32話:秘密兵器アセトアルデヒド
プロパノールがお茶を用意している時、1人の男が立ち寄る。
「ただいま!お母さん」
「あら、おかえりアセトアルデヒド。何か進展あったかい?」
プロパノールが玄関で対応したのは、実の息子であるアセトアルデヒドだ。彼はアクリロニトリルの下で武術を学び、一時期はマーキュリー王国を守るべく1人で96500人の兵士を倒したと言われている。
玄関が騒がしい事に気づいたフラーレンとコバルトは、それぞれの怪我を労わりながら向かう。
「こんにちは…初めまして」
「えっと、プロパノールさんこの方は…」
2人も見覚えのない人に対して、困惑する。すぐにアセトアルデヒドから説明を始める。
「驚かせてしまいすいません。私はプロパノールとアクリロニトリルの間に生まれた正真正銘の息子、アセトアルデヒドです。プロパノールの父親がエタノールだったのでそのように名を付けたと聞いています」
「こらこら、そんな堅苦しく説明しないでまずは家に入ってご飯食べようか。疲れただろう」
アセトアルデヒドは持っている武器をリビングにある椅子の下に置き、その椅子に着席した。その相席にフラーレンとコバルトが座る。
「2人はどういった経緯でこの家に?」
「僕から説明しますね。僕たちは元々水素爆発の実験でこの世界へと迷い込んでしまいました。しかし、一時は元の世界へ戻れましたがジュラルミンからこの世界の危機を知らせにきた事で救いに来ました。ボイルの侵攻がどんなものか分からない中、隣に座ってるフラーレンは一回囚われて拷問にかけられました。その体には大きな傷が残ってしまい、包帯でカバーしつつです。あと少しで傷跡も無くなって元の肌に戻りますが、心の傷は思ったより深いところです」
コバルトが真剣そのものに話す中、フラーレンは何故か笑っていた。
「フラーレン、なんでこんな真剣な時に笑うの?お前の良くないところだぞ」
「私の事を思って説明してくれるのは嬉しいけど、もう引きずってはいないよ。私の体をコバルト以外の人に見られてしまったのは本当に怖かったけど、治せる傷だから良いの。心の傷は塞がってるから大丈夫。私の心と体はコバルトのものだから」
抱きつくフラーレン。笑うアセトアルデヒド。事情を理解したアセトアルデヒドはテーブルに置いてある、グルコースを1つ手に取って食べる。
「懐かしいなぁ。これ食べて親父の武闘術に臨んでたっけ?傷つきながらもよく耐えたなぁ」
懐かしむアセトアルデヒドに、アクリロニトリルが帰宅する。
「ただいま帰りました、ってアセトアルデヒドじゃないか!よく戻ったな」
「お父さん!今戻ったよ。国が大変な事になってるって聞いて一目散に戻ってきたんだよ」
「そうかそうか、丁度いい。作戦が少し難航していたものがあったから、協力してほしい。良いだろうか?」
「勿論だよ!」
この2人の師弟関係は仲微笑ましい分、何かがあるようにも見えた。恐らくアセトアルデヒドはアクリロニトリルが一度死んだという事実を知らないからこそ、明るく接するのかもしれない。
「お父さんはどんな作戦を考えてるの?」
「クロロの軍勢で圧力を得意とするボイルをやろうかなと。転炉型の鍋に追い込んでドロドロに溶かそうと予定している。ただ、クロロは光に弱い。やるとしたら夜中に奇襲をかける」
コバルトとフラーレンがいないバルコニーで話す2人。アセトアルデヒドは理解した後、見たことのない武器を取り出す。
「なら、父さん。これを使うのはどう?クロロさんは光が弱い。なら、その光を逆利用するという意味で持とうよ」
「これってポリ塩化ビニルの槍?でも、どうやって作ったんだ?」
「塩化ビニルを縮合重合した後、無限の力にするべく耐久値を上げたんだ!僕がいた所で世話になった宿屋の主から貰った」
話が複雑で分からなかったが、作戦は大いに進むとアクリロニトリルは考える。作戦決行の日が刻々と迫る中、最後の会議を行う。そこには息子のアセトアルデヒドが参加していた。
「皆よく来た。最後の秘密兵器が来てくれた。我が息子、アセトアルデヒドだ」
「宜しくお願いします」
カーバイドとクロロは一礼する。作戦の確認とポリ塩化ビニルの槍をクロロに譲渡した。
「こりゃまた面白い。なるほど、この槍は進化するな。クロロメタンへ進化して優位に立てる。よし、分かった。ぶっ倒そうか」
一致団結する4人。決定と同時にアルコールランプの日が紫に変わる。これが、ボイルとの最後の戦いだと思い最大戦力をぶつける。




