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5話  テルルの仮説

呪いをかけられたオレは武器を持つとレベル1 


戦士の道は閉ざされた、しかしそれでも鍛錬に明け暮れた。


あるとき森で重傷を負ったオレを助けてくれた美しい貴族の少女は


武器を持たないオレの強さを見つけてくれた。




これは武器をうまく扱えない庶民冒険者と


冒険を夢見る美しい貴族の少女が


気付けば、究極の体術と、至高のヒーラーへの道を歩む物語

「あの・・・クロムなら、あっちの、窓口のところに・・・」


冒険者の中の1人が遠慮気味にテルルに話しかけた

テルルはその言葉が示す場所にオレを見つけ、その冒険者に一言礼を言い、

そしてオレに向かって真っすぐ歩いてきた。


「クロムさん、探しましたよ!」


そう言ってそこに立つ彼女はたしかに美しかった

白い肌に青い瞳、スラリとしたその体、

全体から受ける印象は細くきゃしゃなものだが、その実メリハリがあり、

抜群のスタイルの持ち主であることは一目で分かった。

そして鮮やかな青の刺繍があしらわれた、まるでドレスのような純白の絹のローブに

銀の装飾が施されたキャメルの革のブーツ、

美しいアッシュブロンドの長い髪を飾る金の髪飾りにはローブの刺繍の色と同じ

鮮やかな青のラピスラズリがはめ込まれている

そしてそのどれもが彼女の美しさを際立たせていた。


「オレを探していた?、何かあったのか?」


自分が探される理由も何も、まったく見当がつかずオレは彼女に聞いた。


「クロムさん、私とパーティを組んでくれませんか!」




瞬く間に噂になった。

テルルをおぶって町を歩いた話など消し飛んだ、

貴族冒険者の誰からの誘いも受けず、ソロの冒険者という立場を守ってきた美しい侯爵令嬢が、

しがない1人の庶民冒険者に自らパーティ結成を申し込んだと!

そいつはどんな奴だ!?、と、


当然だが断った、大騒ぎになることは容易く予想できたからだ、しかし・・・


「クロムさん、命を助けられた恩は必ず返すと、そうおっしゃいました、ならば今、私の願いを聞き届けることでその儀を果たして下さいまし」


うーー、なんてこと言うんだこの娘は、

むちゃくちゃな要求だ、しかし、言い返せない・・・

痛いところを突かれ、しかたなくオレはその要求を受け入れた

まあ、お試しみたいなものだ、きっとすぐに飽きてくれるだろう、

だから、ギルドへのパーティ登録もあくまで仮登録とした。

テルルは正式登録に拘ったが、未成年のメンバー登録は仮登録後一定期間の後でなければ正式登録ができないと、適当に嘘をついてごまかした。


実際は正式にパーティなりメンバーなりを登録した場合、3か月間は変更を受け付けられない決まりなのだ、

だから、テルルの一時の気の迷いに付き合うのに3か月も拘束されるのは、さすがに避けたかったのだ。




そしてーーーー



「さあ、クロムさん、今日もモンスター討伐に森へ行きましょう!」


パーティを組んで以来、毎朝、彼女は来た。

日の出と同時、ギルド前に集合が彼女からの指示だった。

命の恩人である貴族のお嬢様へのお付き合いとはいえ、けっこうキツイ

何がキツイって、なにもこんな朝早くなくても・・・

しかもオレがギルド前に到着すると、毎回すでにテルルの姿があった。


「ふわーー・・・、今日も早いなミステルル」


「ちょっとクロムさん、そのミスっていうの、やめて下さい、ちゃんとテルルと呼んで下さい」


できるだけ他人行儀に接して見せて、あまり噂にならないようにしてるのに、

こんな朝早くでも、もう人がちらほらいて、こっちを見てるってのに、

テルルさん、君のためなのだよ、分かってるのかね、



その日オレ達は初めて会った場所ほどは森の奥には立ち入らず、

危険度の低い場所で狩りを始めた


「さあクロムさん、あなたの背中は私が守ります!思う存分戦って下さい」


はいはい、ではお言葉に甘えて行かせてもらいますよ、

オレはナイフを両手に構え、目の前に現れたタヌキ系モンスターと対峙した、


「テルル、命は預けたぞ!」


このセリフで彼女のきげんが良くなることを数日前に発見した。


「はい!まかせて下さい」


ああ!、なんという充実感!ヒリヒリするような緊張感!

私が求めていたものは、これなのよーー!

・・・まあ、私1人でもらくしょーの相手だけど、でも仲間の命を預かる重圧に押しつぶされそうだわーー!


「テルル!、頼む」


あっ、いけない、集中しなくちゃ、


「リトルポイズン!」


クロムさんのナイフの殺傷能力では瞬時に止めをさすには、すこし弱い。

そのため、モンスターへのとどめを私がさす役目なのだ


「おつかれさまですクロムさん、私達ずいぶん息が合ってきたと思いませんか?」


「あ、まあ、そうだな、たしかにそうかもしれないな」


テルルと組んですでに10日、ほぼ毎日森にいる、

知らず知らずのうちに彼女を信頼して動くようになっている。

しかし、あまりお互いの相性がいいと思われても困るんだよなーー、


「なあテルル、オレのレベルではこれ以上の相手にはお手上げだ、君にとっては歯がゆいだろう、オレと組んでいても強いモンスターを倒すことはできないぞ」


「何を言っているんですかクロムさん、実は私、試したいことがあるんです、もっと強い相手を倒すためにずっと考えていたことなんです!」


試す?、新しい魔法かなにかか?


「それを実戦で試したいと?」


「そうです、そして初めて会ったときから疑問に感じていたことの答えがきっと得られるはずなんです」


疑問?、答え?、何のことだ、

まあ、よく分からないけど、とにかく何か試したいのなら、やらせてみるさ、

じゃなきゃ、気が済まないのだろう。


「分かった、とにかくやってみよう、で、オレは何をすればいい?」


「ありがとう、協力してくれるのですね!、特に何も必要ありません、いつもどうりに戦って下さい、次の戦闘でそれを試します、ただ・・・できれば少し大きめのイノシシ系のモンスターを狙っていただけると助かります」


大型のイノシシ系モンスターか、危険だがテルルとの連携もうまくいってるし、

何よりテルル本人のレベルが上がっているようだ、

信じてみるか、

しかし、この短期間で見て取れるほどの成長をするのだから、その才能もレベルが上がる事実そのものも、うらやましく思う。


「よし分かった、森の奥へ移動する、モンスターに遭遇したらその瞬間が戦闘開始の合図だ、気を抜くなよ!」


「はい!、まかせて下さい」


よし!、いよいよ試すときがきたわ、もし、もしも、私の仮説が正しかったなら・・・

ふふふ、素晴らしいことが起こるわ!

この日のために新しいスキルも習得したのよ、

しかも、それをクロムさん用にさらに進化させたわ!

クロムさん、きっとビックリするでしょうね、


楽しみだわ!



ここまでお読みいただきありがとうございます。

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