7話 アラタナデアイ
どうやら2人もわたしたちと同様にこの街へ迷い込んだらしい。青年は堀川 篤と名乗り、また泣きじゃくっていた女性もなんとか話せる程度までは落ち着き、御池 まどかと名乗った。
まあいろいろ聞きたいことはあったが、まずは2人も落ち着いた方が良いというアラタの判断で、2人は今日はアラタのところに泊めて貰うこととなった。
次の日、午前に仕事を終えたわたしたちは京子と3人でアラタの定食屋へと向かった。
アラタはわたしたちが到着すると、揃ったなと言わんばかりに、状況を整理した。
「私もあいつは初めて見た。 ここ一ヶ月くらい前から急に発生しているらしい。 情報によると、奴らはよくこの先の吹きだまりの街の方から来るとかなんとか」
一ヶ月前と言うとちょうどわたしと彼がこの街に来た頃だ……
彼もなんだかいたたまれない様子で話を聞いている。
京子は全てが初耳だったようで、興味深くアラタの話を聞いていた。
「奏くんとかナギサちゃんのこと忘れちゃうの嫌ですーーーー!!!! うわあああああ!!」
カミカクシの話題になると、京子は子供のように泣き叫んだ。ナイアガラ再びだ。わたしと彼以外の京子をよく知らない3人はドン引きしていたが、わたしは京子の素直な想いがちょっと嬉しかった。
聞けば、篤は警察官を目指していたらしく、人を守れる力が欲しいと願ったようだ。単発で誠実そうな、それでいて筋肉がついていて力強い篤の見た目は、まさにその願いを象徴しているようだった。願いが叶ったのか試すために、外で石を粉々にした際には全員が驚いた。
「すごいですーーーーー!! これはもう空手タレントとしてうちと契約するしかないですね!! どうですか篤くん! うちのプロダクションに是非!!」
京子さん、あんた見境ないんかい!と思わず突っ込んでしまったが、篤は丁重にお断りしていた。そういう柄ではないらしい。篤なら万が一奴に襲われたとしても全然余裕だろう。
ちょっとチャラそうな、大人のお姉さんオーラむんむんのまどかはお金が欲しいと願ったようだった。アラタの方をちらっと見ると、なんだかばつが悪そうにしている。お金があれば、なんとか生きていけるだろうし、わたしよりも充分賢い選択であったことは間違いない。むしろ、わたしや彼の方が変だったのかも知れないと思い始めた。
まどかは、その見た目からは想像も出来なかったが、実はとても優しくて穏やかな2歳年上の女子大生だった。夜のバイト帰りだったため、派手なカッコだったらしいがそれもどうかと思う。まあ、魔法少女のコスプレをしているわたしが言えた義理はないが……
アラタや京子といった、大人の提案で、まどかは手に入ったお金でマンションを借りることにしたらしい。賢明な判断だ。また篤は京子の紹介で警察官に口利きして貰い、面接を受けることとなった。公務員がこんな事でいいんだろうかと思ったが、奴の影響か、警察官は現在人材不足らしく、年中募集しているらしい。よほど問題がない限りは、ほとんど落ちることはないらしく、受かれば寮もあるので、篤も住むところには困らないだろう。ひとまずは。
それぞれの身の振り方が決まったところで、わたしと彼と京子は夕方からの仕事のため、アラタの定食屋を後にした。
夕方からは彼はいつものようにフェスに向けたバンドの練習、わたしは新しく入ってきた仕事でラジオ番組の収録。収録が終わり、スタジオを後にすると、京子が汗だくになりながら走ってきた。
「大変です!! ナギサちゃん!!」
京子は息を切らしながら手に持っていたスマホの画面をわたしへと見せた。それはネットニュースの記事だった。
『おてがら魔法少女、女性を救う!』
そこには魔法を使い奴を倒しているわたしの姿があった。聞けばものすごい話題になっているらしい。いわゆるバズっているというやつだ。
「これはもう、ナギサちゃんも奏くんに負けないくらい有名人ですね!! ふんふん」
息を整えた京子は嬉しそうにわたしに言う。
まあでも、これで心置きなく魔法を街中で使えるか、わたしはポジティヴに考えることにした。しかし、わたしを待っていたのは……
-取材の嵐-
その日は夜中まで帰る事が出来なかった。次から次へと記者やカメラマンが押しかけ、わたしを中心にバーゲンセール会場のようになっていた。笑顔を振りまいては次から次へと対応する。取材後半は疲れもあって、おそらくすごい顔をしていただろう。
家に帰ると彼は12時を回っているのにも関わらずわたしを待っていたのか、ソファーに腰掛け作詞作業をしていた。彼にただいまと伝えると、彼は元気がなさそうに
「遅くまでお疲れ様」
と言った。わたしは彼を心配し、何かあったの?と訪ねると彼は言った。
「この曲の歌詞がどうしても納得いくものがかけないんだ」
彼は本気で悩んでいるらしい。わたしはなんとか彼を励まそうと、
「大丈夫、キミなら素敵な作品が作れるよ」
と、一言声をかけた。彼は
「ありがとう」
と笑っていたが、その笑顔は何処か無理しているように感じた。無理もない。星空フェスティバルはすぐそこまで迫っている。わたしは彼の邪魔を出来るだけしないよう、無理はしないでねとだけ彼に伝え、自分の寝室へと向かった。




