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化学ファンタジア  作者: saiha
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4話:触媒

 プロパノールとその 2 人が国を出て数時間馬車に乗り、アクリロニトリルの安否が気になる中、王水の都へと到着した。


「さぁ着いたわよ。ここが王水の都よ。見た目はすごく綺麗でしょ?」


 それもそのはず。金を拵えた建造物が多く建築士も王水で金を溶かしながら形を調整していた。フラーレンとコバルトはその光景に目を奪われながらプロパノールの後をついて行った。


「おお!プロパノールじゃないか!久しぶりだなぁ」


 1 人の男性がプロパノールの名を呼ぶ。その人こそアクリロニトリルが言っていた友人夫妻だったのだ。


「あら、久方ぶりですね。ビニル伯爵。エタン夫人はどこにいますか? 久々にお話したいですわ」


 ビニル伯爵はこの王水の都1の豪邸に住み、話によるとこの国を守る為外見から見えないようにしていたという。


「あの、ビニル伯爵。一つ聞いても良いですか?」


 コバルトが問う。伯爵は1つ頷いた。


「なぜこの王水の都は滅亡したということしか出てないのでしょうか? 私たち滴定をする為にここにある塩酸を探しに来たのです。何か知っている情報があれば教えて欲しいのですが...」


 その瞬間伯爵の顔は一変する。プロパノールにも話していない事を話した。


「この話は誰も知らない話だが王水の都の存在を消すためにそうしたのだ」


 3人は納得した。こんなに綺麗な都はどこを見ても唯一無二の存在している国である。続けて伯爵は話した。


「王水の都は、今ある国の中でもっとも強い兵器を保持している。それ は他国をも吹き飛ばし、滅亡するほどの力をここにそんざいしているのだ」


 その兵器の正体は都に住んでいる人たちですらも知らないという事らしい...。


「まぁ立ち話もあれだから私の屋敷にてお話をしよう」


 屋敷は外見は何も無いただの平坦な地上が続いていたが伯爵がとあるものを取り出した。


「これをここにこうやって...。よし、みんな少し離れてくれ!」


 周りが少しずつ金色の姿が彼らの目の前に現れた。


「なぁフラーレン、純金ってさ、とても高価だから手に入りにくいってボイル先生言ってなかったか?」


 フラーレンはその純金の神々しさに圧感してコバルトの話は一ミリも聞けてなかった。伯爵は意気揚々に3人に話す。


「よし、みんなようこそ!我が屋敷へ!ってみんなどうしたんだ?そんなに神々しく見えたのか?」


 3 人は空いた口が閉じられないという状態だった。


「いやプロパノールはなぜ驚いているんだ?前にも来たことがあるだろ!といっても、遠い昔にお前さんの夫婦と酒を交わして泥酔したお主を家までアクリロニトリルと力 合わせて運んだのじゃったな...そして確かあの時は...」


「まぁとりあえず屋敷に入りましょう!ここにいるとバレたら大変なことになりますからね。オホホホ...」


 2人は思った。この人真面目そうに見えてとてもお茶目なところがあるのだ、と。表情には表さず心の中に閉じることにした。 ビニル伯爵の屋敷に入ると想像を超える広さと多くの召使いが並んで帰りを待っていた。


「おかえりなさいませ!ビニル伯爵!エタン夫人でしたらお食事の用意 をしております。そしてこちらの方々は...」


「あぁ、私のお客様だ。アクリロニトリル殿は知っておるだろう?彼の妻プロパノール夫人とその知り合い...でいいのかな?」


「あ、はい。僕がコバルトで彼女はフラーレンです。色々事情があってこの世界に迷い込んでしまいました...。元の世界へ戻るためこの中和滴定で用いられる器具と残り必要とされる3つの溶液を集める旅をしています」


  伯爵とその召使いの表情が凍る。なぜならこのコバルトの説明がミョウバンの結晶のように純粋なのに言っていることがリチウムの炎色反応のように真っ赤な闘志を感じたからだ。


「ふむ、そういうことか...。詳しい話を食事しながら聞こうではないか。 すまない、3 人分追加で頼む」


「かしこまりました!」


 一行は食事を行う部屋へと向かう。コバルトとフラーレンは料理が来るまでの間伯爵に今までの経緯を話した。話の内容の中でアクリロニトリルが大変なことになっている話もした。


「はいみなさん!お料理ができましたわ!って今日は随分賑やかですね!あら、プロパノール夫人!お久しぶりでございますね!そして彼らは...」


「あぁ...詳しく話してなかったな...。すまない。彼らはコバルトとフラーレ ンだ。プロパノールの知り合いだ。緊急で申し訳ないな...」


「お客様でしたら喜んで歓迎しますわ!コバルト君にフラーレンさん、ようこそ我が家へ。私はビニルの妻、エタンです。今夜はゆっくりしてくださいね」


 食事をとりながらこの国の真相と中和滴定の話をしていたらドアのノックが響いた。


 召使いがドアを開けると青い小鳥が足に何かを結んで玄関の前に座っているのを見かける。アクリロニトリルからの手紙だった。 プロパノールは手紙の内容を読んで喜んだ。


“プロパノールとフラーレン、コバルトよ。どうにかビニル伯爵の屋敷へたどり着いただろうか?僕は...いや我々の軍はマーキュリー王を守り、戦争を行なった相手国との決着がついた。片腕失った中でどうにか プロパノールのグルコースで一気に戦うことができた。このあと数日は 王の元で護衛して落ち着き次第君らの元に駆けつける。中和滴定のことについて詳細がわかったことを彼らに伝えてくれ...。すぐに駆けつける。また会おう。

アクリロニトリルより”


 それを聞いた2人は泣きながら喜んだ。


「あの兵隊さんに会えてなかったら今頃私たちはあの戦争に巻き込まれて殺されていたよね...。ねぇコバルト、アクリロニトリルさんが言って いたその詳細ってなんだろうね...」


「気になるけれども今はここへ戻ってくるのを待とう。その間、伯爵が今調べてくれているから僕たちは何か出来ることを召使いさんに聞いて 手伝おう」


 プロパノールもコバルトもフラーレンもアクリロニトリルが王水の都へ来るのを待ちながら一夜を過ごした。 夜が明けるとコバルトが大きなことに気づく。 伯爵の飾っている実験器具が、あの壁画に書いてあったものと同じだ ということに。朝食の時に伯爵へそれを尋ねると見せてくれた。


「これって中和滴定の器具ですよね。なぜここにあるのでしょうか?」


 話によると伯爵は骨董品ならぬ実験器具を収集していたということだっ た。伯爵はこう告げた。


「これは正真正銘本物だけども使い方が分からなくてね...情報屋がこの都にあるから壁画のことを聞いてみるといい。この世界ではおそらく だが物知り博士だと思う。勿論、この器具は君たちに渡すよ。持ってても分からずじまいは嫌だからね」


 そう聞いてフラーレンとプロパノールと一緒にビニル伯爵が教えてくれた店の場所をメモして器具を持ってその情報屋へ行くことにした。

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