第2章 彼女が欲しいですか?
今夜のネタはDT・・・じゃなくて、結婚とか恋愛方向に進みそうだった。
正直、俺にとっては苦手な方向である。
俺はなるべく進行役に徹して、リスナーさん同士の盛り上がりを見守ろうと思ってた。
【そんなに男ってのは彼女欲しいもんかね?@ふぅ】
【そ、それは欲しいでゴザルよ!!@The Wall】
【彼女より幼女が欲しい@コン太】
【お前は帰ってAV見てろ>コン太@スイスの熊】
【みんな彼女いないんですね!うちの大学はクラスの男子、8割くらい彼女いますよ!@パンク姫】
【結局セッ●スしたいだけだろ?@ふぅ】
【うん@山菜】
【山菜殿!そんな見も蓋もない・・・@The Wall】
【幼女とセッ●ス!!幼女とセッ●ス!!@コン太】
【もう氏ね>コン太@スイスの熊】
【セッ●スって何ですか?@豪腕先輩】
【yaccyさんも彼女欲しいんすか?@向日葵】
さすがにそろそろ話題の転換を・・・なんて思ってた時だったから、一瞬理解するのに時間が掛かった。
yaccyってのは俺のアカウント名だ。
「うーん・・・まぁ、ね・・・」
俺が年齢=彼女いない暦だってのは常連さんは知ってる。
最初は隠してたが『隠す=そういう事だろ』って流れであっさりバレた。
【まぁ、ね・・・って偉そうだなwwwwはっきり言え!!@ふぅ】
【幼女は良いぞ!@コン太】
【yaccyさんも変態だったんですね!!@パンク姫】
【マジで・・・でゴザルか?@The Wall】
「えーっと・・・・・・マジで・・・欲しいです」
言いながら何故か顔が熱くなるのが分かった。
何でこれしきの事が恥ずかしいんだろう・・・
【yaccyかっけぇ@山菜】
【おぉ!はっきり言ったなwww@ふぅ】
【それがし、一肌脱ぐでゴザル!@The Wall】
【自分、本気で応援しますよ!@向日葵】
【よし!今から作戦会議するぞ!!@コン太】
【お前らDTが集まった所で戦力にならねーよ@スイスの熊】
「えっ!なに?そうゆう展開なの?」
【yaccyのスペック晒せ!こまけーやつ!@コン太】
【チ●コのスペックもなwwww@ふぅ】
【yaccy殿は30センチでゴザルよwww@The Wall】
【気になる子とかいないんすか?@向日葵】
【30センチ!?俺、ちょっと計ってきます・・・orz@山菜】
【30センチって大きいんですか!?小さいんですか!?@パンク姫】
思わぬ方向に進む話題に俺は焦ったが、もはや手遅れらしい。
リスナーさんのテンションは上がりまくっている。
なんか俺は大変な扉を開けてしまったらしい・・・
【yaccy殿のスペック知りたいでゴザル!@The Wall】
【なるべく細かいスペックな!@コン太】
【あと好きなタイプとか@向日葵】
【分かってるだろうが二次元の嫁じゃねーぞwww@スイスの熊】
【気になる子とかいないんですか?いないんですか?いないんですか?@パンク姫】
次々とリスナーさんから要望が出てくる。
「ちょっと待ってくれよ!!1つずつ行くから・・・」
えっと・・・取りあえずスペックはどのくらいまで晒せば良いんだろう?
リスナーさんの大部分は良い人で、好意的に聞いてくれてるとは思う。
けど、ここはあくまでネットの世界。
その辺りは慎重にならなきゃいけないし・・・
【スペックは年齢・職業(年収?)・学歴・身長・体重・家や車の有る無しくらいで@コン太】
うーん・・・ 学歴は学校名を出すのは気が引けるが、それ以外なら良いかな・・・
「年齢は三十歳。職業はSE。年収は450万くらい。大卒。身長は170・・・で体重は56キロ。一人暮らしで、免許は有るけど車は無い。」
【ほーぉ・・・@コン太】
【これは勝ち組ではゴザらぬか!?@The Wall】
【もっと酷いの出てくるかと思ったが・・・@ふぅ】
【よし!身長1センチ勝ったw@山菜】
「最近気になる子は・・・」
【おぉ!気になる子いるのか!なら話は早いぞ!!@コン太】
「えーっと・・・綾瀬はるか・・・とか良いと思うけど・・・」
【そーゆーの聞いてない!@ふぅ】
【芸能人じゃなくて身の回りで!って事だ!!@コン太】
【同僚とか友達とか・・・そーゆーのだよ!@ふぅ】
「身の回り・・・かぁ~ うーん・・・」
【いねーのかよ!@ふぅ】
【コレは手強い!!!wwwww@コン太】
【お前らDTなんて似たり寄ったりだろーが@スイスの熊】
【オカズは二次元でゴザルか・・・w@The Wall】
【オカズってなんですか?@豪腕先輩】
【むしろオカズは何ですか?何ですか!?@パンク姫】
【しかしコレで年齢=彼女いない暦とは・・・@コン太】
【それがし一生出来ない気がしてきたでゴザル!!!@The Wall】
【まぁ、他に問題があるって事か・・・@ふぅ】
【放送を聴く限り、性格も難があるようには思えないっすけどね@向日葵】
【顔と服 あとは好きな子を前にした時のトークスキルだろJK@スイスの熊】
【やはり男は顔・・・でゴザルか?@The Wall】
【服なんて着れりゃ何でも良いんだよ!!@コン太】
【見た目が全てじゃないが、取っ掛かりとしては重要@ふぅ】
【でもyaccy殿だってアレだけ収入があれば服などは・・・@The Wall】
【見てみりゃ分かる 晒せ@スイスの熊】
正直な事を言うと、リスナーさんたちの予想は当たっていた。
俺は髪型も服装も、好きな子を前にしたトークスキルにも自信がない。
髪は近所の千円カットの店。
美容院なんて行った事無いし、髪形の名前なんてよく分からん。
服はユ●クロやジー●ズメイトで精一杯。
服の良し悪しなんて分からないし、店に入るなり話し掛けて来る店員ってのが苦手だ。
そもそも髪や服に金を使う必要なんて無い・・・そう思ってる。
トークも女の子が喜びそうなネタなんて無いし、そもそも緊張して話し掛けれない。
でも・・・結局、俺の問題はソコなのか・・・
俺は長いため息を吐いた。
「あ、あのさ・・・」
【ん?@コン太】
【どうした?@ふぅ】
「やっぱさ、良いよ・・・彼女欲しいけどさ、今じゃなくてもさ。」
【どーゆーこと?@山菜】
【yaccy殿!それがし騒ぎすぎてしまったでござるか!?@The Wall】
「盛り上がってる所、申し訳ないけど。俺、いまは良いや。そのうち出来るだろうし・・・」
【さようでゴザルか・・・@The Wall】
【仕方ないな・・・@山菜】
コメントが収束していく。
リスナーさんには申し訳ないことしたな。
でも、見た目もダメでトークスキルもダメ、そんな俺に彼女が出来るわけないじゃないか・・・
【そのうち出来るとか思ってる間は出来ねーよ@スイスの熊】
【大方、顔も服もトークスキルもヘタレで落ち込んでるんだろうが、誰がそんなお前と付き合うかよ@スイスの熊】
【そうやって改善する事から逃げてるから出来ねーんだろが?@スイスの熊】
【一生DTやってろ!@スイスの熊】
【ちょ、ちょっと言い過ぎっすよ・・・>スイスの熊さん@向日葵】
【知るか そんなヘタレ野郎@スイスの熊】
【そんな・・・@向日葵】
いつも一言でバッサリ俺やリスナーさんを切り捨てていく『スイスの熊』さん。
そんなリスナーの初めて見る、長く繋がったコメント・・・
キツイなぁ~・・・
【でもさ!逆にソコを改善すりゃ、彼女出来る可能性は高いんじゃね?@コン太】
【おぉぉ!!!!!!@ふぅ】
【確かにっ!!@山菜】
【コン太殿、イイコト言ったでゴザル!!!@The Wall】
「いや、そうは言うけど・・・」
【yaccy!いい加減、腹くくれよ!!@ふぅ】
【今なら俺たち全力で支援する!!男に二言はねぇ!!@コン太】
【そうだよ!ここに居る人はみんな本気だぜ!!@山菜】
【yaccy殿には・・・それがしのようになって欲しくないのでゴザル!四十を過ぎて・・・独り身は・・・@The Wall】
【恋っていいですよ!キラキラですよ!もうキラキラしまくりですよ!@パンク姫】
【もし見た目で彼女が出来ないなら・・・それ以上の損は無いじゃないですか!!@向日葵】
あぁ・・・俺のリスナーさんは、みんな暖かい人だなぁ~
自然とそんな風に思った。
退屈を埋めるために始めた放送で、こんなに俺のこと考えてくれる人たちに出会えたのか・・・
じゃあ・・・俺も皆を信頼してみようかなぁ
モニターを流れていくコメントを見て、俺は腹を決めた。
缶に残ってた残り少ない発泡酒を一気にあおる。
「分かった。もう隠さない。宜しくお願いします。」




