俺と私『謎夢シリーズ』
俺の名前は謎夢湊。少しばかり周りと違うなにかを持った高校2年生の男子である。
今、俺の通ってる学校では、ある噂が話題となっていた。
女子A「ねえねえ知ってる?今話題になってるア・レ?」
俺の席の隣で、わいわいと女子生徒三人組がなにかについて騒いでいる。俺はそれに多少の興味を抱いてしまう。なので思わずその人たちの話題に聞き耳を立てていた。
女子B「知ってる知ってる!今話題のドッペルゲンガーでしょ〜?」
女子C「そうそう!通称、夢のドッペルゲンガーって言われてるやつね。」
女子B「たしか、意識がある状態で自分のそっくりさんに会って殺されると、自分の意識が乗っ取られるーって感じだったよね?」
女子A「だけど、実際に被害に遭った人って居ないよね?」
女子B「確かにそうだよねー、なんでだろう?」
女子C「そりゃあー、その人自身なんだから、入れ替わってたとしても、気づくわけないじゃん〜。」
女子AB「それもそうよね〜!」
と、そんな会話が俺の耳に届いた。
夢のドッペルゲンガーとはなんなのだろうか?あの女子三人組によれば、そのドッペルゲンガーは意識がある状態でしか現れないような発言をしていた。つまり、意識がしっかりとある状態じゃなければならないという事を指していた。
湊「夢のドッペルゲンガー……ね〜〜……。」
俺はその単語に、興味を持たずにはいられなかった。なぜこんなにも俺を突き動かすのか。それは、人間誰しもある人にはある好奇心というものが原動力だった。
そうして、今日……。
俺はそれを興味本意で実行する。
□□□
俺の家計には、とっても不思議な力があった。それは『夢』という力だ。その中の力の一つが、夢の中に意識を持ってのめり込めると言った力だった。だから俺は、その力を使って夢の中へとのめり込む。
夢の中に入ると、そこは真っ白な世界が広がっていた。
そして、その何にもないその世界で俺の目の前に現れたのは、俺だった。
??「………。」
目の前にいる俺は、なにも言わずにただ無言で立ち尽くしていた。特になにも喋る訳でもなく、特になにか動く訳でもなく、目の前にいる自分はただただ立ち尽くしていた。
湊「おい?」
なんとなく声をかけてみた。
なぜ話しかけようと思ったのか、自分でもわからなかったが。なんとなく、話しかけようと思った。……すると
??「なんだ…我よ。」
俺はそいつが喋れることに思わず驚いて、目を見開いた。
湊「なんだ、喋れたのか……」
??「そりゃあ、口が付いてるんだ。喋れるに決まってるだろ?」
湊「いや、口があっても喋れない奴が世の中にいるからさ、そういう系かなと……。」
??「…………まあよい。」
??「でっ?ずっと不思議に思っていたのだが……。なぜお前は私に恐れない?普通、自分と同じ人間が夢の中に現れたら、恐れるものだろう?お前には恐怖心が無いのか?」
その男の言葉に、俺は呑気そうに言葉を返す。
湊「だって俺、興味本意でここに来たもん…」
??「………はっ?」
男は、何言ってんだコイツと言った目で、こちらを睨みつけた。なぜそんな反応をするのか、俺は全然知るよしもなかった。
すると男は……
??「…ククッ!クククククッ!ハーーハハハハハ!!!」
??「こりゃ傑作だ!!まさかこの私に会いに来た理由が、ただの興味本位だったとは、呆れて笑ってしまったわ!!」
男はとても愉快愉快といった顔つきで、爆笑していた。
??「いやぁ〜!笑った笑った!」
男は笑い疲れると、腹を抱えて微笑浮かべた。俺は少し気になった事があったので、その男に質問投げかけることにした。
湊「なあ、おまえ?」
??「あっ?なんだ?」
湊「なんでお前は俺に似てるんだ?あと、名前なんて言うんだ?自分と同じ顔のやつを、自分の名前で呼ぶのは、なんだか変だと思って呼びにくくてな……。」
その質問に対して、男はこう言葉を返してきた。
??「私がお前に似てる理由は、私がお前だからだ。そして、姿は同じだが名前や性格は別物だぜ?あと、私の名前は謎夢影浪だ。」
影浪「さて、話はこれぐらいにして、そろそろ始めようか?」
湊「ん?何をだよ?」
と頭に疑問を浮かべていると、急に風を切るような音が、横から飛来してくる。それを俺は、少し首を動かしただけで避ける。
湊「ふ〜……。危なかったぜ。まさかナイフを飛ばしてくるとはな」
やはり殺しにかかってきたか。やっぱり腐ってもドッペルゲンガー。同じ自分を殺そうとするのは当たり前と言ったところか……。だが、俺もなにも対処なしにここに来たわけではない。なぜなら、俺は夢の力を使って、ここから抜け出す事が出来るからな。
そうして俺は、その虚無な世界を抜け出して、普通の夢の世界へと戻ってきた。
湊「よし、こうして回避成功っと……」
と思っていたのだが……、それは慢心だった。いつの間にか俺は、首筋にナイフを突き刺され、頸動脈をやられてしまうのだった。
□□□
影浪「ふっ。馬鹿なものよ」
私は嘲笑うように、目の前で血を噴き出しながら倒れ込むオリジナルにそう冷たい言葉を送った。
影浪「せめてでも、近くにナイフだけは置いといてやろう。じゃあな……、謎夢湊よ」
そうして、意識がなくなった男の体を操ろうとしたその時だった。
ズバッと、私の背中から心臓を貫通して突き刺したナイフが、私の胸からそのナイフの先端が飛び出ていた。
影浪「なんっ…だ、これは?」
何が起きたのかわからないといった状況だった。すると、一つの声が私の背後から響き渡ってきた。
湊「へっ!お前が俺なら……、俺みたいに見通しが甘い慢心をするだろうと思ってたよ!」
影浪「な……にっ!!お前は確かに死んだはずだ!この意識下の世界で頸動脈をしっかりと狙って……殺したはずだ!」
湊「馬鹿だな…。今この世界の夢の力を制しているのは俺だ!となれば、この世界でできた傷を治すのは、容易いもんだぜ。」
影浪「なん……、だと!」
湊「じゃあな……、影浪」
そうして影浪は静かにその場で倒れ込むと、綺麗さっぱりと消え去ってしまったのだった。そうして俺は、夢から覚めて目的を達成したのだった。
謎夢シリーズ五作目でございます。
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