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ヨーチュリカ大陸  作者: Jupi・mama
第一章 洞窟での勉強会
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第一回 プロローグ


新しい小説を書きました。

第一章が終了したので、四月一日から週三回で、

二週目からは、火曜日・金曜日と予約投稿します。

よろしくお願いいたします。


あらすじと同じ言葉です。


私の名前は夏川(なつかわ)燈花(とうか)、二十八歳。隕石と遭遇する。

それは花火のような緑色の灯り、夕焼けのような薄明かりの時空の狭間。

自分の名前の一文字を絡め、その隕石の名前を、(あかり)と呼ぶ。

魔法が飛び出す異世界で、燈花と燈の運命は……。



 地球から見える夜空に流れ星が頻繁に出現するようになり、あちこちからやや大型の隕石が落ちてきた、というニュースが報道されていた。


 人間たちは宇宙から地球に衝突しそうな隕石の軌道を計算する暇も無く、突然現れる大型の隕石に翻弄され、それが大気圏に突入して分解し、正に生き残った隕石が地上に降り注ぐ、とそのようなニュースキャスターの総説であった。


 毎年発生する台風やハリケーンの恐怖、人間がそれらに遭遇する確率は高い。しかし、マグニチュードの大きな地震や津波、巨大竜巻のような突風の流れ、火山の爆発や乾期の山火事、それらはニュースで知るだけであり、自然災害の恐怖を身近に体験した人たちの確率は少ない、と紙面では書かれていた。


     ★  ★  ★  ★  ★


 今日は12月5日、ボーナスの振り込み日。仕事帰りに駅のロータリーの先にあるスーパーで買い出しを済ませ、背中のリュックに入りきれない荷物を右手で持ち、いつも駅に行ったり家に帰ったりと利用している公園の横に備わっている歩道を歩き、家路に向かうその途中で後方から人の叫び声に似たような言葉を聞きつける。


 後ろを振り向くと距離感は理解できないが、徐々に私の住んでいる町にも無数の隕石が降り注いできそうな勢いで、東の方から私を追いかけるかのように近づきつつあるのが見ていて感じ取れる。


 空を見ているとほんとうの花火のような、空から花火が打ち上げられたような、驚異的、壮観な眺めだ、と表現した方がいいような、つかの間、私は東の空を見上げ絢爛豪華なその花火に見とれていた。


 地上に届く前に消えているようにも思えるが、近くで被害が出なければいいのにな、などと考えていると、その花火の一つだけが……緑色をした光が……確実に私の方へ向かってきている。


 私の視線はその色を捉えているが、逃げようにも体が動かなくて見つめている。刹那、その光は私の足元に落ちてきた。私は大きく一歩後ろに後退して下を向くと、今までの輝きが嘘のように消え、そこには五センチほどの丸い石のような物が存在している。


 その落ちてきた石を前にして両膝を軽く付いて座り込み、石の真上から見るのを止め、街灯であるLED電球の灯りを取り入れるように体を左側にずらしながら、少し地面から浮いているようにも感じ取れる、その石全体をくるりと見回す。


 それは翡翠のような濃い緑色をしているが、ジェードの工芸品のような丸くてやや平べったいその石の中央に、やや大きめの丸くて黒い、見るからに人間の眼のような形をしている何かが存在し、それを囲むかのように金属の欠片なのか模様なのか、細かい粒状の混じり物が点在している。


 奇妙な石だと思いながらも興味本位で、左手で摘まみ上げ手の平に乗せてみる。外の気温は冷えているがそれは熱くもなく冷たくもなく、私の体温にシンクしているかのように、最初は静かに乗っているような存在であった。


 その石が緩やかに、私の手の中に沈み込むような様子で見えなくなる。


 左手を眺めている私はハッと我に返り、びっくりして左手を握ったり開いたり振ったりしながら、体を揺さぶり自分の周囲を視線で探しても、何も落ちていない。


「……どうなっちゃったの? 石が消えた。ほんとうにどうなったの? 手の中に吸収されたみたい」

 

 自分の声が独り言のように自分の耳から聞こえ、そっと立ち上がっても体はいつものようにかったるいし、背中の荷物も右手で持っている買い物袋も何も変化がない。


 夢心地の心境から現実に戻りどれほどの時間が経ったのだろうか。今夜は天気がいいが風がやや強い。ウオーキングシューズの中はたくさん歩いたので少しむれ気味で暖かいが、膝下まであるバーゲンで買った灰色の迷彩柄のスキーウエアを着ていても、ゆったりタイプのストレートジーンズをはいているが、コートからはみ出している下の部分は寒い。荷物を持っている右手の指先と顔も寒く感じるが、左手はその感覚が薄らいでいるような気がする。


 東の空のを見上げると、花火は峠を越したように消え去っていた。


「家に帰ろう」


 公園に備わっている歩道半ばから、また独り言のような言葉を発して家に向かう。


    ★  ★  ★  ★  ★


『ここにいると危ないからね。場所を移動すよ』


 大人ではなくトーンの高い女の子か男の子か、子供と表現した方がいいようなかわいい声が頭の中で響く。


 その言葉に対して私が返事をすることもなく、我が家の玄関を目の前にして一瞬に差し替えられたように、夕焼けが終わり告げようとしているような薄明かりの中に、そのままの私が立っている。


 また頭の中で同じ声が響く。


 今いるこの場所は時空の狭間である、とその子に言われる。私の左手の平から体中に入り内部寄生をしたそうで、寄生と同時に私の今まで生きてきた記憶が……人間の染色体の中に秘められている過去の情報が……人類の歴史がその子に知識として流れ込んだそうだ。自分たちには人間のような性別はないと話す。


 私の心の中は錯乱状態である。


 その子の住んでいた惑星は地殻変動で分断してしまい、それでも惑星の欠片としてその中に住み続け宇宙に漂いながら、同じ方向に進んできたそうだ。


 その子の一族が太陽の存在を知り得た結果の表現だが、はるか遠くに微妙に輝く太陽の光に照らされた青い地球を見つけ、自分たちが生き残るために地球の大地へ向かう隕石の中で、見守られるように地上に到達している、と話してくれる。地球の大気圏を超えられず消えてしまった仲間もいるらしい。


 他にも、色んな衝撃的な話を聞く。


 私は宇宙の話題が大好きだが専門家でもないし研究者でもなく、平々凡々な二十八歳の女性であると説明し、今の話を聞いても意味が理解できない、と狼狽気味に話をする。


 こうやって会話が成立しているので、寄生されたのは事実として、ほんの少しだけ自覚出来るような、出来ないような、半信半疑の気持ちである。


 その子の話を聞きながら少し落ち着きを取り戻した私は、花火のような緑色の灯り、夕焼けのような薄明かりの時空の狭間であるこの場所、それと自分の名前の一文字を絡め、その子の名前を(あかり)と呼ぶことにする。


 (あかり)の話しぶりと声の響きは十歳前の子供のような会話力だ、と思っていると、一瞬にして目の前の風景が変わった。ごつごつとした岩だらけではあるが時空の狭間よりは明るい場所だった。


今回も読んでいただき、ありがとうございました。

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