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6、伝説の霊獣、あるいは地獄の魔獣

「身体小さく出来るの? 」


 そろそろ島を出ようかと思っている。身体がだいぶ元の大きさに近付いてきている僕は、人々の住む地域では目立つだろう。

 というか、絶対にバレる。少なくとも僕は生まれ変わってから一度も僕以外の()()に出会った事がない。もちろん完全に元のサイズではないから、ただの豹、魔獣使い(テイマー)に使役されている猛獣というポジションもあり得なくはない。

 しかし、まだ40年程度しか経っていない。僕の伝説を現役で知っている者もいるだろう。


「出来るよ。僕は魔法技術には自信あるから、身体を小さく変化させるのにもそれほど魔力は使わないし」




 僕達は約二千人のゴブリン、この海賊ゴブリン達のねぐらにいたゴブリン達を根絶やしにした。もちろん他の島にもゴブリン達はいる。だが、まあ半数以上は間違いなく殺しただろう。

 ヒカリのレベル上げとともに僕の魔力、生命力回復の為に、僕も魔力を使わずに止めを刺して廻った。半年かけて毎晩毎晩殺して廻った。島から逃げ出したゴブリンもいたが、最初の内だけだろう。港を押さえた上で、船を壊した上で、虐殺を続けたから。



 また新しい伝説を作った事になるだろう。相棒も違うわけだし、片や戦場の英雄、片や闇夜に殺戮を繰り返す殺人鬼――殺ゴブリン獣? ――こうも違うわけだが、黒い豹の姿はイケナイ。



 ちなみに人外である僕は生命力の大きさに合わせて、体つきが変わる。しかし、人間の場合、余り目立った身体の変化はない。


 ヒカリは相変わらず幼さを少し残した少女の姿だ。ただヒカリは溢れでる生命力をあまり隠す事はしない。闇夜で襲う時だけだ。わかる人にはすぐわかる恐ろしさ。周りを圧する事を優先しているのだろうか?



「また可愛らしい黒猫の姿でいくよ」


「いや、可愛らしくないからね」






 港町バトゥラには、半年振りになるわけだが、賑わいは凄いものだった。この港町の天敵がいなくなったのだから当然だろう。

 現状を把握する為に酒場に入ったが余り芳しくない。港町の酒場、普段から荒くれ者の多いトコだからこそ、喧嘩慣れした者の多い店だからこそ、ヒカリの存在感が他を黙らせてしまったのだ。


 隠せよ!



「マスター、今日は久しぶりに旅から戻ったんだ。なんか昔に比べて皆さん元気そうじゃない? 何かあったの? 」


 マスターは長い黒髪の、大きな黒い瞳を持つ少女に警戒しながら答える。


「海賊ゴブリンの王が倒されて、この港町が平和になったからですよ。まぁ、喧嘩は日常茶飯事ですけど」


 さすがにこんな場所の酒場で働いてるだけある。ヒカリの滲み出るプレッシャーを感じながらも、きちんと返事を返せている。


「へー、師匠も喜ぶだろうな、それは。あたしは流れの賞金稼ぎをしてるんだけど、亡くなった師匠と随分前にこの町に着たことあるの」


「そうなんですか……」


「つい先日、魔獣を一匹仕留めて結構お金が手に入ったんだ。今日はこの町の平和と、師匠との想い出を祝して、みんなの酒代は奢る事にするかな? 」



 圧倒的なオーラを隠さない美少女のする会話に聞き耳を立てていた客達は、ヒカリのそれほど大きくもない声に歓声を上げる。不安より、目の前の酒代無料の方が大きいのだ。言い知れぬ存在感からの不安など気のせいに違いない、なんせ俺達に酒を奢ってくれるのだから、と。


 それからの情報収集は簡単だった。


 とりあえず、この町の新しい領主は帝国の財政を司るような大物貴族様らしく、積み荷への取り調べは厳しいそうだが税金も少な目でその他の事には寛容らしい。評判は悪くない。

 そして、ゴブリン王が死んだのをみんなが知ったのは、ある日突然、町の広場に首と立て札が晒されたかららしい。何でもブラッドムーンから町の皆様への贈り物、と書かれていたらしい。

 むごたらしく傷つけられた、普通のゴブリンではあり得ない大きさの首、そしてそれ以降現れない海賊ゴブリンに間違いなくその首がゴブリン王のものとはっきりしたのだとか……。


 上手い使い方だね。


 さらに南の地域が安定した事から帝国が北へ侵略の手を伸ばしている事も知れた。

 北の騎馬民族を、豊富な戦力と戦争の天才でじわじわと追い立てているらしい。

 戦争の天才とは、マクシムス・プリームス・スッチーデント。スッチーデント公爵らしい。()()カラハタスの新しい領主様の事だ。

 そして多分、フィート男爵を調べる依頼を出した主でもあるだろう。

 悪い噂は聞かない。ここでも戦場での優秀さより領主様としての優秀さの方が有名で、そんな心優しい貴族様が、王弟様が戦争にも才能があるのは、()()初代皇帝の血を一番色濃く受け継いでいるからだと。



 その言葉を聞いた時に、僕の復讐リストのトップに立ったのは言うまでもない。引退して余生をゆっくり楽しむ初代皇帝に愛する者が奪われる悲しさを教えて上げなくてはならない。


 僕は地獄の魔獣と呼ばれたって構わない。









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