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弥勒の剣(つるぎ)  作者: 真桑瓜
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弟子入り


弟子入り




炉を挟んで、壮年の武士の話をした。

「あやつは三雲源太夫、儂が隠居したのを知って追っかけて来よった押しかけ弟子じゃ」

「あの時、脇差が無いのを知って、意気消沈して帰って行かれました」

「真面目な男なのじゃがな・・・三年経って物にならぬなら諦めろと言ってある」

「もうどれほどやられたのですか?」

「来月で丸三年になる」

「それで焦ってあのような事を」

「馬鹿なやつじゃ、もう少しで死ぬところじゃった」

「然し、あの一本背負いの間は見事でした」

「もう少しなのじゃが、武術ではその少しが永遠に遠い・・・せめて切磋琢磨する兄弟弟子でも居ればのぅ」無二斎は少し寂しそうな顔をした。

弁千代は思い切って考えていた事を口にした。

「私を弟子にして下さい」畳に頭を擦り付けていた。

「ほう、また何故?」

「加州先生が言っておられました。柔術はすべての武術の基本だと」

「卓見じゃ、お主良い師に着いたな」

「柔術において手足は刃物、触れる事なく投げるのだと」

「その通りじゃ」

「相手の剣を、我が剣で受ける事なく相手を制するには柔術の体捌きが不可欠だと」

「正に・・・」

「然し私は真面目に柔を稽古しませんでした。であれば、私の師は無二斎様しかおりません」

「ははは、随分と強引な理屈じゃのう」無二斎は可笑しそうに笑った。

「お許しいただけますか?」

「弁千代殿がここに住めば玉も喜ぶじゃろうなぁ」

「では、お許しいただけるのですね?」

「ただし、一年だけじゃ」

「何故に?」

「お主にはそれで充分じゃ。それ以上ここで道草を喰う必要はない」

「はい・・・」

「そうと決まれば固めの盃じゃ」無二斎は座を立って奥に声をかけた。「玉、玉、弁千代殿が儂の弟子になったぞ、酒の用意を頼む」

奥から玉が駆け出てきた。「あれ、爺さまそれは良う御座いました、早速腕に捻を掛けましょうぞ」

玉は急いで台所へ消えて行った。


「三雲にもう一年猶予をやろうかの・・・」





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