18話:昇華
コバルトとフラーレンはその書物に現れし女神の指示に従って滴定の必要溶液と器具を慎重に取り出した。最初にあった3つの溶液に塩酸、水酸化ナトリウム、酢酸、滴定試薬のフェノールフタレインが今ここに集結した。そして、溶液たちが一斉に光出した。
「何この光、私たちを待ってたかのように喜んでる…?知らないところなのに何故か落ち着く…」
フラーレンが言うのも無理はない、何故なら今ここにいるコバルトも元の世界にいた時のような普通という日常を異世界であるこの国で感じていた。そして、その光はとある2人の容姿を描いた。それは最後までコバルトとフラーレンを無事に帰れるように対応してきたアクリロニトリルとプロパノールに似たような1組の夫婦が描かれた。描かれた2人の夫婦は、コバルトたちに向けて笑顔を見せた後大きな扉を開けた。そこには、滴定用の器具とその溶液を備える台座が鏡の前にあった。
「これで元の世界に…‼︎」
「やっと…やっとだよ!」
その場にいたビニル伯爵とマーキュリー王は涙した。これがお別れでもう会えないことを悟った。全ての材料と器具を備えると古代文明の働きなのか、全自動で滴定が始まった。そして、27mlのフェノールフタレイン試薬と60mlの混合溶液で道が開かれた。そこに女神プロペンが再度現れた。
「これが最後の扉だ。2つの願いを叶えることが出来る。鏡に向かってその願いを叫べ!」
マーキュリー王とビニル伯爵は、フラーレンとコバルトをハグしてお別れの挨拶とした。コバルトとフラーレンは声を揃えて願いを言った。
「私たち2人を元の世界へ戻して下さい!そして1組の夫婦、アクリロニトリルとプロパノールを生き返って欲しい!」
その願いを聞いたビニル伯爵とマーキュリー王は感極まっていた。そして鏡の中からアクリロニトリルとプロパノールが現れ、最後に笑みを浮かべた。コバルトとフラーレンはその笑みに応えるかのように敬礼した。今まで協力してくれた事、そして見知らぬ人に対して多くのおもてなしを受けたことに感謝した。そして代表してコバルトが彼らに向けて一言残した。
「ありがとうございます!」
そして2人は光に包まれて、理系の異世界から元の世界へと戻った。コバルトとフラーレンは目が覚めた。多くの医療機材と点滴が施されていた。コバルトの横にフラーレンが寝ているという状態で戻れたねと言わんばかりにアイコンタクトを取った。担当の医師が来ると説明をした。
「君たちが意識を取り戻すまでに2週間経過していた。そして、フラーレンさんの胸の方に刺し傷があったので処置しました。もちろん、コバルト君の方は手の怪我を確認したのでそれも…。その後は爆発の影響で意識不明の状態でした。よく戻ってきましたね!良かった良かった…」
2人は元の世界へ戻れたものもその期間が2週間という期間に対して短く感じていた。しかし、医師は変なことに気づいた。
「君たちがつけているそのネックレスはなんだい?付き合ってるとかそんな感じかな?青と白の…あ、コバルト君だからその石はコバルトで白はダイヤモンドだからフラーレンは炭素だけど透明で清らかな人なんだということかな?良い仲だね!2人ともお互い大事にしなさいよ!」
2人は気づいた。これは夢ではなく、本当にアクリロニトリルさんがいたあの世界にいたのだということを…。




