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ヨーチュリカ大陸  作者: Jupi・mama
第一章 洞窟での勉強会
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第十五回 内部寄生


「人間的に説明すると……王子、様かな」


 気持ちのどんでん返し、一気に意気消沈。どういうこと? 


「……王子様なの? 皇太子? ごめん、信じられないよ……燈の姉なんかになれないよ。どうしたらいいの?」


「今まで通りでいいんだよ。誰も知らないことだしね」


「……そ、そうか、そうだよね。ランドールさん前でも平気で話したからな。急に変わると変だよね……ちょっと……燈の仲間に知られると……ちょっと怖いような気がする」


「大丈夫だよ。ぼくがしっかりと説明して納得してもらうからね。早く仲間に会いたいな。ねぇねを早く紹介したいしな」


 これって……燈の両親に……私を紹介する場面じゃなかろうか??


「……私は、私は弱っちいからよろしく……」


「どうしたの、ねぇね。声が変だよ」


「……大丈夫大丈夫。私は……さ……ランドールさんの話も燈の話も……さ、分からないことばかり……考えても無駄だって……頭では理解しているけど、どうも心の中がしっくりこない。街に出かけても……そういうことばかりが起こるんだろうか、ね……ここで少し慣れたからよかって、またかんだ……よかった」


 何を話しているの燈花、焦りがぶり返しているよ……自問してしまいました。


「ぼくにはここの情報が少ししか分からないから、ねぇねと出かけるともっと分かるかもしれない。街に出かけて様子をみようよ。とっても楽しみ」


「……それは分かったけど……どうやって行くのかな? 燈といっしょに飛んでいくの? 何だか怖そうね」


「大丈夫だよ。ここに移動した時と同じような感覚だよ。ねぇねとあの場所で話しているとね、だんだんと空間が狭くなってきたんだよ。時間制限があったのかな、それはよく分かんないけどね。あそこから出ると緑色の光か見えたから、ぼくの仲間が呼んでいるような気がして、それでここに飛び込んだんだよ」


「……そうなんだ。それすらよく分からなかったけど……ランドールさん、ここから出たいのね。それともやっと出る気になったのかな? 時間の感覚がさ、年数のことだよ。年齢と言ってもいいけどさ、ちょっと信じられないのよね」


「人間を基準として考えない方がいいかもね。ぼくの仲間もそう考えてよ。ぼくは子供だし迷子だからね。ぼくが仲間を見つけることは出来ないと思う。仲間がぼくのことを見つけてくれるのを待つからね。あそこが時空の狭間だと知ったのはね、頭の中で声が聞こえてあそこに行ったんだよ」


 ランドールさんの話をしたけど、王子様の言葉が頭の中で空回りをしているんですけど、燈は一族を背負っているわけ? 人間的に考えてはいけないのね。この言葉は私より燈の方が大人に見えてしまう。


 時空の狭間の意味は理解できないけど、声が聞こえたのね。誰かが助けてくれたということなのかしら?


「……燈の考えは分かったけど、私はどうすればいいのかな? もう戻れないんだよね」


「戻っても地球がどれくらいダメージを受けたか分からない。あの時間には戻れないと思う。人間の言葉で説明するのは難しいけど、ぼくは内部寄生しないと生きていけないから、ねぇねにはほんとうの悪いことをしたと思います。二人が助かる道はあそこに移動することしかなかったんだよ。ぼくは子供なんです。ぼくの力では戻れないと思う。それで大人もいると思ってほしいの。最初に大人の仲間が地球に行って様子をみてね、知らせてくれたんだよ。生き残るために内部寄生することをね。人間の体は手だけではなくてどこでもいいんだって。人間を見つけて張り付けばいいんだって。でもね……ねぇねがぼくを手の上に乗せてくれたから……」


「……そうなんだ」


 私は独り暮らしで彼氏もいなかったし仕事一筋で……家族や友達や同僚たちはどうなったのしら? この洞窟辿り着いた時は、もう人生が終わったような感覚に陥ったけど、こうして新たな展望が開けここで生き抜くしかないようだ。燈やランドールさんと出会え……新たな人生が始まるのかな?


「……そうか……ここで生きていくしかないのね。ここの生活に早く慣れないとね。そうだ、灯りからの警告音と言葉はありがとうね。助かったよ」


「何のこと、意味が分からないよ」


「落とせ、妖精、神って教えてくれた言葉だよ」


「ぼく知らないよ。ぼくは何も言わないし聞こえなかったよ」


「ええっ? どういうこと?」


「分かんない」


 私も分からない。この話はここで止めよう。お互いに不信感を抱いてはいけない。私の精神状態がめいっぱいだったようで、夢想してしまったのだろう。


「……そうだ、燈のもらってきた赤い果物、ミーロンだっけ、食べようかな」


 食べてみて、と燈に言われていたので、やっとその機会が訪れたような、明るめの弾ませた声でそう話す。


「うん、そうして。とってもおいしいと思うよ。ぼくがヨーカリスおねえさんに感想を伝えるからね。ぼく疲れたから、おしゃべり止めて休憩するね」


「分かった。お疲れさま」


『ちょいと燈、待つのじゃ。(わらわ)の話を聞いてから休憩時間なのじゃぞ。時間がないので一気に話すが二人とも黙って聞くがよい。燈花はランドールと契約するのじゃ。あやつは根のいい土の精霊じゃから何も心配せんでもいい。妾がここに閉じ込めてから、あやつは反省しとるようじゃから許すことにした。妾がこの大陸を造り千年も人間を指導したがな、この大陸の人間はアホでマヌケでバカじゃから進歩がみられん。妾は疲れてぐっすり寝込むと五百年も経ってしもうた。目覚めて見渡せば人間の数が増えておる。妾はどうしようもなく、力強き妖精を見つけ二番目の弟子にし、そやつは働き者じゃからな、妾と似たような名前を授け精霊にしてやったが、なぜだか逃げだしてしもうた。そやつの名前はヨーカリス、燈花はヨーカリスを見つけだし契約をすることを許す。皆で人間どもを進化させてくれ。(きん)があってもバカ人間どもの心は変えられぬようじゃ。ここの洞窟に戻ればスマホの充電、電池の寿命は復活するから安心せい。有体物のコピーも可能じゃぞ。腕時計は洞窟から外に出てから使ってみよ。もう時間じゃ。おおそうじゃた、緑の光とポンポン音は妾からじゃぞ』


 私が立ち上がってぽかんとした顔で燈見ると、何か言いたげに上目遣いで考え込んでいるようで、立ち上がったその体は、私に近づいてくる。


「燈……今、声、聞こえたよね?」


「ねぇねも聞こえたんだね?」


「何だったのかしら?」


「何だったんだろう?」


「……女性の声だったよね?」


「しゃべり方が……ぼく怖いよ」


 そう言ってから燈は、私の胸元で顔を隠すように抱きつき、私の背中を両手でぎゅっとつかんでいるようだ。


「……もう時間切れでいなくなったからね。心配しなくていいからね」


 私はそう言いながら、燈の背中を優しく数回擦ってあげ、トントンと軽くたたき続ける。


(何じゃ、燈のやつは、妾を怖いといいおって、めんこい顔が見えなくなったじゃないかのう。涙ぐんでいれば……ちとかわいそうじゃったかな。一気に話しすぎたかのう。まあよい、妾も都合があるのじゃ)


今回も読んでいただき、ありがとうございました。


自分で読み返し、(わらわ)の仮名ふりがしつこかったので、最初だけ残して消しました。

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