今まで以上に好きになっちゃったな。1人でつかうには広いけどお風呂、楽しもうかな」


 3時間後、プロパノールは屋敷へ戻った。


「あれ、フラーレンはどこにいるかしら。さっきのことで謝罪したいとカリ ウムさんから伝言を預かってきたわ。あと実験器具の話をしたら有力な情報を得たよ」


「さっきは驚かせてしまってごめんなさい。フラーレンのことを守らないと いけないという考えが強くなってあの行動をとってしまいました。でもあなたも疑っていましたよね...。確かに載せてあった顔と比べると似てい ますよね...。フラーレンならお風呂に入っていますよ。ずっと僕がとった行動が怖かったと話していましたがそれはフラーレンのためだという 事がわかってくれたので大丈夫です。なので気にしないでください」


 涙を我慢してプロパノールに話した。その姿は大切な人を守る護衛隊のよう。


「ではフラーレンが戻るまで待ちましょう。私たちもお風呂に入ってさっぱりした状態でお話をしましょう」


 3 人はそれぞれお風呂に入ってプロパノールさんがカリウムと話していたことを伝えた。


「あの実験器具はカリウムさんが以前持っていたもので伯爵に高値で打った物なんですって。どれだけの価値なのか分からないけれど先祖 代々伝わった物だって話してた。とある遺跡で使うらしいけれどそれがよく分からなくて...。でもつかう溶液はこの都にあるみたいでそれは ...」


「それは、私が持っているこの国の兵器の燃料、塩酸だ」


 伯爵は高価な瓶を持ってそう言い放った。


「でも、アルミ王が持っているってあの時言っていたよね...。なのになぜ伯爵がそれを持っているの?」


 それを言うと伯爵はシャルル国に戦争を仕掛けてきた話を始めた。


「君たちは、シャルル国から来た人たちだね。まずこの戦争に塩酸を使って街を破壊してしまい、すまない。とある国から作ってくれと言われて カリウムと極秘の武器開発をしたのだ。しかし、アルミ王はそれを嫌っていた」


 コバルトが反論しようと言いかけたが伯爵は続けて言った。


「なぜなら、武力行使をしてまで国を鎮圧したくなかったからだ。カリウムの先祖は今までアルミ王の元で支えていた家臣だった。しかし、カリウムが勤めていた時、王の考えが気に入らずニトログリセリンなどを開 発しようと若い者達を集めて作ろうとしたのだが、この国の法に触れて しまい、爆弾などを扱う資格を剥奪されたのだ...。そしてフェノールという者はすなわち、この滴定において必要な指示薬になる。 フェノールは代々その名の薬品を作ってその者の真意を確かめる方法 の一つで作ってきたものになる」


 フェノールと聞いてコバルトはカリウムがフラーレンにした行為を伯爵にそのようになった経緯を話した。


「なるほど、そういうことか...。それは無礼なことをしてしまったな...。だがフェノールは 2 年前に命を落とした。死因は…」


「ナイトラス・オキサイド・システムでガソリンの燃焼効率を用いて俺がフェノールを殺した」


 カリウムが屋敷の窓を突き破って現れた。そしてフェノールを殺した犯人でもあったことを自白した。


 窓の近くにいたフラーレンは逃げようとしたがカリウムがフッ化水素を使用してガラスを溶かし、中へ侵入した後、フラーレンを捕まる。


「ここまで知ってしまったならそう簡単には逃さない。こいつの命が大事なら滴定の実験用具と塩酸を用意しろ!さもねぇとこいつを連れて元の世界へ戻れないようにするぞ」


 コバルトは応戦しようとしたものも伯爵に止められ、言われた通りカリウムの要求するものを渡す準備をした。

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