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機械と魔道具

 買ってきた。

 山小屋でお客さんとDIYと食事と言えば、バーベキュー。


 いつものように町に出て商品は趣味だと言い張る怪しいミリタリー屋さんで「ペイントボール下さい」と言ったらサバイバルゲームの弾が出された。

 銀行とかコンビニにある防犯用のヤツと言い直したら、ショーケースを指差して「中は何がいい?」と……。

 『一般用発光カラーボール』『熊も撃退! カプサイシンカラーボール』『二つの溶液で発光するボス用カラーボール』他にも『台所の敵G専用ボール』なんてのもある。

 たぶん売る場所を間違っている。

 カプサイシンとボス用を念のために買って、スーパーでお肉と野菜、サザエなどの貝類を適度に買い漁り作業小屋へと向かう。


「ただいまー。テーブルの上片付けてー」


「シュージ、道具の事で話がある。ちょっと付き合ってくれるか?」


ブランクさんが「顔を貸せ」と小屋の外へ引っ張っていった。


「あんた。違う理の世界に住んでいた人だろう? あそこにあった魔道具……、魔道具ではないかも知れんが、ほとんど回転による道具だった。切る事さえもわざわざ刃を回転させている。庭にあるタイヤのついたでっかい棺桶もあのまま走るんだろう?」


 すごい。この人凄すぎ。

 道具だけ。使い方だけで違う世界だと気が付いた。これが自分だったらどうだろう? この人たちが手品をした場合、魔法なのか手品なのか判断はつかない。ただ、ドラゴンとドワーフっぽい人を知っているからファンタジーだと判断できるのに。


「驚きました。こっちでは見えないものを見えるように理解しようとしています。そんな事よりも、なんとなくカナンさんが一番最初に気が付くと思っていたので、本当にびっくりしました」


「あいつはまず国の為、自分達の力を大きくする為に考えてからだ。ワシはあんたらが何を考えて道具を作ったのか考えてしまったのが気が付いた原因だろうな。原理は知らんが回転力を利用する世界なんだろ?」


 完全な正解とは言ってはいないが、ほとんどを認めた為にニヤリと自信のある笑みを浮かべている。

 さて、どこまで話すべきか。


「違う世界ってのはあってる……。あれ? おかしい。皆さん普通に来たよね? さっき麓の町に下りたけど、こっちのままだった。ちなみにそっちではここの周りってどうなっているの?」


「うん? あんただけがここに迷い込んだ訳じゃないのか? ここはエベロイ山脈の入り口だぞ。しばらく歩いても小さな川くらいで人も住んでいない。あんたの所は違うのか?」


「歩いて二時間で海に着く。どうなってるんだ? ここだけが重なったって事か?」


 町の様子は変わらなかった。電気も工具が使えるから通っている。水道は確認していないが、電気が大丈夫ならおそらく平気だろう。


「なるほど迷いの地か。ワシらの所では稀にある。ワシはドワーフに分類されるがな、大元となった種族が居たそうだ。そこと人間との間に生まれたのがドワーフ。噂だと大地の底に住んでいたらしい。今じゃそこに行く道は埋まってるかもしれん。森の精霊との子エルフと呼ばれるヤツもいるが、母と呼ばれるヤツが大元で迷いの地から出ていない」


 仮説になるが「おそらく出てこないのではなく、あんたのようにワシらの世界に出れないのかも」とつづけた。

 あー、ちょっといろいろ見たかったのに。


「おーい。暗くなる前に明かりを点けたいんだが、オレは使い方がわからんから、やってくれ」


「この先の判断はあんたしだいだ。好きにしな」








 豚バラの串焼きは炭火で食べる直前に塩コショウ。表面がカリカリになるまで焼いたのが最高です。

 フライパンだと熱い金属を当てる焼くと、直火で炙るように焼くは同じ焼くでも味も食感も違う。料理番組は炙り焼きと言う言葉を使って欲しい。


「うめっ! こんな所で貝を食えるとは思わなかった」


「枝豆と呼ぶのですか? これはこの地にしか栽培できないのですか?」


「(あんた馬鹿だろう! こんなん出されたら迷いの地だってそのうち気づかれるぞ!!)」


「(異世界だってわかっていましたが、海が近くにないなんて聞いてませんよ。何か無いんですか? 時間を止める魔法の袋に入れていたとか……)」


 うーんと唸ってはいたが教えてくれた。ある事にはあるが非常に少なく、エコバックみたいに入れていた袋の口から中身が見えていたし、匂いもした。いまさら誤魔化すのは無理があるとの事だ。今は食事に夢中だが、やがては気が付かれるだろうと……。

 ばらす以外道は無い。もうどうにでもなれー。


「明かりの事は聞いていましたが、このような御馳走が出るとは失礼ながら思いもよりませんでした。どうでしょう? これらの作物の一部でも我が国に―――」

「旨いもん食ってるんだから飯の不味くなる話は止めてくれ。ここまで案内するのにオレは義理を果した。これ以上迷惑をかけるな」


「アルが正しいとワシは思うぞ。このままだとワシらは招かれざる客で二度と力を貸してくれんかも知れんぞ? ここにある道具だけでもワシらにとっては宝の山なのだ」


 話の流れを変えてくれたのだろうか? ついでだから乗っておこう。


「興味本心で聞くんですが、そちらにある身近な道具ってどういうのですか?」


 相手は国の技術顧問。すべては言えないだろうが知っておきたい。


「あんたが使っているような動き続けるってのは少ないな。なあ、アルベルト。おまえさんが持っているヤツ見せてくれないか?」


「あ゛ー。汚さないでくれよな。オレの剣は耐久上昇の魔法武器。それと結界ぐらいだな」


 食べる事に集中したいのか、かなり不満気だったが大雑把に説明してくれた。

 予想はしていたが、魔力を使って刃が欠けないようにする。魔力を使って生物を退ける。

 道具と言えば工具を思いつくが、こういった魔法武器や魔道具の事を指すらしい。


 電気よりも使い勝手がいい。使ったら減るが自然に回復するとの事。まるで放流したらやがて雨になって戻ってくるダムのようなもの。しかも公害の無いクリーンエネルギー。

 問題は、魔力の消費量。そしてより強い魔力に消されてしまうので干渉を防ぐ事。この二つに解決に力を入れたために、構造が単純化したらしい。

 魔法と言えばかっこいいが、物理的な呪い? 現象への呪いでもいいのだろうか?

 まあ、魔力と強化技術があればダイヤモンドを研磨するのに鉄のヤスリで削れるのだから当たり前かもしれない。


「結界って、虫除けとかにも使えるの?」


「基本使えんぞ。この小屋くらいの大きさで、透明な盾で覆う感じだ。熊に襲われても平気だが、初めから中にいたら意味が無い。強度を変えればずっと使えるだろうが、役にたたんだろう」


 ねずみ避けになるくらいか。いや、そしたら家に入れないか。


「雨宿りくらいか……」


「それは無理だ。生物とか魔法みたいに魔力を持ってるやつのみだよ。盾って言うよりネットみたいなもんだよ。魔力の大きいヤツは通らないけど破れる事があるし、無いやつは通れる。小さくして集めれば弓矢だって防げるぜ。そんな事よりも後で肉持ってくるから焼いてくれよ。このソース癖になる」


黄金率のタレだからな。


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