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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

夜空の鳥

作者: レヴリー

その日は星が近く感じたんだ。

だから、僕にも_________


飼っている鳥がそれを知っているかのように騒ぎ立てていた。

カーテンの合間から月明かりが僕を誘うから、鳥かごをもってつられるまま外へ出た。

夜のにおい

冬の夜

風が冷たい空気を運んできて、独特のにおいが鼻をくすぐる。

僕は冬のこの空気が大好きだ。

めったに騒がないこの鳥が暴れているなんて珍しい。

どうしたものかと空を仰ぐと、澄んだ光がちりばめられていた。

そっか、もしかしたら自由に飛んでいた時を思い出したのかもしれない。

それなら別にいいんじゃないか。

だって鳥かごなんかじゃろくに羽も伸ばせないだろう。

それに僕はこの鳥が鳴いたところも見たことがないのに、こんなになにかを訴えてきているのに。

今日はこんなに澄んだ空気なのだ。

きっと今日の僕も変なのだろう。

こんなに鳥を気に掛ける事もしないし、自分の部屋に自分以外を招き入れる事もない。

簡単なこと。鍵を開けて上へとスライドさせれば簡単にこの鳥は飛び出していける。

気づけば手は扉を掴んでいた。

少し力を入れるだけでそれはするりと指の合間を縫って落ちた。

すると鳥はあんなに騒いでいたのが嘘のように小首をかしげ足が鳥かごの中をぶら下がる木に張り付いていた。

そのままのポーズで開いた扉の上に乗ると練習をするかのように真っ白な羽をゆっくりと広げた。

芝生の緑が夜を吸い込んで深い緑に色を変えていて、それが鳥の存在感をより引き立てていた。

そんな芝生に魅せつけるように何度か羽ばたきをした後に、舞い上がった。


きっとこのまま遠くへ行って二度とこの檻の中にはもどらないのだろう。

星明りの創り出す僕の影と同じ色をした宙に映る白を眺めていたら、唐突に動きを止めた。

羽を広げたまま硬直し、螺旋を描いて僕にあてつけるようにそれは落ちてきた。

それまでぬくぬくと生きてきた鳥は羽ばたき方を忘れたかのように動かない。

そのままボトッという音を立てて赤が視界を埋めた。

赤を吸い取っていく芝生はさっきよりも暗く見えた。

僕はそれを観てただ動けないでいた。

あんなに騒いでいたのが嘘だったかのようにピクリともしないのだ。

これなら空を知らずに籠の中にいたほうが幸せだったのではないのだろうか。

これが飼いならされた鳥の最後か。

あっけない終わりだったな。

やりたいことは沢山あって、でも全て見てるだけ、眺めているだけで触れることはできないかった。

ただ外に出てみたくて籠の中であらがっていたのは見る人が見ればただ騒いでいるようにしか見えなかっただろう。

あわよくばあの空に手が届くことを望んだだけだった。

でももしかしたらこれが幸せなのかもしれない。

ただ広がっていく赤が僕にはとても心地よく見えた。


fin


読んでいただきありがとうございました。

色々な解釈が生まれれば面白いなと考えながら描きました。

楽しんでいただけると幸いです。


これが初投稿なので、温かい目で見ていただけると嬉しいです。

こんな感じの後味の悪いようなじんわりとした話を載せていこうと考えていますので、またどこかでお会いできると幸いです。


2020/6/25

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