30話:圧力への対応策
体に火傷と心に傷を負ったフラーレンだったが、コバルトの顔を見るたびに背けるようになった。
「フラーレンどうしたの?避けてるみたいだけど話してごらん」
「私の傷ついた体をコバルト以外に見られてもう尊厳失ったの…。コバルトのために女を磨いてたからさ」
話しながら火傷した胸元を隠したり、お腹をさするように触ったりとする。しかし、コバルトはそんな小さなことに気にする男ではなかった。
顔を背けるフラーレンをコバルトは、背中から優しくハグをした。胸元に手を置いたコバルトだったが、その温かい手にフラーレンはコバルトの手を当てる。
「フラーレンは僕のものだよ。フラーレンの体を見られたって言っても、傷付けてそれを喜ぶ奴らだから違うと僕は思う。胸元の火傷と背中の傷…お腹の傷を見るともうビキニは着れないって思ってるかもしれない。でも、ありのままのフラーレンが好きだからこんなのは関係ないよ。背けるのはやめてほしい。お願いだ…」
コバルトの優しい声かけに涙を流す。その涙は、コバルトの手に伝わりフラーレンの温かい涙はコバルトも分かるほどのものだった。
2人の横に置いてあるものは、焼けてしまったフラーレンの着衣で痛みとその時の酷さを物語っている。背けるフラーレンの顔をコバルトは自身の前に目を合わせて無言でキスをした。それはもう2度と離さないという、意思表示なのかもしれない。
その間アクリロニトリルとその兵士たちは対策を練っていた。生き返ったアクリロニトリルは、分解された奴だと言われたものも今はやっと信用してくれたとのことだった。
「さて、どのようにして相手が攻めてくるか対策をしないとね」
「隊長はどう考えますか?」
「ボイルはこの世界を占拠する気でいるかもしれない。圧力が強いからね。でも、こんな時は光反応しやすいクロロに頼むとしよう」
アクリロニトリルと話をしていたのは、一番弟子のカーバイトだ。骨のあるやつで常に隊長と共に過ごす。
クロロはカーバイトの知り合いで、光を原動力に分裂を得意としている事でアクリロニトリルに提案する。しかしイエスとは言わなかった。
「クロロか…。でも相手はボイル。圧力を巧みに操るやつだ。まだ敵はいるかもしれない」
アクリロニトリルが心配するのは、ボイルの手下が何をしてくるのかという事だ。断言しなかったのは違和感に思ったカーバイトだったが、今は対策を練ることに専念する。
「プロパノールさんも生き返ったんですよね…元気されてますか?」
「僕の妻は元気だよ。あの2人のおかげだと言ってるから元気であることに間違いはない」
たまに和気藹々とするシーンもあり、ほっこりする部下もいる。
話をする中、2人の英雄が姿を見せた。
「待ってたよコバルト君。そしてフラーレン。傷は大丈夫かい?」
「とても傷ついたけれども、覚悟を決めました。共に戦いましょう!」
作戦会議に2人が加わったことで、ボイルを追い詰めて撃退するという計画を本格的に進める。作戦が決まらずそのまま解散した後、フラーレンとコバルトは2人で手を繋ぐ。
コバルトにはフラーレンと同じような傷が1つある。それは、遡ると幼少期の事だ。アルコールランプを扱う際に中身の液体をフラーレンが投げてコバルトの腕にかかり、フラーレンのうっかりでアルコールを燃やして火傷を負わせてしまったというものだ。
「それにしても君のその傷はずっと残ってるね。私の電気で付けられた傷はとても大きいや」
「さっきも言ったじゃないか。ありのままのフラーレンが好きだよ。そんな体の傷は気にしないでよね…。フラーレンらしくないよ」
2人のやりとりは本当に若い子たちの会話だった。英雄たちが話をしている間、不穏な影が切り裂こうとしている。
「フラーレンの尋問は失敗に終わったか…。だがしかし、あの英雄さえ抑えればこの世界は我々のものだ。次はヘンリーに任せるぞ。必ず成功するのだ!」
「分かりましたボイル様。必ずこの世界を支配しましょうぞ」
お茶を嗜むアクリロニトリルのお菓子が、何も触れていないのに2つに割れた。
「あら、割れてしまいましたね。取り替えましょう」
「その必要はない。恐らく、何か嫌な予感がお菓子が感知したのかもしれない。数日は気をつけておこう」
アクリロニトリルは不穏な何かを感じ取った。国とフラーレンたちを守るべく、武器の手入れを行なった。




