表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弥勒の剣(つるぎ)  作者: 真桑瓜
90/277

一万両借款

一万両借款


「まずはこれをご覧ください」

弁千代は鎌池検校に書いてもらった書状を九郎兵衛に渡した。

九郎兵衛は書面に目を落とすと暫くじっと読んでから顔を上げた。

「柳河藩の窮状を助ける為、是非とも貴方様に協力せよと書いてございます」

「恥ずかしながら、その通りでございます。藩政を改革するために是非とも一万両の金が必要なのでございます。先程の騒ぎは私を町人同士のいさかいに巻き込まれての事故死に見せかける、改革反対派の策に違いありません」

「しかしながら、私も商人あきんど、千両二千両ならともかく、一万両もの回収の見込めない借財をお引き受けするわけには参りません」

「それは当然の事、そこで柳河藩家老、立花壱岐に妙策がございます」

「それはどういう策でしょう?」

弁千代は鼎足運転の法を詳しく九郎兵衛に語った。

九郎兵衛は暫く目を瞑って考えていたが、おもむろ)に目を開けると弁千代の目を見据えて言った。

「その策は商人の目から見ても理に適っております。さぞ頭の切れる商人が壱岐様のお側におられることと推察致します」

「ご推察の通り、高椋慎太郎という柳河の魚商人を、壱岐様は徴用しておられます」

「それならば安心。失礼ながら我々商人はお侍よりも商人仲間を信用するものでございます」

「では、用立てて頂けるのですか?」

「ようございます、貴方様には娘と店を救って頂きました。一万両御用立て致しましょう」

かたじけない。九郎兵衛殿、中武弁千代心より御礼申し上げます」

弁千代は畳に手をついて深々と頭を下げた。

「お手をお上げください。そうと決まれば筆と硯を用意いたします。ここで手紙を書いて一刻も早く柳河に知らせておやりなさいまし」

「有難うございます」

「その代わり、今夜は付き合って頂きますぞ。祥乃も楽しみにしておりますでな」

弁千代は早く宿に帰って休みたかったが、九郎兵衛の誘いを断るわけにはいかない。

仕方なく受ける事にして、その日は玄海屋に留まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ