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Ep.4 銃撃

 続きです

「そういえば、っつうか今更だが」


 最終的に秘伝機械煮込みを三皿たいらげ、ついでにタヴィとも仲良くなって上機嫌なレイラに問う。


「んー?何ですか?」


「どうやってお前、父さんを探すつもりだ?」


 レイラは一瞬硬直してから、誤魔化すように頬を掻き始めた。


「それがですね……全く考えて無くて……」


「だろうな……」




 もはや予想範囲なので大したショックはない。帝国トップクラスの医者なのだ。まぁ聞き込みすればいずれ見つかるだろう。時間はかかるが。しかし名前がわからない。




「レイラちゃん、お父さん探してるんだろ?名前はなんて言うんだい」


 タヴィが肘をカウンターにつけて言った。そうだ。俺の隣にいるじゃないか。実の娘が。怪我の疲れで重要なキーを見失っていたようだ。


「えっと、ジェイク・アッシュって言います」


 聞いたことない名前だ。帝国トップクラスの医師なのに名前がそこまで知られていないのか?ますます興味が湧く。


「あら、私も聞いたこと無いなぁ。医者なんだろ」


 多くの人々と交流のあるタヴィですら初耳らしい。


「とりあえず、帝都中央病院に行ってみるかぁ」


「あれ、付いてくるんですか?」


 レイラが不思議そうに聞いてくる。


「あぁ、ちょっとお話を伺いたくてな」




 店はラッシュ時を過ぎたみたいで空席ばかりになっていた。


「話を変えててすまないけど、レヴくん」


 タヴィがこちらにまっすぐ向く。


「どうして戻ってきたんだい?」


「こいつを送り届けに来ただけですよ」


 と、レイラを親指で軽く指差す。


「それだけじゃァないよね?」


 レイラはまるで話がわからないと言ったふうに目をぱちくり動かす。


「そうだな、怪我はしたけどやりたいことは出来ましたし、何より、最後の仕上げが待ってるんです」


「……何のことですか?レヴさん……仕上げって」


「……レヴくん」


 タヴィが俺たちの背後を見つめている。カメラがせわしなく音を立てている。


「ちょっと席を外したほうが良いかもしれないよ」




「えっ」


 銃に手を伸ばす俺を見てレイラが困惑する。やはり何かがこの街に入り込んできていたみたいだ。おそらく俺のせいだが。


「三人。銃を持ってるよ。でもレヴくん今は傀儡無いんだろ?裏口使いなよ」


「えっえっ、何ですか?傀儡……?」


「逃げるぞ」


「きゃぁっ!」


 俺は銃とレイラを抱えて走り出す。彼女が軽いのが助かった。


 途端に背後のドアが乱雑に開けられる音と、間もなく銃声が室内に響く。蒸気銃の発射音はそれほど大きくはないが、弾丸は脅威であることに変わりない。


「タヴィさん!代金はツケといて下さい!2倍にして戻します!」


「あいよ」


 それだけ言って辛うじて厨房に滑り込む。弾丸によって穴が開けられたドアを蹴飛ばす。間一髪で裏路地に逃げれた。敵の姿を目視する暇はなかったが、おそらく帝都ここに来てから感じていた違和感の正体。連邦兵だろう。


「レヴさん!何ですか!あれ」


 揺られながらレイラが言う。


「多分連邦兵だ」


「何で!ここは帝国ですよ!」


「忘れてないか?俺は連邦領に不法に侵入した人物だ!目的は俺だろうな」






 大通りの喧騒からだいぶ離れたところにある裏路地まで逃げてきた。肩で呼吸しながらそのへんの木箱に腰を下ろす。ガスマスクを付けるのを忘れていたが、今はそんなことはどうでも良くなっていた。


「あの人達は、レヴさんを?」


 乱れに乱れたブラウスとスカートと髪を整えつつ彼女は言った。彼女は殆ど走らずに俺に抱えられてたので汗一つかいていない。


「あぁ、俺を捕まえに、いや、殺しに来てるな。でも」


 水筒の水を一口飲み、続ける


「わからないな……何でここまで深追いする必要がある?」


 既に連邦に侵入した日から2週間近く経っている。帝国民一人にここまで付き合うとは、効率重視の連邦らしくないやり方だった。




―だとしたら、やっぱりあいつらが関わってるのか……?―




「……タヴィさんは無事でしょうか……」


「さぁな。でもあの体はどうせ偽物だ。死んではいないだろう」


 大通りとは違って裏路地は更に複雑で、細く、冷たい。


 レイラは不安げに俺を見つめている。


「……巻き込んでしまって……済まない……全部俺の責任だ……」


「いえいえ、とんでもないですよ!私も何も出来なくて……」


 建物の隙間から見える空が少しずつ暗くなっていく。参ったな。逃げている間にだいぶ時間が過ぎてしまった。ため息を付きながら


「泊まるとこないだろ。最寄りの宿まで送ってやる。隠れ宿的な場所だ。いい場所だし、見つかる心配はない」


 と言う。彼女は一瞬戸惑ったが、


「いえ、ご気持ちは嬉しいです。でも」


 そして一間空けて続ける。


「でも、何か少しでも良いので!協力させてくださいませんか!」


 彼女の目にまたしても圧倒されてしまうが、「そうだな……」と俺は頭を掻く。




 もちろん、と言ってやりたい。でも行動人数が増えればその分敵に見つかる可能性が高まる。かといって分散してしまえば俺と一緒にいたという理由から彼女の命が危ない。


「……わかった。だが条件がある」


 レイラの顔がぱっと明るくなりかけたと同時にまた真剣な顔へと戻る。


「自分の身は自分で守れ。武器は後でやる。使い方も教えてやる。ただ、俺は俺のやることで精一杯だ。余裕がありゃ守ってやれるが、さっきみたいにお前を抱えれる場面はそう多くはない」


 さっきは幸運だった。タヴィのおかげで先手を打つことが出来たが、いつこちらが後手になるかはわからない。


「分かりました!頑張ってみます!」


「それともう一つ」


 釘を差すように声を低くして言う。


「もし俺が負けそうだったら戦わず、とにかく逃げろ。そしてその後のことは構うな。いいな?」


 彼女はごくりとつばを飲みこんだ。


「わかったら、そろそろ移動するぞ」


「えっと、どこへ?」


「俺の家だ。当たり前だろう」


 俺は銃と荷物を拾い上げる。遠くで銃声がした。


「お前だけ別の場所に泊まってちゃぁ、守れるもんも守れん」


「あ、ありがとうございます!!!」


「行くぞ、奴らが近づいてきてる」


 連邦の言語が少し離れたところで響き渡る。馬鹿みたいにわかり易すぎるが、銃一丁しか無いこちらが明らかに不利だ。そそくさと移動してしまうのが吉だ。




 また忙しくなりそうだ。と思うと同時に、昔の仲間を思い出す。1年前までは苦楽を共にした親友たちだ。しかし、今では俺が殺さねばならない存在。何故かきつく握った拳が痛かった。

 ご愛読いただきありがとうございます。

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