一方その頃
シュージ殿が材料を狩ってくると出かけた後、ブランク殿は魔道具漁りをし始めた。
「どこへ行くんだ? カナン。ここはシュージの庭だぞ。下手に動いて迷子にならないほうがいい」
アルベルト殿が私を信用していないのは知っている。
荷台を返しに行くのを引き止めたからだ。
彼ら一行が城から出たがっていたが、他の者たちは夜会などで引き留めた。いわゆる人質にしている。
「道なりに歩くだけですよ。軍人ですので周囲の状況を確認するのが癖みたいなものです」
切り開かれた道をつかいシュージ殿の後をつける。
大体ここは怪しすぎる。
魔物どころか大型の獣の姿も見えないのは、歩いて半日の所にドラゴンがいたから納得できる。だが、そんなところに人が住むだろうか?
作業場と呼んでいたが雨風もしのげる建物の他に、風変わりな屋敷もある。作業場の方が若干新しいという事は屋敷兼研究室か、資料を纏めてあるのだろう。その建物の壁に跳ね返った泥を見ても、ここが確認された十五日前よりも古い。
年は四十と言ってはいたが、見た目は若い。だが、長寿種によくある精霊の気配がない。担がれたかというと、ブランク殿並みの知識を持ってる。
専門も解からない。魔道具を使いこなしてはいるが、どうやらそれが専門でも無いようだ。
大体、ドラゴンの舌を料理する考えなんて思いもつかない。城で出された肉体強化用のほんの少しのドラゴン肉だけでも効果があったのに、薄切りを数枚食べただけでも魔力が体を駆け巡り、体が強化されている。
それにこの道。荷台を運ぶにはしっかりと馴らされて動かしやすかったが、轍が荷台よりも幅広い。土地を削って平らにならしたのならば、かなりの土が出るはずなのに建物の周りに放棄されていなかった。それを考えるともっと大きな荷台もありえる。
山を下る彼の者はいったい何を隠しているのだろうか?
しばらく歩き、もうすぐ麓に着く所で見失ってしまった。
平地に近づき彼の者と距離をとったのが間違えだったのか? だが、この先には迷うほど深くは無い林。探すには容易いが見つかる可能性も高い。情報部の私の目から逃れるのは難しいと思っていたのに……。
もしかしたらこの土地は精霊の加護があり、私では見分けがつかないくらい巧妙に気配を隠されているのではないだろうか? そうなると、シュージ殿が二十代の容姿なのは未確認の長寿種の可能性も出てくる。
分からない。解からない。情報が足りない。情報を判断する断定的な材料が少なすぎる。彼の者の欲しい物が解からない。報酬は渡すが金品が良いのか、彼が集めているような魔道具が良いのか? それにあの魔道具だって我が国には無い。
不気味すぎる男に思考の渦に巻き込まれただけだった。
読んで下さってありがとうございます。
今日はここまでで、後は不定期で投稿します。