29話:フラーレンの同素体尋問
ボイルの声が外から漏れる。2人はその近くにおり、音を立てないように逃げる。
「フラーレン、僕が先に行くから安全を確認した上で同じようについてきて」
「分かった」
コバルトは忍び足で音を立てずにシェルターの奥へ逃げ込めた。すぐに安全を確認した後、フラーレンへOKサインをだす。
「今のうちに」
「分かった!」
フラーレンは、コバルトがした通りに忍び足で歩いた。
1匹の虫がフラーレンの鼻に付着した。我慢するのに必死なフラーレンだったが、禁忌を犯す。
「ファクション!?」
くしゃみをした時、フラーレンの小さな体に圧力がかかる。
「息が…でき…ない」
「フラーレン!?今すぐ助けに…」
コバルトが身を乗り出そうとすると、ビニルがそれを止める。フラーレンはボイルによって拉致された。
「伯爵!なぜこんな事を…僕の大切なフラーレンをどうして…」
「コバルト君。今は耐えるしかない。ここで戦って何が出来る?素手で戦おうなんて無茶だ」
怒り狂うコバルトを必死に抑えるビニル。しかし、コバルトは拉致されたフラーレンが心配で泣くことしかできなかった。
「フラーレン…フラーレン…くっ」
ボイルによって拉致されたフラーレンは気を失ってとある部屋に縛られていた。服も脱がされており、着ていたのは下着のみ。
「ここは…どこ?」
「目が覚めたか、英雄の1人フラーレン。今からお前を同素体尋問を行う。フラーレンの構成元素は炭素だ。コバルトたちの考えている事を吐いてもらおう。答えなければ、電流を流す」
ボイルの声にフラーレンは立ち向かう。
「そんなこと言っても私は知らない。そもそも、ここに来てまだ何もしていないのになぜこんな事受けなきゃいけないの?」
ボイルの声が途絶える。両手両足を拘束されていたので、そこから強い電流が流れた。ファラデー式の改造したものだ。
「ア"ァ"ァ"ァ"ァ"〜…体が焼ける…助けてコバルト」
フラーレンは、涙ながらに大声で助けを求める。しかし無情にも電流は強くなり、着ていた下着も焼け落ちそうになっていた。
「ヤバい…コバルトだけにしか見せないと決めた体が…」
フラーレンは露わになる胸とパンツが焼かれて覚悟を決めた時、大きな声が聞こえる。
「フラーレン!どこにいる?」
「この声は…アクリロニトリル?」
復活させたアクリロニトリルがコバルトと共に探し出したのだ。コバルトは声を頼りにフラーレンの独房へ向かい、その扉をTNTでこじ開ける。
「フラーレン!なんてひどい…恥ずかしい姿にまでしてしかも怪我してるじゃないか。プロパノールさんから服をもらって正解だ」
全てを予測したかのようにコバルトはフラーレンに服を渡す。コバルトは、持っていた剣で拘束具を切り捨てた。
着替え始めてフラーレンは涙を流しながらコバルトに甘える。
「コバルト…待ってたよ。本当に怖かった。裸にされるまで両手両足の拘束から電気流されて、コバルトにしか見せないって決めてたからお嫁に行けないって思ったの」
「フラーレンの心と体は僕が守りぬく。成長した姿は幼馴染だからこそ確認できるけど、辱めた事と尊厳を失わせたボイルは許さない」
しかしフラーレンは引っかかる事があった。
「ねぇ、なんで私がここにいるって分かったの?」
「ネックレスが教えてくれた。あのシェルターでビニルさんに止められてた時、光出したんだ。シェルター内でアクリロニトリルさんとプロパノールさんに奇跡的に会う事ができた。すぐに話をした時、軍を持って率いる事に成功ってことさ」
フラーレンは、コバルトを抱き締める。自分の体を守ってくれた事と、コバルトの心意気に惚れた。
「ありがとう。ここから1人で戦う気だろうけど私も行くよ。武器…残ってる?」
「この剣を君に…と託されている。尋問されて心が折れそうだっただろう?元の世界へ戻ったら受験と恋の続きをしよう。結婚して家族築こう」
「うん…!」
2人の持つ剣はアクリロニトリルが持つもので鉄鉱石を溶かして銑鉄を作り、転炉を用いて鋼を伸ばし作り出したものだ。希望の英雄2人がここに揃う。
「コバルト君!ボイルのことなんだが…逃げられたようだ」
「そうですか…分かりました。一時撤退して体制を立て直しましょう」
フラーレンをお姫様抱っこした上で塩基国へ戻る。フラーレンがいた場所は分からず終いだ。
「私がいたのはどこだったの…?」
「フラーレンがいたのはシャルル国の宿敵、サリチル国だ」
サリチル国は医療が進んでいる国で、炎症を起こしたりした時には患部に貼ることで治すというものを開発していたがボイルによって滅ぼされたとのこと。
コバルトはフラーレンをベッドへと連れてそのまま寝かせる。
「1人じゃ寝れないよ…一緒に居てよ」
「相変わらず弱虫だなぁ、分かった。そばにいるから安心して休みなよ?傷口もひどいからこのベッドに寝るだけだ治せれるみたいだから」
フラーレンは微睡に落ちる。2人は、互いの無事を確認した上でそのまま夢の世界へと誘われる。




