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3話  オレの名はクロム

呪いをかけられたオレは武器を持つとレベル1 


戦士の道は閉ざされた、しかしそれでも鍛錬に明け暮れた。


あるとき森で重傷を負ったオレを助けてくれた美しい貴族の少女は


武器を持たないオレの強さを見つけてくれた。




これは武器をうまく扱えない庶民冒険者と


冒険を夢見る美しい貴族の少女が、


気付けば、究極の体術と、至高のヒーラーへの道を歩む物語

「ごめんなさい、こんな・・・ご迷惑をおかけするつもりは・・・」


私は助けたつもりのその人におぶられて、町へ向かっていた。


「いや、気にするな君は命の恩人だ、

 それにオレがまったく歯が立たなかったあのモンスターを一瞬で倒し

 そして重傷のオレをここまで回復させてくれた、君は本当にすごいな!

 見たところオレよりずいぶん若いだろうに

 素晴らしい才能と絶え間ない鍛錬で手に入れた力なのだろう・・・

 そんな君をみて、オレは自分の不甲斐なさを恥じ入るばかりだ」


「いえ、そんな・・・」


あれ?、自分で倒したこと、覚えてないのかな、


「あの、ところで何故ナイフだけであのモンスターと戦っていとのですか?」


「ああ・・・恥ずかしい話なんだが、オレはまだレベル1なんだ、

 だから武器はナイフくらいしか扱えない」


レベル1?、それであんな森の奥にソロで行ったの?、指導する者は何をしているの、

きちんと教えなければ命を落とすわ、


「あの、えーーと、何さんとお呼びすれば・・・私はテルルと申します」


「オレの名はクロムだ、よろしくテルル」


「はいクロムさん・・・それでですね、少々言いずらいのですが、

 レベル1であの場所は無謀です、もしパーティに所属しているのであれば、

 お仲間の方達と話し合われることをお勧めいたします」


「ああ、そうだな、たしかに無謀だが、いろいろ事情もあってな、オレはソロなんだ、」


「クロムさん、今レベル1ということは冒険者登録してまだ日が浅いのでしょう?

 だったら誰か経験のある者と組んでまずはレベル2になった方が良いですよ、

 急がば回れ、一気にレベルを上げたい気持ちも分かりますが、

 確実に行くことこそ最速の道かもしれませんよ」


なんだかお節介なことを言いながらも、私は不思議な違和感を覚えていた・・・

そう、何かひっかかる、何か・・・


「実はなテルル、オレはこう見えて冒険者としてのキャリアはもう8年になるんだ」


え?、8年?・・・ベテランさん?、

ちょっとまって、なんでレベル1なの?

貴族冒険者でお茶会に明け暮れていた?・・・いや違う、

あんな命がけの戦いをする人が、それはありえない、

貴族っぽくもないし・・・

だったら何故?

私は頭の中をフル回転させたが、空回りするばかり、


「あの、ごめんなさい、どういうことですか?」


私は自分で答えを探すことができず、あきらめて聞いた、


「信じられないかもしれないが、オレはレベルアップしてもレベル1のままなんだ、

 子供の頃だったと思う、もう記憶も曖昧だが・・・呪いをかけられたせいなんだ」


「呪い?まさか、そんなことがあるなんて・・・」


「いや、本当さ、武器を持つお前はレベル1、そう呪いをかけられた、

 しかしいつかレベル2に上がれるんじゃないかって、そう思い鍛錬を欠かさず

 今日までやってきた・・・だが、結果は今もレベル1のままだ」


「武器を持つ・・・」


私はその言葉を頭の中で繰り返した・・・


「ところでテルル、君の家はこっちの方角で間違いないか?」


「はい、間違いありません」


話をするうち、気が付けば町の中まで戻ってきたけど、

さすがにこうやって街中をおんぶされて歩くのはちょっと恥ずかしいよーー、

顔、下に向けとこっと、


「あの・・・クロムさんは、その、お聞きしたキャリアからしますと

 お歳は23くらいですか?」


おんぶされてる恥ずかしさの照れ隠しで、私は意味のない質問をした。


「ああ、そうだ、今ちょうど23だ、何日か前になったばかりさ」


「あっ、そうなんですか、私ももうすぐ誕生日なんです、今度17になるんですよ、」


「そうか、それはおめでとう!、しかしすごいな、まだキャリア2年そこそこなのに、

 今日のあのモンスターを倒すなんてな!、心から尊敬するよ」


ああ、この人は辛くてもひがまない、羨んでもねたまない、

素直な心の人なんだな。

それにあれを倒したことで、私を尊敬とか、とんだ勘違いで・・・


あっ!そういえば、あのとき・・・!


「さあ、着いたんじゃないか?、でかい屋敷だが、ここで間違いないか?」


門の前に立ち、奥を覗くと・・・そこにいた使用人らしい者達がオレの背のテルルを見て

その名を叫びながら慌てて駆け寄ってきた。


「おっ、おっ、お嬢様ーー!?、どうなさったのですかーー!」


「だからあれほど無茶はおやめくださいますよう申し上げたではありませんかーー」


「お嬢様ーー!」



「よっこらしょ、あとはこの人達にまかせても良さそうだな・・・

 テルル、命を助けてくれた恩は必ず返す!いつかまた会おう」


使用人達に抱えられながらテルルは振り返った、


「きっとすぐ会えます、楽しみにしていてください」


そう言って笑った、そして屋敷の中へと入っていった

すぐ会えるか・・・そりゃあの強さだ、

オレさえ死ななけりゃ、森のどこかで会えるだろうさ、

しかし次に彼女と同じ場所に立ってオレは生きて帰れるのか・・・


ふん!、考えてもはじまらない、鍛錬するのみさ。

しかし、でかい屋敷だな、ずいぶん偉い貴族のお嬢様だったんだな、


世間にうといオレはテルルが町でも、そして貴族冒険者の間でも

有名な存在だということをまったく知らず、

テルルをおぶって町の中を歩いていたことが噂になっていることなども、

もちろん知らなかった。



ここまでお読みいただきありがとうございます。

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