「聞く」と「聴く」= "hear" and "listen"
疑う余地なく常用語ですよね?「きく」という動詞。
一般的であるが故に、寧ろ曖昧なまま放置されがちな「聞く」と「聴く」。
使い分けがあるのですが、あなたは説明できますか?
…………まあ、大して難しい事ではありません。
要は「聴く」のか「聞こえる」のかの違いです。
自分が「聴こう」とすれば「聴く」で、自然に「聞こえる」のが「聞く」なのです。
…………え?漢字の説明文に同じ漢字を出しちゃ駄目でしょって?
…………今回は良いと思うのです。これでも解るでしょう?(解らなかったらこの下を見てね!)
詳しくすると、自分で意識しなくとも耳に入るような音 ──車のエンジン音や群衆の騒めき、生き物の鳴き声や雨音等── は「聞く」を用います。例えば「風聞」や「未聞」がこの類いですね。
対して、自分から意識して耳を傾けている音 ──獲物の出す音や、他の人の話等── は「聴く」を用います。こちらは「盗聴」や「拝聴」、「傾聴」等の例があります。
まあ、「聞く」が「聴く」より一般化したために、「聞き耳」のように「聴」を「聞」にも代用できる物も多いのですがね。
それでも、この二語は使い分けられている方がより正確に描写できるので、知っていて損はないでしょう。
(これを知っている人にしかその僅かなニュアンスの違いは伝わりませんが、知らない人でも文意は問題なく理解できるので、"知っていればより楽しめる" という具合になります。つまり、煩わしさは無いのです)
そしてこれに似た使い分けは、英語にも存在します。タイトルの通り「hear」と「listen」です。
「聞く」と「聴く」= "hear" and "listen"
の等式の通り、「聞く」には「hear」、「聴く」には「listen」が対応します。
例えば「聞こえますか?」は「Can you hear me?」と言いますが、「聴き取れますか?」は「Can you listen to me?」となります。他にも、「リスニングテスト」は注意して「聴く」でしょう?
単純にそれだけの話です。簡単でしょう?
但し!日本語でも英語でも、殊音楽については、この二語の間に論争があります。
「音楽をきく」のは「聞く」か「聴く」か?
…………まあ、こればかりは「本人が音楽を如何きいているのか」に拠ると思うのですがね。
例えばそれをBGMとして聞き流すのなら「聞く」ですし、歌詞に聴き入れば「聴く」ではないかと思います。(これは音楽に限らず適用できますが)
その裁量は個々人に委ねられた所なので、取り敢えず「絶対は無い」とだけ、心に留めておいてください。
さらに言えば、日本語でも英語でも、やはり言語ですから簡単な方に流れていきます。
日本語では「聴く」を使っていたものが「聞く」を使われがちになっていますし、英語では「listen」より「hear」の方が頻繁に耳にする単語です。
(「listen」は「hear」と違って「listen to」が定型的なので、少しだけ「hear」の方が発音が楽なのです)
…………簡単と多様。言葉がずっと向き合い続けねばならない事柄です。
「これがあるから言葉は面白い」なんていうのは私感ですがね。




