11話:音波
エントロピーからの条件メッセージは、その配下の者が持ってくる話になっているものも幾度待っても来なかった。待っている間もコバルトは、フラーレンの手を握ってベットの上に2人が寝ていた。コバルトの寝顔を見たフラーレンは小さな声で、
「可愛い騎士団長だね。でも色んなものを背負ってきたからそりゃ疲れるよね…。コバルトの幼馴染になれて良かった。出会ってくれてありがとう。コバルト」
声かけた後、アルカリ王がコバルトの肩を叩いて起こした。メッセージが届いたとのこと。
フラーレンをプロパノールに任せてトンネルの入り口へ向かった。そこには既にマーキュリー王が対応していた。
「よくぞお越しになられた。お主がホイートストンブリッジ国のエントロピー王に任されてメッセージを送ってきたのだな?そのメッセージを見せてくだされ」
ホイートストンブリッジ国から来たその配下はコバルトのようにガリガリだったがその雰囲気は近づくだけでも困難なほど重く感じた。近づけば近づくほど重力が強くなってきたようでもあった。名前を名乗ることなく鉄球のようなものを渡して一例して元の場所へ帰った。
「この鉄球の中にメッセージが入ってるのでしょうか?何だかとても不思議ですね。見た目がアルミニウムに包まれたチョコレートみたいですね…っ!?」
コバルトは一つ気づいた。この鉄球は何か見覚えがあった。それはアルミニウム皇太子の持つ勲章の一部が見えていたのだった。
「アルミニウムがメッセージ版として死んでしまったの…?」
恐る恐るメッセージを開くとアクリロニトリルが残したような形でホイートストンブリッジ国のエントロピー王が映し出された。
「塩基国の諸君。何のために地下トンネルを開発している?そして君たちは我らが誇る波動銃を使用したようだな。我々が使用している波動と一致したからすぐに分かった。何をしているのかをこのメッセージを見た日を含めて3日以内に出せ。そうすればこの件は見逃そう。ただ、同じ塩基国のアルミニウム皇太子とやらが私の部下に手を出したようだ。今治療のために様子を見ている。メッセージ内容がもし、国の制圧や戦争の加担を行う内容であったらすぐさま塩基国を敵と見做し、攻撃を開始する。どうするかはアルカリ王が決めろ。以上だ」
傲慢で卑劣なエントロピー王だったがまず先に思ったのがアルミニウム皇太子の容態だった。アルミ素材で作られた鉄球なので攻撃を仕掛けたアルミニウム皇太子の破片なのかもしれない。そして、波動の範囲まで一致したことで何故そこまでして言われなければならないのか、何がともあれ、アルカリ王による肉声を録って送らなければ始まらない。
「このアルミ鉄球は録音機としても使えるわけか…。再利用して国王のメッセージを送りましょう。金銭が目的ではないようだから安心して送ってアルミニウム皇太子を迎えに行かねばなりませんなぁ…」
マーキュリー王が提案している最中によろよろと歩いてくるフラーレンが来た。
「フラーレン!大丈夫なのか?相当フラフラしてるよ?まだ休んでなきゃダメだよ。ほら、プロパノールさんも心配してるから泊まってる家のベットの上で休みながら待っててくれ…」
コバルトの発言に対してフラーレンは言うことを聞かなかった。
「私は、コバルトの妻でもあり守らなきゃいけない…。だからせめてコバルトの横にいたいの…。お願いコバルト。少しだけで良いから…」
足元がおぼつかない様子にコバルトはフラーレンに説教をした。
「フラーレン、自分の体くらい大事にしなきゃダメだろ。僕の妻になるのなら尚更だから。気持ちは分かるけど今の状態を受け入れないと治らないよ?ほら、泊まってる家に戻るよ!」
そう言ってコバルトはフラーレンをお姫様抱っこして連れて行った。フラーレンはコバルトの胸にしがみついて泣いていた。
「プロパノールさん。フラーレンがまだ体調が戻ってないのに無理してしまったみたいで…。完治するまで様子見てもらっても良いでしょうか?僕はまた元のところに戻って対策を練るので…」
「フラーレン!なんて量の汗なの…。コバルト君連れて帰ってくれてありがとう。すぐに着替えさせて看病するから。フラーレンの気持ちも分かるけど今は休むことが大事だから。早く治してコバルトの横にいてあげてね。コバルト君の横はフラーレンが似合うからね」
その言葉にフラーレンは紅潮した。コバルトはフラーレンにキスをしてアルカリ王の元へ戻った。コバルトがした事に対してフラーレンは心のどこかにキュンとしたものがあった。
「フラーレンをプロパノールさんの元へ連れて行きました。どこまで話進んでますか?」
息を整えながら話をした。
「おお、コバルト君。メッセージを送ることとなってそれがやっと録り終えた。そして皇太子を受け取る形にした。そしてたった今ホイートストンブリッジ国へ使者を送った。まもなくすれば無事に帰ってきて許可を得れるだろう」
トンネル作成の許可を得るためにメッセージを通じて承認を得ようと考えていた。トンネルは頑丈にどこまでも声が響きそうな、そんな状態にまで仕上げていた。遠くから声が聞こえて、暗闇から火花の散った赤い灯火が見えた。酸素を使って発火を強めたものだとコバルトは分かった。そこには使者と皇太子の姿があった。
「コバルト君、出迎えてくれてありがとう。少し暴れすぎて足をやってしまった。歩けないわけではないけど無茶はやめておこうかなと思う。承諾も得たからここは正式に塩基国のトンネルとなった。国王が心優しい人だったから話が早かったよ。表情一つも変えずに笑って対応してくれた」
表情変えないのも不気味で怖いけれどもエントロピー王の承諾を得たなら話は早くなる。コバルトはすぐに指揮を取った。作業開始をしようとした途端、エントロピー王自ら塩基国へ出向いた。
「ここが塩基国、とても普通な国だが形が面白い。まるで円運動で測った後に作られてるようだ。我々も加勢しようと思う。君が指揮を取ってる者だね?いいかな?」
コバルトは快く頷いた。
改造した波動銃にホイートストンブリッジ国が開発した音波銃も加わり、作業も一気に進んだ。コバルトはエントロピー王と話をしていた。それはレセプター国のことだった。
「なぜ、レセプター国と戦争をしているのですか?しかも、酢酸が眠る地を戦地としてる話になっていますが…」
「土地領有権の問題になる。レセプター国にいるセントラルドグマ王とは最初は助け合っていた。でも、酢酸が取れる事で知られたあの場所は価値も高く今後も楽しみだという事で両国が話し合いをした。しかし、決裂してしまって今も戦争をしている。とても目が良くて戦況を見てすぐに反撃をしてくるから大変ではある。物理を基盤とした国が言ったらダメな事だけどね。勿論、着いても仕掛けられる可能性もある。十分に注意してくれ。我々が音波銃を用いて居場所を探して戦闘出来る様に準備する」
土地問題はコバルトの世界でも当たり前にあった。戦争を起こしてまでのことは無かったが、ここまで酷くなると和解は難しいのだろうと見た。トンネルも掘り進めて少しずつ酸っぱい匂いが充満してきた。コバルトはヘルメットを被って進んだ。そして確信した。
この匂いが酢酸の匂いでもあり、アルコールの先祖が眠る場所なのだと。




