10話:波動
ホイートストンブリッジ国とレセプター国が争っている戦地が酢酸がある地なのに何故そこが戦地に巻き込まれなければならないのか…。3人はそう思った。アルカリ王は二つの国の特徴を語った。
「ホイートストンブリッジ国は今回ドモルガンが使っていた武器が波を使ったものだから話は聞いたはず。この国は物理で発展していてどの国よりも大いに技術と知識が備わっている。国の周りは堀があり、水によって満たされている。そして外部から入れないように常に波を出していて重力を一人一人にかけて入れないようにしている、まさに完全要塞都市と言っても過言ではない。それに対してレセプター国だけど生物の進化で今も多種多様な生き物と人種、そして見たことのない種族がいると聞く。羽の生えたようなものや何も話さずにテレパシーを使って話してる種族もいる。国の会談でそれぞれの国王と会っている。勿論シャルル国のマーキュリーにも会ってるし世話になってる。嫌悪な国の事情だが、ホイートストンブリッジ国を治めている王の名はエントロピー。今も国を物理的に広げて勢力拡大に力を注いでいる。そして、レセプター国を治めている王の名はセントラルドグマ。この王も生き物の自由を得るべく進化と研究をしている」
めんどくせぇ王だなとコバルトとフラーレンは思った。そんな実験をして戦争起こして何が楽しいのだろう…。名前も聞いて2人は学校で教えられたことを復習していた。
「エントロピーって熱量とか仕事算とかの話だったよね…?ボイル先生言ってたからさ。」
「確かそうだったと思う。でも生物の王も名前がセントラルドグマって…。自分で名乗りたいものなのかな、だってカッコ悪いしさ」
クスクス笑いながらも勉強の復讐に励んだ。プロパノールさんは、とある方法をアルカリ王とアルミニウム皇太子、そして2人に提案した。
「穴を掘ってその戦地へ向かうのはどうでしょうか?そうすれば何事もなく安全にいけますし、もしかしたら地下にアルコールの先祖が眠る酢酸が手に入るのではないかと思います」
プロパノールの方法を要約すると戦地となってるアルコールの先祖が眠る場所は跡形もないだろうというのと地上から行くのは危険だから地下道を作ろう、ということだった。
「しかし、どれだけかかると思ってる?TNTを使えば崩落する可能性もある。慎重に行うにしても人手がいないとかなりかかる」
アルミニウム皇太子の苦言にその対策も提案した。
「それでしたらこの国の方々とマーキュリー王の知り合いなので人員を増やしましょう。そして誰がTNTでやると言いましたか?そんな物騒なものは使いません。波を起こす機械で波状掘削をしますよ。何故か住ませてもらっている家の中にこんなものがあったので改造して使えないかなと…」
プロパノールの手にはホイートストンブリッジ国が作ったと思われる波動銃だった。それを見たコバルトは自分から進んで
「僕にさせて下さい。こういうのとても得意な分野なので。考えている図面とか形があれば教えて下さい」
話も着実に進み、プロパノールは、シャルル国にいるマーキュリー王へ手紙を書いて青い鳥に運んでもらった。そして、口喧嘩しながらもコバルトはフラーレンと波動銃を作業用の物に改造するべく急いだ。時間に時間をかけて完成したと同時に青い鳥が帰ってきた。その報告をアルミニウム皇太子を交えて行った。塩基国では新しい機械などの承認はアルミニウム皇太子の許可を得た上での使用が認められる。コバルトは新しく改造したものを実演した。
「ホイートストンブリッジ国が作ったものは波状のものを出して壁や地面などを柔らかくして破壊しやすくしていました。僕が着目したのは範囲です。従来のものは、5メートル程が限界でした。今回細く無限に伸びるドリルを3方向付けて10km範囲で同じ破壊力の波状を出すことに成功しました。普通なら1ヶ月はかかるものを最短2週間で終わらせれます」
元の世界で流行ってたケミカルショッピングの店長が行った商品紹介がウザいテレビショッピングをコバルトがしているように見えたフラーレンは笑いを堪えていた。
「なるほど…これならすぐに出来るし、我が国の防壁作りで堀を作ろうと計画していたから便利だ。コバルト氏が作った物はアルミニウムの名の下に承認し、使用許可を与える!」
承認確定と同時にフラーレンは爆笑した。我慢出来なかったみたいだけどコバルトは、フラーレンが腹を抱えて笑ってる姿を見たのはこの世界に来て初めてだった。
プロパノールはシャルル国からきた手紙を読んだ。
'プロパノール殿へ
アクリロニトリルが戦死してしまったのはとても悲しい。プロパノール殿もそうだがコバルト君やフラーレンさんも泣いていただろう。活躍は手紙を読ませてもらった。今はアクリロニトリルの銅像を建てている。人手不足なら問題ない。数百人の兵をそちらに送ろう。元の世界へ戻るコバルト君には少し重役かもしれんがシャルル国騎士団団長をお願いしたい。アクリロニトリルの魂を一時的にだが受け継いでくれ…。全て終わったら永久団長として名を轟かせる保証をしよう。'
"シャルル国国王マーキュリー"
コバルトは迷った。ここで良しとしてアクリロニトリルの後釜としてやれる事をやるべきなのか、それともフラーレンと無事に元の世界へ戻っていつもの生活をするべきなのかこの2択に絞られた。しかし、
「コバルト君に任せるなんて国王様も何を考えてるのだろうね。ヒョロガリなコバルトにさなんで頼むんだろうね」
フラーレンの一言にコバルトは吹っ切れた。
「誰がヒョロガリだって?じゃあ証明するよ。僕がアクリロニトリルさんの一時的後継としてやってやるよ!先に言うがフラーレン、僕の本気についてこれるか?」
コバルトの目に赤き炎の闘志が入った。そしてフラーレンはその姿を見て今までとは違う、初めて見るコバルトに怖気ついて座り込んだ。
その数時間後にシャルル国の兵士が塩基国へ入国した。アクリロニトリルを知る者のお陰で短時間の移動となった。その中にマーキュリー王も来ていて、アルカリ王へ挨拶する準備をしていた。アルカリ王も到着の知らせを受けてマグネシウム王妃、アルミニウム皇太子、ジュラルミン、カルシウムらが出迎えの準備と会談を行うためのお茶とお茶菓子を作った。この会にはフラーレンたちも参加する予定だ。
城の中へ入ったマーキュリー王とフラーレンたちはコバルトの案内で玉座の間へ向かった。
「このようにして会うのは何年ぶりかな、アルカリ王よ…。元気そうで何よりじゃ」
「私もだ、マーキュリー王。紹介するが王妃のマグネシウムと息子のジュラルミンだ。初めて会うだろう?何かしらの準備についてはジュラルミンに聞いてくれ。ジュラルミン、マーキュリー王に挨拶を」
そう言って元気に挨拶した。
「初めましてマーキュリー王様。僕の名前はジュラルミンです。宜しくお願いします。主に荷物の整理やお茶、お茶菓子を作ったり持ってきたりしています。何かあれば遠慮なく僕に言って下さい!」
元気のいい挨拶にマーキュリー王は笑顔で返した。そして、早速会談の準備をするべくジュラルミンはお茶とお茶菓子を持ってきた。コバルトは説明するべく開発した物を持参してマーキュリー王とアルカリ王に説明した。
「ふむ…これは凄い。どうやったら思いつくのか知りたいがこの仕組みはとても面白い。動かすための電池はなんだ?」
「はい。こちらは太陽光です。基本は夜中に行いたいので昼は充電して夜にて土を崩しやすくした後に日中兵士の皆さんで掘っていくという考えです」
自然エネルギーを利用する考えに両国王は感動した。
「フラーレンさん大丈夫!?」
プロパノールが叫んだ。コバルトは振り向くとフラーレンが倒れて熱を出していた。息も荒くなっていてお茶菓子を吐いていた。
「フラーレン大丈夫か?すぐに家に運ぶ。医者はいないか?探してくれ!」
フラーレンを担いで宿泊してた家に運んだ。ベットの上に寝せた後、コバルトはフラーレンの服を脱がせて着替えさせた。汗だくの服となっていたフラーレンの状態にコバルトは心配になってフラーレンの手を握った。
「大丈夫だから。すぐによくなる。今アルカリ王が医者を探してくれている。もう少しの辛抱だからな!大丈夫。僕が近くについてるから」
医者が来るまで手を握りしめた。嘔吐して10分後に医者が来た。診察の結果、食べ物による食当たりだった。普段慣れない物を口にしてそれが合わなかったのだろうとコバルトに説明した。コバルトは心配した。フラーレンの目が開くまでプロパノールと一緒に看病した。その間マーキュリー王はコバルトの説明通りに兵士と地下トンネルを作る現場監督を行なっていた。
その2日後、朝日が眩しかったのかフラーレンは目を開けた。コバルトは看病するために横で寝ていた。それを見てフラーレンはコバルトを隣に寝かせて布団を掛けた。
「ありがとう…コバルト。もう元気だから大丈夫だよ。迷惑かけてごめんね…。とても疲れてるみたいだから一緒に寝よう」
スーッと寝息の聞こえるコバルトにフラーレンは多くのことを任せてた事に申し訳なさとこんな出来損ないの私で…という思いが込み上がって静かに泣いていた。
体を叩かれる感触があったのか、コバルトは目を覚ました。そこには元気になったフラーレンと起こしてくれたマーキュリー王とプロパノールがいた。
「…申し訳ありません。フラーレンが倒れてしまって看病しなきゃと思ってこんな行動を取ってしまいました。すぐに現場復帰しますので」
それを言った途端マーキュリー王が肩を叩いた。笑顔で答えた。
「その必要は無いよ。順調に進んでいる。どうやらホイートストンブリッジ国まで残り数百mとなっておる。君の作戦は大成功に終わりそうだ。今は君の妻になるフラーレンさんを守ってあげなさい。君たちを見てるとアクリロニトリルとプロパノールの若き頃を思い出す。そう思わぬか?プロパノール」
「はい、あの頃は本当に守られっぱなしで恥ずかしかったですよ…。でも、その分アクリロニトリルさんの優しさが本物だってことに気づいて今まで愛することができました。勇敢な戦士だったからその魂が完全にコバルトへ受け継がれたみたいね」
コバルトの頑張る闘志に感服した2人だった。フラーレンは改めてコバルトにお礼を言った。
「私が眠ってる間看病してくれてありがとう。食べ物に当たるなんて初めてだったよ…。毒じゃないのになんでだろうって思った。ジュラルミンのせいじゃないと考えるけどとにかく、看病してくれてありがとう。コバルトさんっ!」
そう言ってコバルトの胸元へ飛び付いた。コバルトもその力に押されてしまったが笑顔で泣いていた。その中に伝令兵がマーキュリー王へ伝えにやってきた。
「伝令!トンネルを掘り進めた兵士たちが緊急で帰還致しました!ホイートストンブリッジ国の者に別の波動によってトンネルを作っていたことがバレました。しかしながら、条件での加勢をするという話でございます。このあと、国王のエントロピーからビデオ付きのメッセージが送られます」
その条件とは一体何なのか気になる一行だった。アルカリ王が受け取るとのことでその言葉を別の部屋から聞くことにしたコバルトであった。




