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そして彼女もいなくなる

 ペピタから話を聞いた私は、確信しました。この鹿のネックレスは、エイダという人物のものだと。そうすればロッカーが五つあるのも納得が……。


「えっ?」


 私はつい、声を出してしまいました。ロッカーの数は六つあります。なぜ? エイダという人物を足しても使用人の数は五人で、ロッカーの数と合わない。さっきペピタから話を聞いたときはすごく合点がいったのに。

 指を五本立て、一人一人確認します。メイド長、私、ノラ、ペピタ。やはり四人で、これにエイダという人物を足しても五人にしかなりません。

 いえ、そもそも仮にエイダがいたとして、どうして私の記憶からすっぽりと抜けているのでしょうか。ご主人様からネックレスを与えられるようなメイドを、私が見逃すはずがないのに。


 私は立ち上がりました。そうだ、第二客室。あの付近でネックレスを見つけたんですから、何か手がかりがあるはずです。早く行って、確認しないと。


● ● ●


「はぁ、終わった。疲れたよー」


 やっと掃除が終わった。食堂は広いから結構手抜きでやることが多いが、それでもすぐには終わらない。

 時計を見ると、もう十二時すぎ。あれ? この時間なら、食事当番の誰かが来てないとおかしいのに、誰も来ていない。私が作れってことかなぁ。

 いつだか私も料理を作ってみたが、それは酷い出来だったね。メリッサなんて一口食べただけでひっくり返ったし、エイダにすら、これは無理だと言われる始末。結局、最後まで食べたのは私とエマだけ。エマはなんであんなに優しいんだろうなぁ。


 五分くらい待ったけどやっぱり誰も来ない。時間に遅れたらシータちゃんが怒るのに、今日の食事当番はなかなか恐れを知らない奴だよ。多分、メリッサかな。


 待つのも暇なので、使用人室へ行くことにした。今日の食事当番を見てやろう。私はメリッサに七ポンドかけるね。


● ● ●


 お庭に来ました。ボロボロの箒が倉庫に立てかけてあります。そういえば、私はなんでお庭に来たのでしょうか。確か書斎の掃除を終えて、使用人室で箒を取って、お庭に……。

 あっ、もしかしてお庭の掃除も私の担当でしたっけ。そうそう、だから急いで来たんです。お庭の掃除は一人だとすごく時間がかかってしまいますから。


 それにしても、メイド長は私のことが好きじゃないのでしょうか。書斎とお庭の掃除なんて、メイド長レベルじゃないと簡単には終わらないと思います。それとも、私が一人前になれるようにでしょうか。

 なんにせよ、与えられた仕事は全てこなすのがメイドの仕事です。ご主人様が帰って来る前に頑張って終わらせましょう。


● ● ●


 今度ばかりは絶対におかしい。確信を持って言えます。


「食事当番が……ノラ?」


 使用人室へと戻った私は、ボードに書かれていたことが信用できませんでした。ノラに食事を任せるわけがありません。それなら私がやります。

 いえ、違います。本質はそこではありません。使用人は私とノラ、そしてペピタの三人。この三人のうちまともに料理を作れるのは私だけでしょう。それなのに、今まで私は毎日食事を作っていた記憶はないのです。

 それに、ロッカーの数もありえません。使用人が三人なのに、ロッカーは六つ。倍以上の差があるなんて信じられるでしょうか。

 私は鹿のネックレスをぎゅっと握りしめました。


「ご主人様……早く帰ってきてください」

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