34話:フェノールの正体(中編)
プロパノールの家に戻った2人は、フラーレンの巻いてある包帯を解いて新しい物に取り替えようとコバルトが交換を始めた。上半身全てに傷がついたフラーレンは胸を隠しながら、少し恥ずかしい表情を見せてコバルトの治療を受ける。
「なんか…恥ずかしい。いくら幼馴染って言っても、大きくなった胸を男の子の前で見せるのは難しい」
「でもなんだろうな…変わったことはフラーレンの心が前よりも逞しくなったよね。弱音吐くところは相変わらずだけど、フラーレンを彼女にして良かったなって思える」
雑談をする2人だが、話は元の世界へ戻る方法へと変わる。
「もう、戻れないのかな…お母さんにもお父さんにも会えないのかな。もし、会えなくなったら私たちどうしたら良いのかな」
「ここで暮らすしかないよね…。2人で仲良く一生を共にして、子供作って幸せに過ごしたい。それは、元の世界であっても同じ考えなんじゃないかな」
コバルトのさりげない一言に、フラーレンはコバルトをベッドの上に押し倒してお腹の上に乗る。何が起きたのか、状況把握ができないコバルトは頭真っ白となりこの後何をされるのか、理解不能となった。
「どうしたの…フラーレン。まだ包帯を解いたばっかりで、これから薬を塗るのにこのままじゃお風呂入る前の状態だよ?」
「前からこういう状態になりたかったの。大人のような事をしてみたいってね…コバルトはどう思うか分からないけど、アクリロニトリルさんたちの戦いが終わるまでコバルトの体温感じたいから横に居たいの。ボイルから私の体を傷つけられたとき、とても怖かった。裸にされて、コバルトに将来見せるはずの体を大人の人から見られちゃったからそれが悔しかったの。この体本当に綺麗って思える?変な大人からお腹も胸も何もかも傷を付けられて、それでもコバルトは私のこと愛する自信があるの?」
泣きたかったのか、フラーレンの目には涙が溢れる。ボイルから受けた傷は身に染みるもので誰が見ても痛々しい。コバルトもそれを理解した上でずっと話を聞いた。コバルトはそんなフラーレンを優しく抱擁しながら話す。
「どんな体であっても僕はフラーレンの事が好きだよ。体目的なんじゃないか?って過去に言われた事があるけど、僕はフラーレンの心もだけど何もかもが好きだ。こんなに可愛い女の子はちゃんと守りたいし、幸せにしたい」
「うん…!!」
ドアの側でプロパノールがその内容を聞いて目に光るものを滲ませながら部屋へと進む。何かを言いたそうな顔をしていたが、それはもう分かってる事だろうという一種の階段と見ていた。
アセトアルデヒド率いる軍は転炉型の鍋をボイル率いる軍の後ろへ兵を送り、着々と準備を進めている。防戦一方のボイル軍だが、予想外の敵が帰ってきた。
「おいおい、俺があのガキを殺しに行く間に劣勢になって何やってるのかなぁ?ボイルを困らせるなよバーカ」
戦場は思いがけない圧力がかかる。その変化に気づいたのはアクリロニトリルだ。
「なんだこのプレッシャー…さっきまでは空気の体積共に一定だったはずなのに圧力が増加した?でも、ボイルにしては変だ」
その違和感はカーバイド、クロロ、アセトアルデヒドもすぐに気づいた。1人の兵士が叫ぶ。
「ヘンリーだ!高気圧のヘンリーが来たぞ!」
「なんだと?まだ増援がいたのか。参ったな…だが転炉型のやつは分かってないから何とかなる」
アクリロニトリルが分析する中、またも悲劇が訪れる。
「ジュラルミン、ヘンリーにより惨殺」
伝書鳩のようなカラクリ鳥の伝達にアセトアルデヒドが激昂する。
「下民どもが、弟のように可愛がってやったジュラルミンを殺すとは何という蛮族。1人残らずぶち殺す」
アセトアルデヒドは奮戦し、一気に加速する。それに続いてアクリロニトリル達は策を敷くためにクロロとカーバイドにサインを出して行動に移る。
そんな中、ボイルは1人安全な場所で謎の呪文を書していた。その呪文を書いたあと祈るように瞑想を開始するとボイルの体から六角形の謎の人物が煙のように現れた。
「お前の体は本当によく使える。だが、反抗すればどうなるか分かってるよな?」
「はい…分かっています。フェノール様」
こんな事を知らないコバルトとフラーレンは抱き合うようにして夢の中へと誘われていった。




