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アノマチ  作者: 惟名 瑞希
第1章 アノマチ
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5話 マホウショウジョハタガタメニ

 無事に家へとたどり着いたわたしは未だに足が少し震えていた。


 今日は京子も彼の家に泊まってくれるらしい。京子の気遣いは大変ありがたかった。そしてわたしにはもう一つ解決しなければならない問題があった。


 次の日、いつものように3人で囲う朝の食卓でわたしは京子に切り出した。


 「京子さん、わたしで良ければ、京子さんの会社で働かせてください」


 京子は少し驚いた様子を浮かべながらも、すぐに笑顔になり、


 「いいの?? ホントに?? こちらこそ是非よろしくお願いします!! やったーーーー!! ナギサちゃん!! ありがとう!! 本当にありがとう!」


 と元気を取り戻していた。


 一方、彼は少し不安そうな顔をしている。無理もない。昨日のような事があれば、わたしがまた無茶をするんではないかと思うのも当然である。


 わたしは言い訳をするように、付け加えた。


 「今のままだと、キミや京子さんに迷惑をかけているだけだから…… わたしも自分で生きていけるようにしたいの。 でもしばらくはここにお世話になってもいいかな?」


彼はもちろんとだけ告げ、その後食卓は、いつもの朝食の雰囲気へと戻っていった。


 いつもと違う点と言えば、彼や京子さんと一緒に朝にオフィスに向かったことである。正直、これ以上家にいても何か分かるわけでもないし、少しでも外に出ていたかったのも本心であった。そのためにもお金は必要だ。


 オフィスでは京子のペースに流され、わたしはよくわからないうちに契約を結んでいた。お偉いさんが集まる中で、魔法少女のコスチュームになるのはなかなか恥ずかしいものはあったが、まあ仕方あるまい。マネージャーは同じく京子が担当してくれるようである。一安心だ。


 スケジュール調整はまた後日伝えるとのことで、わたしは今日はフリーとなった。むしろこんなすんなり契約が出来たことに対し、大丈夫かなと不安に思うくらい順調に仕事にありつけた。


 フリーになったわたしはアラタの定食屋へと足を運んでいた。昨日の出来事を誰かに話したかったのかも知れない。


 定食屋に入ると、アラタはこちらに気がついたのか、近づいてきた。


 「また来てくれたんだね。 えっと…… そういえば名前聞いてなかったね」


 「渚です。 四条 渚って言います」


 「ナギサちゃんか。 可愛らしい名前だね。 改めて、西洞院 新です」


 なんだかカッコイイ名前だなとわたしが思ったのもつかの間、ここに来た用事を思い出し、わたしは早速アラタへと切り出した。


 「昨日、よくわからない人のような何かにあったんです。 そいつは人を襲っていました」


 アラタはどんなやつだと少し真面目な顔でわたしに返答した。

 

 「姿は恐ろしい見た目をしていて…… この世のモノとは思えないような、人型はしてるけれど…… アラタさんなら何か知っていると思って……!」


 「申し訳ない。 それについては私もよくわからない」


 おじさんにも分からないのだからきっと、誰も分からないのだろう。あの恐ろしい見た目がわたしの脳裏に蘇ってくる。関わらずに済むならできれば一生関わりたくはない。だけど、


 「わたしの魔法なら奴を倒せたんです。 この街の人々のためにというのもありますけど、自分が生きていくためにも、わたしなら奴と戦える……」


 アラタの顔が少しこわばった。だけどわたしは決めていた。


 「だから、わたし、この魔法の力を使って街の人達の役にたてたらと……」


 アラタは静かに厳しい口調で話した。


 「君は本当にその道を選んでいいのかい? 君が怪我をするかも知れないんだよ?」


 でもわたしが生きていく道はそれしかなかった。魔法を使えるようになりたいとか幼稚な願いのせいで、魔法を使って人の役に立つこと以外、生きていく手段を見つけられなかった。何より、彼や京子さんにこれ以上迷惑をかけることがわたしにはどうしても我慢出来なかったのだ。


 「わたしが選んだ道ですから」


 わたしは力強く告げた。アラタも諦めたのか、


 「くれぐれも無理はしないでくれよ。 危なくなったら逃げなさい」


 とだけ伝えてくれた。そして


 「まあせっかく来てくれたんだから、何か食べていきなさい。 好きなものをごちそうするよ」


 さっきまでの緊張の面持ちは消え、アラタはニッコリとわたしに告げた。



 わたしは魔法少女として生きていく決意を固めた。


 まず何をするべき考えたときに使える魔法を増やすことだった。幸いにも彼と異なり、契約はしたものの、スケジュールは全く決まっておらず時間だけはたっぷりあった。


 ――まず、やっぱり空を飛べなきゃ駄目だよね……


 空を飛べるようになるのは重要だと思った。何処かで奴が出てきたとしても、空からなら見つけやすいだろう。


 必死に空を飛ぶ姿をイメージしたが身体は浮かない。どうしたものか。とりあえず箒を用意しまたがってはみたものの飛ばない。どうやって魔法使いは飛んでいたのだろうか?


 ――そもそも飛べないのでは?


 ちょっと心がおれそうになったが、仕方無い、自分の出来る範囲で飛べる方法を考えてみる。わたしは、ふと初日のオフィス前広場での試みを思い出した。そういえば風を操ることは出来たな…


 風を操るイメージを膨らませる。今までは飛ぼう飛ぼうとして自分の身体にのみ意識を向けていたが、風を自分の身体の周りにまとわりつかせることをイメージする。


 すると、身体が少し軽くなったような気がした。それは一瞬だったが、なんだかこのイメージはいけそうな気がする。自分の身体じゃなく、少し外に意識を向けるイメージだ。


 その日は少し身体を浮かせることに成功した。まだまだ鍛錬は必要なようだ。


 それからというもの空き時間の間、わたしは魔法のイメージを膨らませる事に時間を費やした。とりあえず1週間くらいでなんとか安定して飛べるようにはなったが油断をするとまだ落ちてしまいそうではあった。


 わたしがそんなこんなで魔法の特訓(?)をしている間、彼はすぐ目前に迫るライブに向けて、必死に準備をしていた。彼はライブに向け、営業活動であったり、共に演奏を行うメンバーとの練習であったりと予定が詰まっていて、また家でも、空き時間があれば作曲活動に勤しんでいた。


 わたしの活動スケジュールも何となく決まりはじめ、街を守る魔法少女としてのPR活動をいくつかこなすような仕事が入っていたが、それほど忙しくはなかった。写真撮影だったり、雑誌の取材だったりなんだか慣れない部分もあったけど、まあまあ楽しく毎日を過ごしていた。


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新しく連載開始いたしました。マイペースにかいていこうと考えておりますので、お付き合い頂ければ幸いです。

動物のお医者さん、転生して今日からモンスターのお医者さんになりました!
よろしくお願いいたします。
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