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プロローグ

「勇者アルベルトよ! よくぞドラゴンを倒し、民を救ってくれただけでなく、その貴重な素材を持ち帰ってくれた。この国を代表して礼を言う」


 古いだけが取り柄の貧乏暇なし三男貴族が家を出て、剣と仲間を頼りに十五年。何の因果か母国に住むドラゴンを倒し、金の為に持ち帰ったら血筋を調べ上げられて勇者扱い。どうせこの後美談を作られるだろうが、身内の安全を考えれば芝居に乗っかったほうがいいからと王宮へ。



「いいえ陛下。我らに理があったように、ドラゴンにもありました。ただ、相容れぬ理だった為、お互いに納得した上で武勇をもって決しただけの事。ドラゴンの素材は民の力になりましょう。有効に使っていただければ幸いです」


 仲間に優劣はないが出自だけは確かなオレが打ち合わせ通りに答えて、王国貴族の自尊心を保つ。


「うむ。兵を守る鎧や武具。町を守る結界を強化するのに最適と宮廷魔術師は言っている。お主の願いは必ずやワシの名の下に約束しよう」


 提示額は納得済みだし、買取は国が一括でやってくれるらしく詐欺にあう事も欲しい人を探し歩く事もないだろう。欲しい部分はそれぞれ確保したし。


「これだけ物を献上しながら何も返さないのはワシの器に疑問を持つ者も出るであろう。無条件とは言わぬがお主に褒美を与えたい。すぐは思いつかぬだろうからこの後大臣にでも願いを言うがよかろう。大儀であった」


 頭を下げて「ハッ。ありがたき幸せ」と答えると、視界の片隅でマントを翻してホールから出て行く。


「勇者アルベルトとその仲間達よ。陛下の願いでもある。部屋を用意してあるので、そこで相談するのがよいだろう」


 ここまでが台本通り。別に不満があるわけでもないので話に乗っかり部屋へと移動した。





「アルベルト殿。この荷台を作った方を紹介していただきたい!」


 陛下の他にドワーフも、この場合はドワーフの他に陛下が正しいだろう。下から襲い掛かってくる筋肉の塊って結構怖いもんだぜ。

 まあ、予想はしていたけどこんなに遅かったか。


「あれは売ってはくれないぞ。あまり関わりたくはないらしいが、今回は薬の材料を運ぶから貸してくれって言って借りれたんだ。服から考え方までまったく違う」


 頭は良さそうだが危機感が足りない。状況は読めるが判断が遅い。正しい性根を持っているが甘い。あんな場所でどうして生きてこれたのか不思議だが、たぶん幸せそうに生きている。


「賢者というのは変わっている者が多いものだ。そうなると金品などでは動かん可能性が高いか。厄介だな」


 賢者ではない。あれは趣味で生きている人だ。なにが面白いんだか、『でぃーあいわい』ってのを楽しんでいたしな。




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