少女の旅路と優男の思惑10
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龍之介が備前についたころ、鯉太郎たちも徳島についていた。
「帰ってきた…んだな」
何か気まずそうに面をつける鯉太郎。
「ん?どうしたんで?鯉太郎さんよ」
忠治が心配して声をかけていた。
「いや…なにかとつてつもないことが、起きようとしている気がして」
この予感が悪寒に変わるまで時間はかからなかった。
「鯉太郎、探したよ?竹千代ちゃんとか帰ってきてるで」
楓がなぜか迎えにきていた。
「オイラは鯉太郎なんかじゃないよお嬢さん…狐次郎ってんだ」
見苦しい言い訳である。
「ふ~ん…」
沈黙が場を支配した。
「鯉太郎さんよ…諦めたらどうでい」
忠治の一言により。
「くそ…仕方ないか、でなんで竹の字が帰ってきてんだ?あいつ今は江戸のはずだろ?」
沈黙は質問へと姿を変えた。
「さぁ…うちは知らんで、それよりも、お帰り鯉太郎」
ニコっと笑顔で迎える楓にたいして。
「あぁただいま…楓」
優男らしく、なんでもないよ…と言いたげな風体で楓に返していた。
「あ、そうだ…楓、鍛冶屋のおっちゃんに刀を一振り作ってくれって言っといてくれないか?」
そして徳島によった用事の一つを片付けに入っていた。
「えぇけど鯉太郎、刀や使いよったっけ ?」
今まで鯉太郎がなにか武具を持っている姿を見たことなかった楓が、疑問をぶつけた。
「いや、こいつだよ」
と忠治に親指をむける。
「ど、どうも」
そしてここでも
「あんた誰や!?」
空気の忠治であった。
「国定村の忠治と申しやす、鯉太郎さんの護衛やらさせてもらってまさぁ」
そして楓が一言余計なことを言ってしまった。
「鯉太郎の友達やな?いつもお世話になってます」
ペコリと軽く頭を下げる楓…そして。
「ほな言うてくるなぁ」
と言うやいなや、走り出してしまった。
「あれはなんだったんだろうか…鯉太郎さんよ」
鯉太郎はこう答えた。
「風…だろうさ」
よろしくお願いいたします<(_ _)>