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遊びは技術を進化させる?

「そういえば、シュー君って働いてないの?」


 その一言に「うわっ」っと男達が顔をしかめるが、修二はあまり気にしていない。


「昔事故にあってね。それの補償とかでとかで、結構なお金が入っちゃったんだよ。そしたら、回りがね……。そういう事であまり突っ込まないでくれると助かる」


 嫉妬ほど感染力の高い感情はない。一人で立ち向かって負けた結果が今の修二である。


「お金は一人で一生を生きていくには……ちょっと足りないかな? で、人が増えたのが予想外で小遣い稼ぎをしようとね。日本では何とかなりそうだけどそっちのお金も稼がないとね」


 タリスマンはいきなり売れないだろう。だが、こちらも会社に勤めていた。嫌いになった奴らも沢山いるが、お世話になったり庇ってくれた人もいる。劣化版の試作品ができ次第その人たちに送る予定だ。


「んにゃ? 貰ったやつの半分もあれば足りるでしょ? こっちで半分。そっちで半分使えばシュー君の老後は安泰でしょ?」


「だと思うだろ? だけど、シュージは自分で何でもやる変わり者だ。オレ達の方の魔法も使いたいからお金が必要なんだとよ。それで、何をやる? できれば、食い物とかこっちで売ってほしいんだけどな」


「いくつはいいけど、塩を輸入してくれ。とかはダメだよ。儲かるんだろうけど、俺が死んだら次にここに住む人が来るまで手に入れられないでしょ」


 大災害で塩が手に入らない。そんな事が起きたらもちろん手助けはするけど、普段からそんな事やっていたら自分の時間が作れない。

 他にも、足りなくなったら大量に買うと田舎だから変な噂が立つし、ネットだと履歴が残る。近くで犯罪が起きたら一度は事情聴取されるかも? そんなことを考えたらそんな事はやりたくない。


 もちろん。親しい人には譲るだろうけど……。そこら辺は公明正大な聖人じゃないので仕方が無い。


「それで、とりあえず娯楽用を作ったんだけど、これ流行るかな?」


 小さい板に車輪。それに、前に考えたジェット装置を取り付けただけ。

 一作目に車で過去に跳び、二作目で未来に。三作目でまた過去に戻り歴史を変えたアメリカの映画。その二作目に出ていたホバー・ボードを真似て作った。

 車輪はスピードに乗る前と止まるときがメインで、実際は地面効果翼機に仕組みは似せたもの。


 前に進む推進力だけでなく、斜めに上昇するようジェット装置を使っている。

 コンパクトで人が乗っても平気なのは今の技術力では魔法を使わなければ、おそらく完成できない一品だ。


 魔道具自体は方向性のある風と火のみ。

 シンプルだから、骨格にブランクさんが魔力を流れやすくするように金属結晶を揃えて作り上げた。機械式の装置が必要ないからできた小さく軽い。


 加工はブランクの技術に、魔法陣はフォルが設計し、利用方法は現代科学。

 この三人が集まらないと出来ない遊び道具である。


「氷の上を滑るように飛ぶって感じかな? 曲がるときは体重移動で出来る。燃料は魔石? 魔石核? まっ、どっちでもいいか。とにかくソレと本人の魔力も使えるようにしてある。体重があると浮きにくいけど、魔力を多めに使えばたぶん浮くよ」


 魔力を多く込めれば空を駆ける。飛ぶのではなく駆ける。元が飛ぶようにできていない。トビウオだって水面を滑空しているのだから同じ原理のこれが出力を上げすぎると、ロケットと同じでどこかへ行ってしまう。安全装置なんて軟弱なものある訳がない。せいぜい熱で変形して止まるくらいなものだろう。


「なんだ。飛ばないのかー。わたしちょっと期待したのになー。ハーピーみたいに自由に飛んでみたかった」


 チラチラと修二を見ているが、急加速・急停止・ホバリングができる技術は無い。

 あるとしたら漫画やアニメだけで、出力や重さなどの問題になり……。


「なんかヤバいの作っちゃった気がするけどそれは横に置いといて、そっちにはスピードを競うレースとか無いの?」


「お師匠様の考えているようなレースはないですよ。ブランク様は同じ条件・同じ素材で競い合う事はありますか?」


 修二の家で彼の考え方や発想を知ろうと次々に質問し、ジェット装置に関わる事を調べていたフォルはゼロヨンと呼ばれるドラックレースの存在も知っていた。

 上限という制約のある中での競技。フォルは似たようなものを知っているが、ほとんどレギュレーションが決まっていない。

 魔法の技術ならエルフ。身体能力なら獣人。力なら巨人族が有利でありそれが当たり前だから、元から競い合う事がない。


「国に抱え込まれる前までは、どっかの貴族が私兵の鎧を納めるのにどちらを採用するか? ってのをやっていたが、それぐらいだろうな。大体いいものを作るのにくだらない条件を作るのがおかしいだろうが」


「いえ、そうでもありません。速さを競うのではなく省エネルギーレースがあって上限があるからこそ、技術を高められる。そして、その技術を利用すれば、魔道具などは長時間使えることになります」


 日本で排ガス規制ができた当初、技術者達は頭を抱えていた。だが、F1に参加していた一部の技術者は、燃料を多く消費させてスピードを出す方法を研究していたのだから、逆のことをすれば排ガスが少なくなると思い付いた。そのことに気が付いた企業は当然世界進出に成功したのである。

 

 フォルたちがいる世界は、緊急時の連絡で命にかかわる事があるから、速さを競うならスピードのみを優先する。 

 馬などの生物は生きるだけで沢山の手間と食糧がかかるが、この魔道具が発達したら寒村などでも情報のやり取りができる。


 フォルはそう考えていたが、修二のきっかけはそこまで大したことはなかった。

 作ってみたら出来た。パーツを追加すればもっと面白いことになるんじゃないか? 魔法は専門外だから、たたき台さえ作ってしまえばあとはどうにでもなる。玩具として売って、レースを始めれば男だったら夢中になるはずだ。


 実際はそんな軽い考えだったが、フォルが質問してきて、昔の逸話を話しているうちに建前ができてしまったのだ。所謂後付設定である。


「消費魔力って言い方でいいのかな? とりあえずそれは魔石のみで、操縦者の魔力は使わない。新たにジェット装置を開発するのはOKだけど規定数以上つけてはいけない。レースで使う魔石は主催者が複数用意したヤツを利用。主催者は同等の魔石を用意する事。こんなもんかな?」


「あのなぁ。レース自体見たことないから断言はできないが、魔石揃えるのだって結構大変なんだぞ。魔石を持った魔物が生まれて、そいつを中心に群ができる。前に渡した結界だって、それなりにしたんだぞ」


 地面効果翼機に使っている魔石はブランクが飛行魔法の代わりに使うだろうと準備していた私物で、本人は予定外のことのほうが楽しくて気にしていない。


「開催すれば盛り上がると思うよ? たぶん。初めのうちは町をコースにすればいいし、使うものが同じでも乗る人の技術でスピードが違うよ。それに、誰でも乗れるけど、同じことは出来ないって燃えるだろ?」


 乗って進む。ただそれだけの装置だから、極端な話子供でも出来る。操縦や乗りこなすには慣れと技術。あとは本体を自分用にカスタマイズするしかない。


 男にとって、これほど燃えるものはないだろう?




見捨てず読んでくださっている方に感謝。

たぶんこの時点でレースには穴があると思いますが、気にしないでください。

書いている本人も修二も対処方法しかできません。

細かいことは、その時にならないと思い付きませんので……。

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