少女の旅路と優男の思惑13
お待たせしました
忠治の刀が完成した、と現物を持って刀匠が城に訪れていた。
「この刀は?」
「へい、御注文のとおり、長柄にも二刀にもなるように、こしらえさせていただきやした」
ちょうど柄と柄がくっついたり離れたりするようにできていた。
「ありがたいのはありがたいが俺に使えるかな?」
「あぁ大丈夫だと思うぞ、基本二刀で使ってればな、とりあえず説明うけてこいよ忠治、オイラたちは九州に行くにあたっての荷造りしてるからさ」
刀が届いたのが、徳島に鯉太郎が戻ってちょうど、二ヶ月が過ぎた年末になる少し前であった。
そのころ、江戸では。
「父様…父様、もうやめてください、龍を恨むのも、兄様を探すのも…母様も言っておられました!父様は考えすぎだって…」
家光の弟であり、妹であり、妾の忠長が父に説教をしていた、余談ではあるが家光が女に対して、無関心と言われていた理由が、この忠長との壊れた関係のせいであったとは知る者はいない。
「国松や、お前は母を恨まぬのか?そのような体で生まれ落ち…寿命ですらも少ないそのような体を」
秀忠は忠長を諭すような目で話をしていた。
「恨みませぬ…松は、松は!兄様に巡り会えたのを運命と思うておりますゆえ…たとえこのような体とはいえ、持って三年の命とはいえ…松は父も母も恨みませぬ!父様が異常なのです!なぜ母様…江姫を恨みますか!?好いておられなかったのですか!?お願いです父様…松は、松は…兄様を好いているのです、もうやめてください!」
だが悲痛な叫びもこの父には届かなかった。
「そうか、そうか、そうか…国松よ、そこまで竹千代の肩をもつか…もうよい!誰か!誰か!四天王を呼べ!これより竹千代の捜索をこの私、自ら始める…なぜ二ヶ月もかかっておるのかは黙っておく…わかったな!」
こうして二代将軍、秀忠の御乱心が始まった…だが後世の歴史書にこれがのることはなかったのであった。
よろしくお願いします<(_ _)>