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星空の後継者  作者: IMU
1章 王国編
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第7話 再会

《エレジア大陸 東 名もなき荒野》

「ちょ、いくら魔獣相手だからって転生したての拓くん戦わせるって、大丈夫なのそれ。」

『心配すんな。おそらくアイツは今の雫並みに強い。最悪雫が助けてやればいいだろう。あ、多分大丈夫だと思うけど一応団員引かせろ。アイツ、広範囲爆撃とかやりかねないからな。』

「どーいうことよ。まだそんなにレベル高くないでしょ。そんな高ランクの魔法使えるの?」

『その辺は本人から聞いてくれ。じゃ、あと任せた。』

「待ちなさい、グリザルって切られたし。ああもう。シエル、今前線にいる団員に通達。現在戦闘中の魔獣を片付け次第後退。私が出る。」

「ですが団長。この程度の魔獣なら団長が出ずとも問題ありませんが。」

「ちょっと厄介ごとがあってね。あと、ここにも被害が出そうだか、すぐに拠点に戻って。」

「了解しました。」


直接ってどう言うこと?拓くん何のスキル贈与してもらったのよ。


「じゃあシエル、あとの指揮は任せるわ。お願いね。」

「行ってらっしゃいませ、団長。」


私は、魔獣の群れの中心に向かって駆け出した。



《中央 音波拓》


「よっと。」


門から出たところは見晴らしのいい、木一つない荒野だった。


「グガァァァァァ。」

「早速か。こい、シリウス。」


魔獣の咆哮が聞こえた。そちらを見ると、こっちに近づく一本角を生やした虎のような外見の獣が駆けてくる。僕はグリザルから受け取った指輪に魔力を流し、空間の穴を開けシリウスを呼ぶ。シリウスは僕の呼びかけに答え、飛んでくる。鞘から抜き放ち、空間の穴を閉じ一閃。首を跳ね飛ばす。


「そんなに強くはないけど数が多いな。とりあえず展開(キャスト)範囲探査(エリアサーチ)】」


対象範囲内にある魔力反応を調べる魔法で状況を確認する。


「この弱い反応が魔獣だな。数は…前に約150後ろに300か。人の反応はない…いや、すごい速さで近づいてくる大きな魔力。これが多分雫先輩だな。右斜め前からくるから前の150はどうにかしてもらおう。僕は後ろの300を。」

「グガァァァァァ」

「次はお前か。先輩の方も見ときたいな。展開(キャスト)炎嵐(ファイアストーム)続けて展開(チェインキャスト)天空眼(マルチスコープ)】」


自身の周囲に【炎嵐】を展開し、近づいてくる魔獣を燃やしながら、【天空眼】を使ってドローンの様に天空から雫先輩の様子を見る。

交戦中のようで周囲には4体の魔獣が確認できる。若干連携して攻撃しているようだが、先輩は手に持った白い細剣(レイピア)で斬り伏せている。

ちょうど周囲に魔獣がいなくなったタイミングで僕はネックレスへ魔力を流し、先輩へと念話を繋いだ。


《北東 水凪雫》


「数がっ多い!」


私は《氷華》で魔獣を斬りつつ拓くんのいる中央に向かおうとしているのだけれど、魔獣の数が多すぎてなかなか前に進めないでいた。

ちょうど近くの魔獣を全て倒した時、念話が飛んできた。


「念話?こんな時に誰よ。」

『先輩聞こえますか?』

「って拓くん⁉︎無事なの?」

『ええ。問題ありません。先輩、前方の魔獣約150体を一撃で潰せる方法はありますか?』

「あるけど、拓くんを巻き込みかねないから使えないのよ。」

『僕のことならお気になさらず。この念話が終わった後先輩から見て左の方向に爆炎が見えるはずです。それを合図に殲滅しちゃってください。』

「わかったわ。これが終わったらいろいろ聞かせてもらうからね。」

『分かってますよ、ではまた後で。』


殲滅…拓くん本当になんのスキルをもらったのよ。


《中央 音波拓》


「うっし、じゃあやるか。紅き炎、黒き炎を纏いし龍よ、我が意に従え。敵を喰らい、灰と成せ。【焔龍《赫》】【焔龍《黝》】」


僕の前に赤と黒の炎を纏った龍が現れる。


「二体の龍は一つとなる。【魔法混合】【獄炎龍】」


《赫》と《黝》を合わせることによって、属性の《炎》《炎》《炎》《闇》が合わさり《獄炎》属性へと変質。【焔龍】は【獄炎龍】へと昇華された。

【獄炎龍】がほとんどの魔獣を喰らったのを確認してから、残りを一気に燃やすべく動き出す。


「獄炎龍、【獄炎解放】展開(キャスト)空間転移(テレポート)】」


獄炎龍を形成していた獄炎を解き放ち、見渡す限りの魔獣を消し炭に変えた。それからすぐに先輩の攻撃に巻き込まれないように【空間転移】を発動した。 


《北東 水凪雫》


「爆炎って、そんなレベルじゃないでしょあれ。もう、後で問い詰めないと。」


後は私か。これは彼に勝たないとね。


「力を貸して。フェンリル。」


私がそう呼びかけると、空中に魔力が集まり出し、やがて少女の形をとり、実体化する。

現れたのは狼の耳と尻尾をもつ白髪の美少女だった。


「フェン、手伝ってもらっていい?」

「いいよ。姫の願いを叶えるのがボクの仕事だから。」


この子はフェンリル。《氷華》の中で眠っていて、私と契約した神獣だ。契約した時から私のことを姫と呼び、呼べば手助けしてくれる。ちなみに一人称はボクだが性別は女だ。そこは確認させてもらった。ボクっ娘ケモ耳少女。イイ。ってそんなことはどうでもよくて…


「フェン、あの魔獣をまとめて凍らせちゃいたいんだけど。私だけじゃ厳しいから手伝って。」

「りょーかい。魔力、もらうね。補助するから好きに魔法を使って。【氷神牙狼の加護】」


フェンに加護をもらい、超大規模魔法を組み上げる。この加護は氷の属性を持つ魔法をノータイム発動できるようになるものだ。【氷属性支配】のスキルを持つ私だからこそ、魔法名だけで複数の事象を同時展開できる!拓くんは支配系を持っていても一節は詠唱しないとダメだから、あの威力と同等の魔法を無詠唱で使ったら私の勝ち!


「うん、ありがと!いっくよー【凍てつく大地】【穿つ氷槍】【白氷地獄(クリスタルヘル)】」


あ…気合い入れすぎたかも…落ち着きなさい私。なんで拓くんと張り合ってるのよぉ。


《雫の後ろ 音波拓》


獄炎龍はあくまでも大地に影響がないようにうまく調整して炎を上に逃したんだけど、先輩のは見える範囲一帯を氷漬けにした…先輩の悪い癖が出てるなぁ。

独り言をぶつぶつ言ってる先輩に話しかける。


「先輩、ここを魔境にしてくれとは言ってないんですけど。」

「た、た、拓くん⁉︎いつからそこに?」

「フェンリルを呼び出してからずっといましたよ。」

「キミ、ボクの姫になんか用?あるならボクが聞くけど。」

「はぁ、先輩。いくらボクっ娘が好きだからって、契約している神獣に一人称ボクを強制させるのはどうかと。異世界だからって流石に趣味を持ち出すのはダメですよ。」


僕は知っている。先輩は2次元美少女がかなり好きだと言うことを。特にボクっ娘とケモ耳には目がない。このことを知っているのは僕の他に先輩の弟だけだ。そのせいか何度もアニメショップ巡りに付き合わされた。


「ち、違うわよ!フェンは元々こうなの!というか別に私はボクっ娘萌じゃないし!」

「隠しても無駄ですよ。どれだけ僕が先輩のアニメショップ巡りに付き合ったと思ってるんですか。先輩の趣味ぐらい把握してますよ。」

「ボークーをー無ー視ーすーるーなー。」


先輩がちょっと拗ねかけていて、フェンリルも構って欲しそうにしているし、これ以上場が悪化しないうちに王城へ転移しよう。王城の位置はグリザルから教えてもらっているから転移できるし。

「とりあえず、ここの事はどうしようもないので落ち着いて話ができるところまでいきましょうか。王城まで直接転移していいですか?」

「うぅぅ、もう知らない。拓くんもみーんなしーらない。」


あ、拗ねた。


「先輩、拗ねないでくださいよ。今から王様と会うんでしょ。」

「姫、そんな顔するんだね。」


フェンリルが驚いている。今までちゃんとしてたんだね。安心した。


「先輩は僕の前だとなんか頼りなくなるんだよ。さっきも気合が入りすぎて空回りしてたし。」

「キミは姫の事よく知ってるんだね。」

「まぁ、転生する前からの仲だからね。」

「キミ、名前は?」

「音波拓。」

「タク、よろしく。」 


手を差し出してくるので握る。


「よろしく。フェンリル。」

「フェンでいいよ。」


ここに先輩を通して新たな友情が生まれた…多分…


「じゃあフェン。転移するけど、消えなくて大丈夫?さっきの大規模魔法の時も足りない分の魔力実体化の維持に必要な分から使ってたよね?」

「姫をこのまま行かせる気?」

「手伝ってくれると助かるよ。」

「まっかせとけ。」

「ならボクの魔力少し持っていきなよ。」

「助かるよ。ほら、姫。機嫌なおして?」


先輩よりよっぽど頼りになる少女と共に、先輩を宥めながら、転移の魔法を組み上げる拓であった。


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