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弥勒の剣(つるぎ)  作者: 真桑瓜
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父と子

父と子


「父上・・・」

「薫、久しぶりだな。元気だったか?」

「はい、父上もお元気そうで何よりです」

「三年・・・いや、四年ぶりか?」

「四年になります」

「陸士での生活はどうだ?」

「毎日が目まぐるしく過ぎて行きます」

「そうか」

「父上は?」

「いろいろな事が起こる。まだ日本の足元は定まってはおらぬな」

「陸士にいてもその雰囲気がひしひしと伝わって来ます」

「柳河には帰れんのか?」

「今のところは・・・」

「母上に手紙は?」

「毎週のように書いております」

「母上を悲しませてはならんぞ」

「父上こそ」

「ふふ、我らは鈴殿に心配をかけてばかりだな」

「いっそ陸士を辞めて柳河に帰れたらと思います」

「私もそう思う」

「そう出来ないのはなぜでしょう?」

「なぜかな?」

「私たちは目に見えぬ何かに操られているような気がします」

「不易流行だな」

「芭蕉ですか?」

「ああ、我々は自由に動いているように見えて、その実、根っこはしっかり誰かに握られている」

「それは神でしょうか?」

「神という名でしか表現しようの無い何かだ」

「我々の運命は決まっていると?」

「運命は決まっている、しかし我々は自由だ」

「矛盾していませんか?」

「矛盾を受け入れなければ、人は生きていけない」

「そうですね・・・」

「今日は戻らなくて良いのか?」

「はい、明日まで休みを頂いております」

「では付き合え、良い店を知っている」

「私も先輩たちの薫陶により、少しは呑めるようになりました」

「それは楽しみだな。今夜は呑み比べだ」

「負けませんよ」

「十年早いわ」

「先に出て待っています」

「うむ、着替えたらすぐに行く」


薫は立ち上がって敬礼をすると、応接室を出て行った。


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