28話:変わり果てた塩基遊離
ゲートを抜けた先の光景に、フラーレンとコバルトは立ち尽くすことしか出来なかった。
「これが…本当にあの時見た塩基国?言葉にならないくらい損害が大きすぎる」
「全部、ボイル・ロンドがやったの…?」
2人は嘆くことしかできなかった。ジュラルミンはアルミニウム皇太子を探すべく、2人をそっとした。
「てか、フラーレン今思ったけどジュラルミン成長してないか?男前になったっていうか…」
「そう言えば…なんかガタイが良くなってたね。ここへ来る前はまだ幼い男の子だったよね…とりあえず、今は何か探しに行ってるような感じだから私たちもちょっとこの周辺を歩いてみようよ」
「そうだね。何かあるかもしれない。それにしても…匂いが強烈すぎる。どんな溶液使ったのか知らないけど刺激臭にも程がある」
あたり一面の塩酸による匂いが充満していた。歩き回ってる中、ジュラルミンとアルミニウム皇太子が2人の前に現れた。
「おお!我が国を救った戦士、コバルト様とフラーレン夫人ではありませんか!この国がまた大変な事になってしまい他の国もボイルという男に潰されていると連絡を受けております。ささ、このシェルターへ入ってください」
言われるがままシェルターへ入ると見覚えのある人がいた。しかし、話があるという事でこの日はシェルターの中にある大きな部屋へ案内された。フラーレンとコバルトは目で見たものと状況について話し合った。
「ヤバすぎるね…もしかしたら元の世界へは戻れないかもしれない。遺書を机の上に書いとかば良かった」
「フラーレンはいつも弱気だな…と言いたいところだけど本当に戻れないかもしれない。そうなった時はこの世界で過ごそう。僕はどんな目に遭おうとも、フラーレンのことは一生かけて守りたいからさ」
「ありがとう…コバルト…」
2人の愛は相変わらずのものだった。コバルトたちが抱き合っていると、また見覚えのある人が現れる。
「コバルト君!ワシじゃ、ビニルじゃ!」
「伯爵様!」
感動の再会に一同は涙する。事の発端を聞いた時、コバルトは怒る。
「分かりました。もう決めました。この理系国家のために命懸けで戦います」
「コバルト…?」
フラーレンは困惑する。それはもう元の世界へ戻らないという覚悟の表れなのだと。ビニル伯爵と住んでいる人たちは歓声が響くが、フラーレンは顔を背けて立ち去った。
話し終えたコバルトは、立ち去ったフラーレンの元へ走る。
「ここにいたかフラーレン。探したよ」
「…コバルトのバカ。命懸けで戦うこと誓うなんて…。一緒に生きて過ごしたかった」
「わがまま言っても君が僕ならこのように無謀な行動取ると思うけどね」
「分かった。私もコバルトのためにこの命、コバルトに預けるよ。ボイルを止めよう」
生き残る確率が少ない戦いに、2人は決心する。抱き合った後、ネックレスを掲げて誓う。アクリロニトリルとプロパノールの住んでいた世界に平和が戻るように、という願いだ。
抱き合うようにして眠りについた時、1人の男が大声を上げる。
「ボイルの軍勢が攻めてきたぞ!塩酸爆弾にきをつけろ」
飛び上がって起きると、コバルトは周りにあった溶液の1つを取り出して、周りにぶっかけた。なんの真似なのか理解出来ず。
「何してるの?」
「塩酸なら中和するまで!こいつは水酸化バリウム。緑の炎色反応が灯されていて、それが周りに置いてあったから使った」
「流石コバルト!」
2人が来る前の死者はアリの大群のように出てきていたが、コバルトの好判断でゼロに抑える。何事もなく終わった攻撃だが、外から声が漏れる。
「どうやら知恵を絞り出したようだな。英雄2人がここに来てるみたいだな」
「ボイル…」
声の主に怒りを覚えるコバルトだったが、出ないように気持ちを抑え込む。そしてコバルトとフラーレンにとって最大のピンチに陥るという事を、その時は誰も思っていなかった。




