25話:硫黄の如き青い炎
いつものようにコバルトとフラーレンは手を繋いで受験勉強をしながら登校した。学校では有名になるほどのカップルで、注目の的だ。
「みんなに見られてるね!私たちもあの事件起きて以来こんなに人気出るなんて思いもしなかった」
「でも、流石に視線が多すぎてキツいね…。図書館でも見られるし、どうしよう?」
2人は廊下でも手を繋いでいるためか、コバルトの好きな他の女子からは尊いと言わんばかりに倒れたり失神したりした。フラーレンは誹謗中傷の言葉を受けては受け流していた。
「仕方ない…ベクトルおじさんの家で勉強しよう。異世界にいた時に言ってたことさ。そこなら静かで勉強できるから良いよ」
フラーレンは頷いて授業が終わった後、走って向かった。ベクトルは自分の好きな結晶を集めるのが趣味で、その取り扱いは几帳面で慎重に手入れしていた。
「ベクトルおじさん!お久しぶり!コバルトです。遅くなったけど退院して元気だよ」
「フラーレンです。私も元気です。またお会いできて嬉しいです」
ベクトルは、90歳を超える。いわばおじいちゃんだ。好きな事はそんな孫のコバルトと話をする、それがベクトルにとってとても楽しいひと時だ。
「あ、そうだ!前夏に行った時の写真見せようよ!あの時までまだ退院してその報告するの忘れてたわけだからさ!」
フラーレンの考えに乗ったコバルトはフラーレンとの写真を見せた。勿論、夏以外の冬にサプライズをしたことや多くのことを話した。
「おやおや、お久しぶりじゃな。フラーレン殿も元気そうで何よりじゃ。写真を見てみようかの…。こりゃまた刺激が強すぎるな。コバルトはフラーレンのこの写真気に入っておるのか?お前も立派な男になったものだのぉ」
その写真はフラーレンのビキニ姿とコバルトの海パン姿によるツーショット写真だった。続けてベクトルは話した。
「ワシの女房を思い出すよ…。愛しいフィボナッチ、あの時死んでしまったこと今もよく覚えてるよ。じゃが、お前さんらを見ると若い時のわしらにそっくりじゃ。勉強だろ?2階に行くと良い。コバルトの幼少期以来使ってない部屋があるから使いなさい」
ベクトルの過去はとても壮絶だった。何よりまだ若い頃、フィボナッチはベクトルの痛んだ心を癒やして立ち直らせた恩人であったからだ。仕事の失敗でクビになったベクトルにフィボナッチは手を述べた。それがきっかけで2人は付き合い、結婚した。しかし、ベクトルが65歳になるとフィボナッチは原因不明の流行病を患い死んでしまったとのこと。そんなフィボナッチの最後の一言はこう残された。
「もし、娘のルートから生まれる子供と付き合う子がいたらその子のこと任せましたよ!」
そう言い残し、フィボナッチは永眠した。フラーレンたちは2階の部屋へ行って勉強の準備をした。化学や物理、数学に英語、社会などと大量だった。
「これからはここで勉強した方が良いかもね…。他の生徒に見られるとかなりまずいしさ。」
「そうだねコバルト。さ、時間計って休憩を入れながら勉強しましょ!」
2人は教え合いながら進めた。ドアが開くとお茶とお菓子を持ってきたベクトルが来た。
「ベクトルおじさん本当に申し訳ない…。あとは僕がするから大丈夫だよ」
「人を年寄り扱いするな!馬鹿コバルトが」
いやもう、90歳を超える爺ィじゃないかと思ったが何も言わなかった。お礼を言ったあと2人は休憩時間にお菓子とお茶を口にした。
「ねぇコバルト!来年の夏また一緒に海行けるかな…?またコバルトの目の前であの純白なビキニ着て走りたいしさ、コバルトの海パン名前の通りの色で腹筋もすごかったからまた見たいなって思ってさ…」
「…見れるさ。僕もフラーレンの白ビキニ可愛いって思ったし肌も白いからむしろ大人だなって思った。行こう!でもまずは目の前のことに集中して頑張ろう!約束する。全て終わったら、毎年恒例のようにして海で走って遊ぼう。結婚して幸せになろう」
2人のいる部屋は愛に溢れていた。勉強が終わったあと、ベクトルにお礼を言って手を繋いで帰宅した。途中ネックレスを触るべくイチャイチャしていたが、2人は互いのネックレスを見てはうっとりした。それも、異世界にいた時のアクリロニトリルとプロパノールの純粋な愛のように。コバルトたちの場合は硫黄のように青く、綺麗な炎を放っているのだろう。
「よし、コバルトのネックレスいじろっと」「あー、お前したら仕返すぞ!触られたくなかったら自分の胸、触られないように防御しろよな!」
死んでしまったボイルロンドも空から2人を見守ってるだろう。そんな2人が仲良く、将来結婚するだろうと。2人の愛は深まるばかりだった。




