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わすれんぼうのサンタさん

作者: yamayuri

いそがしいクリスマスが終わって、新しい年も明けて、サンタさんはほっとひといき。

のんびりのんびりお部屋の片付けなどしていました。

するとプレゼントの間から、ちいさな紙が落ちました。


―― サンタさんへ

『おりづる』のおりかたをおしえてください。 まこ ――


サンタさんはあせりました。クリスマスプレゼントをわすれてしまったことなど

これまでに一度だってありません。


「大変じゃ。この子はどんなに悲しんだことだろう。

 今からでもとどけてあげなくてはな」


サンタさんはあわててプレゼントにする本がならんだ本だなに行くと「おりがみのおり方」の本をさがしました。

サンタさんの本だなには世界中の言葉で書かれた本が並んでいます。その中の日本語で書かれた「おりがみ」という本を探し当てました。


のんびり草や木の芽をはんでいたトナカイに言います。


「すまないね。わしとしたことがたのまれたプレゼントを届けるのをわすれてしまったのじゃ。せっかく今年のクリスマスまでのんびりできるところだったのに悪いが、一回だけ飛んでくれないか。もうこれからはこんなことがないように気をつけるから」


トナカイたちは、はじめぶるぶると鼻をならして不満そうにしていましたが、すっかり弱っているサンタさんを見て一度だけ飛んであげることにしました。

行き先は地球のうらの日本です。


夜になって、「おりがみ」の本を持ったサンタさんのそりをひっぱって、トナカイたちは飛び立ちました。クリスマスイブとちがって、まちはどこも静かです。


トナカイたちは手紙のにおいをたよりに、まこちゃんの家にまっすぐに飛んでいきました。


夜中、ぐっすり眠ったまこちゃんのまくらもとに、サンタさんは「おりがみ」の本と新しいおりがみをおきました。そのまますぐに帰ろうとおもっていたサンタさんは、ねているまこちゃんのすがたを見て考えました。


「こんな小さい子がおりづるなんておれるのかな?」

まこちゃんのちいさなちいさな手では、まだうまくおりがみがおれそうにありません。

サンタさんはまこちゃんの家から出てくるとトナカイたちに言いました。


「わるいが、わしはここに残ってようすを見ようとおもうのじゃ。三日後にまたむかえにきておくれ」


トナカイたちはまたぶるぶると鼻をならしましたが、帰ったらとびきりおいしい木いちごがなっている林につれていってあげるからとサンタさんに言われて、しかたなくうなずきました。



残ったサンタさんは、まこちゃんの住んでいる家の屋根うらで夜をすごしました。


次の日、ようちえんに行っていたまこちゃんは、おばさんにつれられて帰ってきました。

おばさんはまこちゃんを家に残すと、またお仕事に行ってしまいました。ひとりになったまこちゃんはさっそくおりがみの本をひろげてみました。

サンタさんの心配したとおり、おりがみと「おりがみ」の本を前にしてまこちゃんは考えこんでしまいました。

サンタさんはそっと家の中に入ってまこちゃんのところに行きました。

サンタさんはどんなところでもすりぬけることができるのです。


「あ、サンタさん」


目の前に本物のサンタさんがやってきて、まこちゃんはびっくりです。


「まこちゃん、クリスマスに間に合わなくてごめんね。おりづるのおり方をおしえてくださいと手紙にあったから、おわびにわしもいっしょにおってあげよう」


まこちゃんは大よろこびです。


さっそく、まこちゃんのとなりにすわったサンタさんは、ポケットから老眼鏡を取り出してかけると、本を見ながらおりがみをおりはじめました。

ところがこれまでいちどもおりがみなどおったことのないサンタさんは、本を見てもなかなかうまくおれません。これでは、まこちゃんが困ってしまうのは当然だとおもいました。


なんどもなんども失敗して、サンタさんはようやくおりづるのおりかたを覚えました。サンタさんは得意になって、今度はまこちゃんに教えてあげました。

サンタさんにやさしく教えてもらって、まこちゃんもおりづるがおれるようになりました。


すると、まこちゃんがいいました。


「これを1000こおったら、入院しているおかあさんが帰ってくるんだよ」


サンタさんはびっくり。やっとのことで3こできあがったというのに、1000こなんて気が遠くなりそうです。でもきっと、クリスマスにまこちゃんのねがいをきいてあげられなかったから、まこちゃんのおかあさんは長く入院することになってしまったのかもしれません。


トナカイたちがむかえにくるのは3日後です。それまで、できるかぎりおりづるをおってあげようとサンタさんはおもいました。

それから、まこちゃんのおばさんがお仕事から帰ってくるまでに50こ、屋根うらにおりがみをもっていって、ひとばんで100こ、つぎの日まこちゃんがようちえんから帰ってくるまでに100こ。


あんまりむちゅうになって、もうぶあついコートなど着ていられません。目もしばしばしてきたので、めがねをかけないほうがいいかもしれません。

長いかみの毛もじゃまです。かみの毛をリボンでひとつにしばってがんばります。


まこちゃんがようちえんから帰ってくると、今度はふたりでおります。

サンタさんが200こ、まこちゃんが10こ。


その夜は150こ、まこちゃんがようちえんに行っているあいだに150こ、

まこちゃんといっしょに200こ、まこちゃんが10こ。


ぜんぶで973このおりづるができました。


けれどその日は、夜になったらトナカイたちがむかえにきてしまいます。

まこちゃんは、1000このおりづるを糸でつるしてつなげなくてはいけないといいます。


おばさんが帰ってくる時間まで、あとすこし。

まこちゃんとサンタさんはひとことも話さずに、あせをかきながら、おりづるをおりつづけました。


サンタさんが20こ、まこちゃんが6こ……。


あと1こというところで、げんかんで「ただいま」という声がしました。


サンタさんはできあがったおりづるの入ったふくろと、のこったおりがみを持って立ち上がると、言いました。


「まこちゃん、あとひとつのおりづるをおってつなげたら、おかあさんのところへ届けてあげるからね」


そう言って、あわててまどからとび出していこうとしました。

そのときまこちゃんは、いちまいのおりがみのうらに、何かを書いてサンタさんにわたしました。


トナカイたちがむかえに来たとき、サンタさんは屋根の上で、1000このおりづるをつなげ終わったところでした。

トナカイたちのすがたを見たサンタさんは、


「すまんが、もうひとつ手伝いをしておくれ」


とたのみました。

トナカイたちはぶるぶるぶると鼻をふるわせましたが、おいしいきのこのある森にもつれて行ってあげるからと言われて、しかたなくもうひとつのお仕事を引き受けることにしました。


病院の窓の向こうにそびえる大きなもみの木の上で、そりから降りたサンタさんは、まこちゃんのお母さんの病室を探しました。

辺りはうす暗くなって、病室の窓の明かりが外にもれてかがやいています。しかし、看護師さんが順々に窓のカーテンを閉めているので、サンタさんはあわてました。

そのとき、いちばん左のはしの部屋に、外をながめている女の人のすがたを見つけました。目や顔の形がまこちゃんにそっくりです。

しかし、すぐに女の人の部屋もカーテンが閉められてしまいました。


夜になって、サンタさんはトナカイたちに、左はしの部屋にそりを近づけてもらうようにたのみました。そしてそっとかべをすりぬけて病室に入りました。

女の人はすっかり眠っていましたが、ベッドの上の名札を見ると、まこちゃんがようちえんから帰ってきたときに付けている名札と同じ名前がありました。

サンタさんは、それがまこちゃんのお母さんだとたしかめて、1000羽のおりづると、まこちゃんの手紙をまくらもとに置きました。


――  おかあさん はやく げんきになってね。 まこ ――




 その年、サンタさんは春が過ぎても大いそがし。

 だって約束のとおり、トナカイたちを木いちごがたくさんなっている林や、おいしいきのこのある森につれて行ってあげなくてはならなかったのですから。

 それでもサンタさんは疲れたとは思わずに、なんだかとってもうれしい気持ちでした。



 つぎのクリスマスが近づいてきました。

 今度はひとつも見のがしてはいけないと、サンタさんは注意深く手紙を読んでいきました。

 最後に手に取ったのは、まこちゃんの手紙でした。


―― サンタさんへ

 おかあさんをげんきにしてくれてありがとう。

 クリスマスじゃなくてもいいから、またいっしょにおりがみをおってください。 まこ ――


 サンタさんは、クリスマイブのお仕事を終えたら、ゆっくり旅行のしたくをしようと考えました。

 トナカイたちに、木いちごやきのこより、もっとおいしい木の実のなる森をさがしておくのもわすれないようにして。



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― 新着の感想 ―
[一言] クリスマスはこういうほんわかできるお話が似合います。 子供の笑顔は大人も笑顔にしてくれますもの。
[一言] 初コメ失礼します。 まこちゃんがいい子すぎて可愛いです。寒い季節なのにほっこり暖かくなる物語でした。
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