22話 ヒカリ
--やるしかない
可能性が少しでもあるなら、それにかける。
静かに、集中して……
風に意識を集中する。しかし、身体から意識を離すと、風は途端にコントロールが難しくなる。
――やっぱり、無理なのかな……
風で炎を強めることを考えたが、そう上手くは行かないようだ。しかし、そうも言っていられる状況ではない。
――わたしのそばじゃないと、制御出来ないなら……
ここで、わたしはもう一つ、考えを思いつく。しかし、それは私自身を傷つけることにもなる、諸刃の剣だ。
「キミにしか出来ないんだ」
彼の言葉がわたしの頭をよぎる。そう、わたしにしか出来ないことなのだ。
決断した少女の目には迷いはもうなかった。
……………………………………………………………
彼は、少女を信じることしか出来なかった。
「大丈夫、キミなら出来る」
その言葉は少女を励ますものであったと同時に、彼自身に言い聞かせる言葉でもあった。災害とも呼べるものに、少女は1人で戦いを挑んでいる。彼に出来る事は何もなかった。自分に何も出来ない状況に、もどかしさを超えて情けなさすら覚えたが、そんな事を言っているような状況ではない。だからこそ、彼は信じることしか出来なかった。
「無事に帰ってきてくれ」
遠目に、災害とも呼べるそれと、時々小さく赤く光る火の玉を見つめる彼は、ひたすらに祈る。
すると、彼からも確認出来るような、大きな光が見えた。それは、まるで全てを包み込むように、優しくも力強く、赤い光を発していた。
その後、しばらくして赤い光は、奴の方に向かって飛んでいった。おそらく、少女のありったけを込めた魔法だったのだろう。言われなくても理解していた彼は思わず、叫んでいた。
「頼む!!!」
その光が奴に当たると同時に、奴は一気に燃え上がった。
「頼む、頼む!!」
赤い光は未だ強い光を発して、災害とも言えるそれを必死で燃やしていく。その輝きはとても美しく夜空を照らしており、まさに神秘的な光景であった。光が奴を燃やし始めてどの位たっただろうか、その永遠とも呼べるような時間ののち、世界は一瞬の閃光に包まれた。
一瞬の閃光が包んだ世界は刹那、再び、闇へと戻った。
視界の先には闇しかない。数秒後、彼は理解した。
たった1人の少女は災害に打ち勝ったのだと。目の前に広がる、何もない空間は、少女の勝利を意味していた。
「やった……」
彼は叫んだ。無意識のうちに叫んでいた。
「やった!!」
その日少女は、確かに街を救ったのだ。
しかし、少女がその街に帰ってくることはなかったのだ。




