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5、赤手配書、緑夜空石

 帝国三番目の交易都市カラハタスの中央広場に、黒髪の少女はいた。

 大きな掲示板が設置されていて、帝国やこの地を治めるカイン伯爵からの御触れが貼り付けられている。

 少女が読んでいるのは、左端にある赤字で書かれた手配書の数々だった。そこには指名手配犯がもちろん並んでいるのだが、気になるものがあったのだ。


「あたしのより高いのもあるんだ」


 ヒカリの、とはイーヤムでの伯爵・市長殺しの犯人に対する手配書。貴族や支配階級の者を無き者にするという罪に加え、収穫祭というプリームス帝国の神事を台無しにした罪も入った懸賞額が付けられていた。金貨400枚、帝国で庶民が20年かけて稼げる額といった具合だ。

 そして、それより高い額が付いていたのが一枚。


「盗賊496号。例の男だよ」


 例の男とは、黒い薄汚れた外套がいとうを羽織って、美しい煌めきを放つ片手剣を持っていたあの男である。

 ナパート族のゴブリン、バロックに調べてもらうと彼の正体はすぐにわかった。もちろん確証はないが、あの夜、あの場に、凄腕の剣の達人がいたのだ。盗賊496号、世間では『ブラッドムーン』と呼ばれていた男が。


 いわゆる義賊と呼ばれる男で、盗んだお金は貧しい者達にばら蒔き、高価な宝石だけ自分の懐に入れる。そんな有名人だ。


 収穫祭の夜に、多分、僕達が逃げ出した後、混乱している街で、悪徳商人として有名だった金貸しから金をふんだくっていったらしい。もちろん街の貧しい者達への施しも忘れずに。


「ブラッドムーンだっけ? 」


「そうだよ」


「何でそんな名前で呼ばれてるの? 」


「自称なんだ。毎回じゃないが、予告状を出す時もあるんだよ」


「予告状……狂ってるねぇ」


 まったくだ。有名な宝石や刀剣や魔術品、魔術品ってのは魔力や魔法を持つような品ね、そういった物を盗む時に予告状を出すらしい。それでいて何件もの盗みを成功させているわけだ。ふざけた奴だ。


「この街に着たのも、ブラッドムーンが予告状を出したって噂があってね」


「カイン伯爵のお宝を狙ってるわけ? 」


「緑夜空石サードアイってのを盗むそうだ」


「宝石? 」


緑夜空石(サードアイ)っていう、ある神の第三の眼(サードアイ)との言い伝えがある宝石だ」


 僕は神なんて信じない。本当にいるかも知れないが、弱き者を、信じる者を救えていない神なんていたってしょうがない。正義をもたらせない神なんていらない。

 だが、神を純粋に慕っている人々が嫌いだと言うわけじゃない。良い行いをしようとしてるなら尚更だ。逆に、自分と違うからとしいたげ、あまつさえその御神体の一部という物を奪い取り、虚栄心を満たしてる奴は赦せない。


「緑夜空かぁ……エメラルドか、それともラピスラズリかな」


「宝石詳しいの? 」


「好きなだけ。見るだけ。デパートとかでね。美術館や博物館にあるような奴は見に行きたかったけど、機会がなかった」


「じゃあ、仕事のついでに拝めるといいな」


 ヒカリは頷いて、顔を上げる。この街の中心部、広場から伸びた大通りの先にある大きな屋敷、カイン伯爵の邸宅を見て、もう一度頷く。それから広場を離れた。




 カラハタスはは日干しレンガの城壁に囲まれている。ここら辺の大都市はレンガ造りの壁を作り、外敵から身を守ってきた歴史がある。気候的にも日干しレンガが作りやすく、木材や石材が貴重だからだ。そして、どこの街にも裏通りはある。それに、スラムも。街そのものが栄えていればいる程、スラムも闇を深くし、根を深くする。

 このカラハタスという交易都市のスラムも深く、複雑なモザイク模様をなしている。


 宿屋を決め、裏通りの奥へと入っていく。ゴロツキどもを探すとすぐ見つかった。というか、すぐ絡まれた。

 フード付きのマントを着ているので、女の子とはすぐにわからないのだが、背は低めなので、子供だとはわかるからだ。


「なあ、道案内は必要ないか? 」


 二人のゴロツキが道を塞いでくる。ひとりはダガーをちらつかせている。


「どこに案内してくれるの? 」


「街までの帰り道さ、有り金だけに負けといてやる」


 その言葉が言い終わらない内に、ゴロツキAの右手の筋を切っていた。ゴロツキBがダガーを慌てて腰から抜こうとする。腰にやった右手の甲を刀で突き刺し、ヒカリは話す。


「話すのは勝負がついてからがいいよ」


「うー」


「いてぇー」


 ヒカリは、涙を流してうずくまる二人に告げる。


「ここら辺のお偉いさんに顔を繋ぎたい。道案内してくれる? 」


 うーん、僕の考えたやり方に違いないと言えば違いないんだけど、転移したばかりでここまで出来るものなの?

 能力だけじゃなくて、性格込みで虹色のオーラ何だろうか? 自分の引きの強さが信じられない。







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