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ヨーチュリカ大陸  作者: Jupi・mama
第一章 洞窟での勉強会
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第七回 ランドールの本体


前回は4月19日(金)の予定でしたが、

間違って、飛ばしてしまいました。

申し訳ありません m(__)m


 それと、木をえぐって作った蓋つき鍋のような入れ物の中に、ハンバーグと呼ぶべきか、サンドイッチと呼ぶべきか、中にやや厚みのある肉らしき物といっしょに、緑色の葉野菜が挟まれたような、やや大きめの丸いパンが二つ出てきた。蓋を開け中身の具材を見たので、おいしそうな臭いが一面に漂ってくる。


 その隣には、小ぶりの肉まんや餡饅のような形の食材が、中に何が入っているのか分からないが、葉っぱのような物に挟まれ長めの器の中に五個並んでいる。その横にある白っぽいハンカチのような布をほどくと、中からクッキーと呼ぶべきか、大きさも様々な焼き菓子のような一団が目に飛び込んでくる。一通り中を確認したので、元のようにその籠を包み直す。


「ほれ、後ろを振り向いて見てくだされ。わしの顔を見ると……そのなんじゃが……わしと契約してくれんかのう」


 私は立ち上がりリュックをテーブルの隅に置いてから、そっと左側から後ろを振り向くと、私の身長は百六十五センチ、その背丈に合わせたような視線の高さに、頭から胸元まで描かれた一人の男性の顔がある。


 茶色っぽい壁にはめ込まれた額縁のような、その中に白い紙に鉛筆書きでドローイングしたような彼の顔は、前髪は指で掻き上げたように立ち上がり後ろになびいているようだ。頭の上から耳の部分までの髪は、段カットのような切り込みが入っている。


 耳の下からの髪は長く伸び、背中の真ん中辺りまでありそうな雰囲気で、口ひげが唇の長さより少し長めに描かれており、顎髭は先端がとんがり気味で、その顎髭を強調して描くために、胸元までバックグラウンドして描いているようだ。


 眉毛は大ぶりの筆で一降りで描かれたような厚みがあり、やや奥に引っ込み横長でくっきりと見開いた目は、正面にいる誰かを見つめているような眼差しで、鼻筋は高いような、下からのぞき込むと鼻の穴が少し大きそうな気がする。


 精霊も妖精も背丈は低いのだろうか。上着の合わせが首元でV字を表し、毛深そうではあるが西洋的ダンディーと呼んでもいいような、彼の声の響きはいなせな紳士ようであり、でしゃばることもなく粋人のような男性、だんだんとそう思えるようになってきた。


「すてきなおじさまですね。契約をしてほんとうの姿を見てみたいです」


「それはありがたいのう。変わった袋じゃが……その横に本体を移動したからのう。こっちも見てくだされ」


「あっ、はい」


 名残惜しさを胸に秘めテーブルの上に視線を移すと、私のリュックの右側に、直径が五センチほど、真ん中のくり貫かれた部分は三センチほどで、丸くて二十四金で作られたような輝きを放ち、二センチほどの縁には、文字のような模様のような削り込みが見える。


 それに、こちらも金で作られたような、細い糸が編み込まれたようなネックレスというのか、紐の存在と表現した方がいいのか、その輪の中に通されている。


「それを首から提げてから……左手は燈の領域じゃのう。燈花が本体を右手で握りしめ、わしの言葉を復唱すればな、そうすれば契約が完了じゃよ」


 私がその本体を見ていると、自分の顔が熱くなっているような感覚に陥り、見とれている私にそう説明してくれる、ランドールさんの声の響きが聞こえてくる。ゆっくりと両手でネックレスの部分をつかみ首から下げようとする。


 ポンポン……《落とせ》


 頭の中で何かが弾けたような音と声、私の意識がハッとし、ネックレスをつかんでいる両手が開く。それと同時に、その本体は下に落ちることもなく、ネックレスの部分は下に垂れ、宙に浮いているのが見える……どうなっているの?


「ほほう、燈の存在がないのに、燈花の精神力は強いのう。わしもこれで安心した」


 彼が発する声の響きを聞き、この状態は不味かったのかもしれない。この本体に私の精神が舵取りされているみたいな、誘引されていたようだ、と気づく私。


「……よく分かりませんが……何か問題でもあったのですか」


「わしの力を振り切ったんじゃよ。それくらいの意思の強さがなければのう。わしも契約者としては認められんからのう」


 意志の強さという言葉は理解できないが、あのポンという音と声が聞こえたことは秘密にして、やはり、首から提げてはいけなかったのだ。


「……契約者と認める……それはどういう意味でしょうか」


「わしが悪さをしたらのう、それを跳ね返す力が必要なんじゃよ」


 彼がどんな悪さをするのだろうか。掘ったり作ったり耕したりすることが、世間一般に考えられているような出来事に反することなのだろうか。誰かに、何かに、不必要な事柄を生み出すのだろうか。


「……ランドールさんが……悪さというのはどういう意味ですか」


「燈花の命令に背くということじゃのう。わしの方が都合よく利用されることになると思うがな。二人で話し合いをすればな、そのようなことが起こるとは考えにくいがのう」


 私の命令に背く。私に利用される。何なのこの言葉の意味合いは、そういうことを言うなら契約などしない方が自由に生きていけると思うけどな。その言葉以上に、彼にとって有益になる事柄があるからこそ、私と契約しようとしているのではなかろうか。


「……私の命令に背く、話し合い……その意味も分かりません」


「お互いのためじゃのう。わしもこの本体を壊されると困るからのう」


 そう言ったのと同時に、私の目の前にあった彼の本体は、ネックレスを垂らしたまま少し後ろに遠ざかる。


「……本体を壊す……それがランドールさんの弱点になるのですか」


「わしが死ぬことはないがな、復帰するまでに十日ほどかかるかのう。その間に燈花が困りそうな気がするからのう」


「……私が困る……さっきの燈みたいに体力の限界が来るのかしら?」


「それはわしにも分からんがな、人それぞれじゃからのう。どういう状態になるのか想像がつかんのう。契約者との感覚共有が壊れると、前の主人のような……そうじゃのう。どう説明すると納得してもらえるのかのう」


今回も読んでいただき、ありがとうございました。



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