第四回 樹の精霊
燈の本体である、キングス・フィージュの説明で、
頭がキングスで、胴体及び四肢がフィージュと、
入れ替えしました。申し訳あません m(__)m
自分の頭も壮年期に、入れ替えしたいです。
(私は樹の精霊、ですのよ。二枚葉付きの小枝が結界の中に置いてあり、それでちゃちゃっと籠を作るのは得意技、ですのよ。どんな籠にしようかなーー。うーーん、それが問題、ですのよ。
私がこの樹と出会いお守りしている、ですのよ。森の中をふらふらと動き回ると怖いしここに隠れている、ですのよ。下の方のミーロンよりもこの一面にあるミーロンの方が何倍もおいしい、ですのよ。そのことは人間は知らない、ですのよ。
ここにやって来る人間たちにちょっとだけ悪戯をするけど、それでも人間は実を採りにくる、ですのよ。樹の根元の周りには結界を張っているので、登ったり傷つけたりは出来ない、ですのよ。その周りで、私にたくさん話しかけてくれる人間にはとっても親切にする、ですのよ。籠に入れたミーロンを無料で与えたりする、ですのよ
どんな籠を作るかまだ決まりません、ですのよ。私を見ている燈の視線に気づいているのでゆっくり考えましょう、ですのよ。燈と出会えちょっぴりおしゃべりして、とってもとーーても楽しい雰囲気だと思う、ですのよ。教会の連中から逃げ出し百年ぶりの会話かしらねーー。
ミーロンは自分で食べたり売ったりしてもいい、ですのよ。私が下に落としてあげるけど、無愛想な大人にはミーロンは少ししかあげない、ですのよ。お昼前になると子供の一団がよく来るけど、その子たちはたくさんお話しを聞かせてくれから、私は黙って聞いているだけ、ですのよ。そういう子供たちが何組ほどいるのかなーー。
ここで一個ずつ食べさせてあげると、満面の笑みを見浮かべとっても喜んでくれる、ですのよ。ミーロンは樹になる薬のような存在、ですのよ。とっても元気になるからねーー。
ここは見晴らしもいいし、この結界の中にいれば誰にも見つけられずって、あらら、何で燈に見つかったの? 私が声をかけたのかな? どうだか忘れちゃいました、ですのよ。見つけられてよかったのかも、この私が見とれてしまいましたーー。
毎日明るくなると鳥さんたちが食べにくる、ですのよ。空中にほいほいほいと投げると、鳥さんたちは上手に嘴や足で受け取る、ですのよ。とってもとってもお上手、ですのよ。そういうことが楽しみだったのにーー。
はい、籠の完成、ですのよ。葉っぱを籠の下に敷き、ほいほいほいっと六個採り、ふふっと息を吹きかけ二枚の葉っぱをくっつけてっと。はい、これで包みましょう、ですのよ。えへへ、これでお話が聞けそう、ですのよ)
(この独り言みたいなおしゃべりは何? ぼくに聞こえないと思っているんだろうな。全部聞こえちゃったよ。樹の精霊だって、百年ぶりの会話だって、こうやっていつも独りで話しているんだろうか。変というのか面白いとうのか分かんないけど、ぼくの姿に見とれちゃったってさ。ぼく、写真で見たんだよこの姿を、だから同じにしたの。ねぇねにも見せようかな、この姿。ぼくもかわいいと思ったしね。ねぇねが喜んでくれると、ずっとこの顔で通そうかな。もちろん、服は着替えるよ)
「お待たせーー、籠が出来たけど六個入る、ですのよ。ねぇねに食べてもらってーー」
「……はい、ありがとうございます」
「この籠を真上に投げるからもう少しこっちに来て受け取る、ですのよ。食べた感想を聞きたいからまた話しに来てねーー」
「はい、ありがとうございます」
「行くよーー、そらよっと、ですのよ」
彼女の作り上げた結界は樹の頂上に存在し、すなわち、床の部分から真上に向かい袋の綴じ紐の部分であるような、頭上の中心部分で閉じられている。
今、その中止心部分を開き籠を投げたというよりも、緑色の風呂敷みたいな布で覆われたその籠は、結界の開いた真上に向かって浮き上がり、そして外に出る。
「ありがとうございます。それでお願いがありますが、もう少し大きい籠を作ってくれませんか? 他の食べ物も入れたいです」
「そうねーー、三倍ほどの大きさでいいのかなーー。籠は何個いる、ですの?」
「一つでいいです。今から街に行くので帰りに来てもいいですか」
「待ってる、待ってる、ですのよ。またおしゃべりが出来るなんて嬉しいーー」
(燈が私の作った籠を両手で受け取り胸のあたりに近づけると、その籠がすーーと消えてしまった、ですのよ。アイテムボックスを持っている、ですのよ。すると、燈の姿も見えなくなった、ですのよ。転移魔法も使える、ですのよ。
何だかすごーーい子供、ですのよ。それにかわいいしーー、興味が持てたというのか一目惚れしてしまった、ですのよ。いなくなると何だかとっても心残りで哀しい。私の閉じた心を燈が呼び戻してくれた、ですのよ。そろそろ街に戻った方がいいのかしら、ですのよ。
よっし気を取り直してっと、三枚葉つきの小枝ちゃん、十本私の側に来てちょうだい。木の股から新しく生まれたような新鮮な輝き、ですのよ。今度はもっと細い紐で緻密な編み込みにする、ですのよ。燈が喜ぶように、もっと見ばえのよい籠を作くる、ですのよ。
スイ、スイ、スイーー、はい完成、ですのよ。形が決まれば直ぐ出来るーー、はーー遣らかしたーー、こんなに早く作れちゃうと、ですのよ。よっし気を取り直してっと、今度はゆーーくり作る、ですのよ。スーーイ、スーーイ、スーーイ、同じ籠がまた出来ちゃいましたーー。
分かった、別の形に考え直す、ですのよ。そうすれば…………長方形から四角に変わっただけ、ですのよ。そうですわね、今度は丸く作る、ですのよ…………はい完成、ですのよ。もう四つも作れちゃったーー。
今度はどんな形にしようかな、ですのよ。よっし、大きな枝をえぐって器を作る、ですのよ。蓋があると便利、底に鳥さんの模様でも入れようかな、ですのよ。食べ終わった後に驚くかも、ですのよ……………………はい完成、ですのよ。もう何なのよーー。嫌だーー。
そうだ、燈のかわいい服がたくさん入れられるような大っきな籠を作ればいい、ですのよ。驚くのか笑顔になるのか、そういうかわいい顔が見たい、ですのよ。何個作ってもお持ち帰りは簡単にできそう、ですのよ。十枚葉付きの小枝ちゃん、五本私の側に来てちょうだーーい)
その後、ヨーカリスは何本もの小枝を呼び出し、喜びではちきれんばかりの気分で独り言を口ずさみながら、一心不乱で燈のためと思い、妄念にとりつかれることもなく、思考を停止をすることもなく、大きい籠や小さい籠を何度も造ったり壊したりしながら、巧まざる環境で創作活動に打ち込むのであった。
★ ★ ★ ★ ★
「ヨーカリスおねえさん、また来ました。入れ物は出来ましたか?」
「出来たわよーー。燈はかわいいーー、ですのよ」
「……ありがとうございます」
「何を買ってきたの見せて、ですのよ」
「これと、これと、これを買ってきました」
「それじゃ、この大きな籠とこの蓋付き籠と、長めの器とこの深めの器を渡す、ですのよ」
「ありがとうございます」
「燈のために特別な籠を準備している、ですのよ。まだ完成してないから今度渡すねーー」
「……」
今回も読んでいただき、ありがとうございました。