ユリカゴノウタ
「もう、やめて………。ごめんなさい」
頬は赤く腫れあがり、小さな傷がその上にいくつもある。
腹の上に視線をやれば、頬の傷以上に痛いだろう傷がガラスの破片にえぐられてできていた。
自分は近くを歩いていた女性をバットで殴って気絶させ連れ込んだが、髪に隠れているせいで体勢を変えなければ見れない事は大変、遺憾な事で、腹いせにガラスの灰皿で顔の横を何度も殴りつけ、ぱっくりと開いた傷口を耳に作ってやる。
「ごめんなさい」
何度も釘を使ってつけた爪痕のような傷を見せるようにして、腕で流す涙を見せないようにするが、一切の言葉も許した覚えがない自分は赤黒く染まったハンカチを女性の口の奥に突っ込み、容赦なく殴った。
女性の着る服を全部脱がしていなかったせいで異臭が酷いが、そんなことは今からすることをしてしまえばどうでもいい。
「おい、ケツ出しい。これぶちこんだるから」
自分は平ぺったいやすりを手にしながら女性に言うが、女性は尻を向けようとはしない。
「何でお前も俺を否定するんや!」
もはや意識は遠退いて反応が鈍いだけだが、それが解っていても怒りは込み上げ、やすりを無理矢理ぶちこんだ。すると大きな反応があり、ハンカチ越しでも悲鳴が聞こえてくるくらい痛がっている。
膝を立てていたせいか、流れてくる血が染み込んできた。
そう感じたとたんに何かの衝動に駆られ、机の上にあった注射器で彼女の血管にビールを注入してやろうと思った。しかし、そんな時にパトカーの音がいくつもわき、聞こえた瞬間、自分は完全に認められたと思った。